東京は銀座、東京銀座資生堂ビル の10階にあるイノベーティブイタリアンレストラン「FARO(ファロ)」。モダンで、オリジナリティーあふれる雰囲気と、その料理は「ミシュランガイド東京2022」において、2年連続の一つ星を獲得したニュースでも話題に。
今回は初めてお店を知る人のために「FARO」の世界と、そこでぜひ食べていただきたいシェフパティシエ加藤峰子さんが作り出す「花のタルト」を紹介します。「これは本当に食べ物なのか?」そう思うほど美しいタルトの裏に込められたメッセージと、シェフが考える“ヴィーガン”を通じて考える食の未来と共にお届けしていきます。
銀座駅 A2出口から徒歩7分、地下鉄新橋駅 1番出口から徒歩4分ほどの場所にある東京銀座資生堂ビル。1階は資生堂パーラーの銀座本店ショップとなっており、3階が銀座本店サロン・ド・カフェ、4/5階が銀座本店レストラン。加藤峰子シェフも足を運ぶという、地下1階は「SHISEIDO GALLERY」で、様々な新時代のアーティストたちによるアート作品が飾られています。
今回取材させていただいた「FARO(ファロ)」は、この東京銀座資生堂ビル10階にあります。現代イタリア料理をベースに、日本が持つ魅力あふれる食材と文化を重ね合わせた枠にとらわれないレストランです。ランチコース、ディナーともに“ヴィーガン”を選択することができ、ヴィーガンの人ではなくても新しい食体験と食が持つ可能性、ライフスタイルの発見を感じられるコースとなっていて、加藤峰子シェフからも“「ヴィーガンがおすすめ」とのこと。
和と洋がバランス良く取り入れられたモダンな空間。広々としたスタイリッシュな空間に流れる、外の光と居心地のよい空気感は、ランチにも夜にも違った雰囲気を楽しむことができます。今回、メインで取材させていただいたのは加藤峰子シェフが作り出す、美しい「花のタルト」。
Q.何十種類もの花やハーブが使われたスペシャリテ「花のタルト」。なぜ香りを主人公とした「お花」をデザートにしようと思われたのでしょうか?
加藤シェフ「コース料理の最後のプティフールとして、焼き菓子やチョコレートは重たいと思ったところからスタートしました。特にFAROのコースは長いので。私が長く居たイタリアでは何をするかなと思った時に、食後酒としてアマーロというお酒を最後に飲むんです。
これは40種類ぐらいのハーブを使い、養命酒みたいなもので消化を助けるお酒です。それをタルトで表現したのが『花のタルト』です。タルト生地が口の中で、少し食感を感じたら消えるぐらいの薄さで。
私がイタリアのレストランで働いているときは、隙間時間に香りの研究をしていて、今もそれがライフワークとなっています。そこではハーブ療法もずっと学んできていて、昔はハーブ薬品店でタダ働きした時期もありました。
加藤シェフ「日本でハーブを使ったタルトを作ろうと思ったときに、とある里山に出会えたんです。もともと食材を自分の足でよく探しに行くのですが、その時は春だったんですけれど、あまりにも里山の風景が美しくて、花が咲き乱れていたんですね。ハーブや花ってそれなりのエネルギーを持っていて、これをデザートにしたらいいなと思い、その自然の生産者さんがいて、『これを、このまま送ってもらえますか?』とお願いしたんです。そして『ぜひ』ということになりました。
今もこの里山で暮らしていらっしゃる女性の方々は、もともと農業をされていた方々で、現在は80歳を超えて定年退職。年金があるとはいってもその生活は決して豊かではなく、お花を使うことで少しでも還元できたらという想いもありました。
農業ってすごく体力を使う、すごく大変なもの。彼女たちが趣味のお花を摘む作業がデザートになる。そんなストーリーがこの花のタルトに隠されています。
栽培しているお花もあれば、野生のお花もあり、このタルトではその里山の風景を表しています。
この里山文化は、昭和の初期まではあったと思いますが、今は高齢者ばかりになってしまい。この里山が、50年後にはないかもしれないという裏メッセージも込めているんです。
Q.一緒にお花を摘んだりもされたのでしょうか?
加藤シェフ「もちろん。香りって、すごい特徴的で、脳の海馬に蓄積されていくので、記憶と香りがリンクするんです。このタルトの香った香りで何かの思い出が出てくるんですね。
FAROのお客様でも、二人ぐらいこれを食べて涙を流された方がいらっしゃいました。あのタルトって、花苦そうで、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、全然違います。お菓子としてちゃんと成り立っています。
Q.このFAROで、ヴィーガンという選択の意味と、そこに加藤シェフが力を入れる理由を教えてください。
加藤シェフ「ヴィーガンというものは、胸をはって食べられるものであり、ギルトフリー。毎日じゃなくてもいいけれど、地球にとっては救われる部分があると思います。健康面でもすごく良い、ということもありますし、それが地球の健康にも良い。
それに畜産や酪農の裏の現状がどうなっているのか、誰でも調べると出てきます。その積み重ねが、消費という行動自体が地球環境にどうつながっていくかわかるはずです。そう考えた時に“ヴィーガン”という選択がいかにスマートかがわかります。なぜヴィーガンのお菓子を作るのか、それが理由です。」
加藤シェフ「そして作り手として、ヴィーガンじゃないものと同じぐらい美味しいものを作るのも楽しいですね。ヴィーガンは、パティシエからすると前例がないから自分で0から1にする、開拓者的なロマンを感じます。
固定概念なしで、若い子には私のレシピを伝えつつ、教わったレシピを自分事にすることを教えています。SNSで見たことをカッコよいからまねをすることは、自分の個性、一人のパティシエとして成立していません。レシピをいったん崩してみて、崩してみたら自分なりのものができるんです。“ヴィーガン”も同じで、今までの前例がないので、誰かのレシピで教わるとかはなくて、自由な発想で、自分が培ってきたものを、知識を使って、作り上げる。そんな面白さがある分野です。」
About Shop
FARO
東京都中央区銀座8丁目8−3
営業時間:ランチ 12:00~15:30(L.O. 13:30)
ディナー 18:00~23:00(L.O. 20:00) ※営業時間は変更になる場合がございます。詳しくは公式ウェブサイトでご確認ください。
定休日:日、月曜日 夏季(8月中旬)年末年始
クリーム太朗
ウフ。編集長
編集責任者。ショートケーキ研究家として、日本全国のケーキを食べ比べる。自身でも、ケーキやチョコレートの製造・販売を目指すべく、知識だけではなく実技も鍛錬中
Photo/Oki Shintaro(大木慎太郎) Writing/Cream Taro
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