京都府の北西部にある福知山市。自然にあふれるこの場所にある「洋菓子マウンテン」。地元のお客さんを中心に、チョコレート好きが集まるこのお店では、チョコレートが主役となることが多いですが、今回紹介するのはチーズケーキ。特別なエピソードと想いが詰まったこの絶品のチーズケーキの秘密をお届けしていきます。
多くのショコラティエたちが尊敬し、若く技術のある若手を輩出してきた水野直己シェフ。2007年のパリで行われた世界的権威のあるチョコレートのコンクール「ワールドチョコレートマスターズ」で優勝し、その後は京都府・福知山でお父様のお店「洋菓子マウンテン」を継がれました。
そんなお店があるのは福知山市、京都からは電車で1時半班程度。車も同程度の時間がかかります。自然豊かなこの地で、度重なる天災に見舞われながらも2016年にようやく再起を図りOPEN。まるでお城のような2階建てのお店は、圧巻です。
駐車スペースも多く、開店直後は続々と車が来ます。1階は販売スペースと、テラスのイートインスペース、2階も広々としたイートインスペースになっており、車で来てケーキを食べに来るお客さんも取材中にたくさんお見かけしました。
水野シェフのスペシャリテとして「杏と塩」のチョコレートが有名ですが、この洋菓子マウンテンでは、お店に入るとまず目に入るケーキのショーケースに圧倒されます。
チョコレートを使ったラインナップから、洋ナシのシブーストやモンブラン、そしてシュークリーム、またチーズケーキといった洋菓子屋さんらしいラインナップでありながらもチョコレートを軸にしたケーキも目立ちます。そして今回の主役となるのは、チーズケーキ。シェフにお話を伺いながらいただくことができました。
お父様の代から、この土地の看板メニューでもあったという「チーズケーキ」。「チーズケーキ買いに来ました、という人は福知山の人です」と水野シェフ。それほど、この地に深く根づくケーキです。アプリコットジャムがのっかり、スフレタイプのチーズケーキで、軽やかな食感とともにスフレのやわらかさ、そして舌の上で感じるその特別感は、ひしひしと感じます。美味しさの秘密を水野シェフに伺いました。
水野シェフ「僕が生まれた年に、このお店ができたんですよね。もう43年も経つこのお店ですが、親父が創業時代からずっと焼き続けています。そしてチーズケーキをホールで、独り占めして食べるのが福知山市民の夢。それがだいたい誕生日の時で、生クリームを塗ったあのいちごのケーキではなくて、このチーズケーキにろうそくを立てて食べるのがこの地のバースデーケーキなんです。」
水野シェフ「チーズケーキって、簡単なイメージがありますがこのチーズケーキはすごく手間がかかって大変なんです。窯にチーズケーキが入っている時間も長くて、何度も面倒を見なきゃいけないぐらいすごく大変なケーキなんですよ。そして価格も300円台をキープしています。
ここでこのチーズケーキを子どものころに食べて育った人たちが大人になり、子どもに今度は買いに行く。そんなチーズケーキをやめるわけにはいかないんですよね(笑)。それに僕が飲んで育ったミルク、学費もみんなこれがあったからこそですからね。
しゅわしゅわっとした食感がある、このチーズケーキ。これってちゃんと焼き方があってからこそ出るもので、スフレなので湯煎焼きをしているんですが、今どきの方ってコンデクションオーブンで焼く人が多いけれど、うちは平窯のガスで焼くんです。
何が違うかというと、火の入り方が違います。
もともとヨーロッパの方々は、コンベクションで焼くというのは抵抗感がなくてそれが当たり前ですが、こっちの日本で発展してきたお菓子って平窯のガスでやってきて、その流れがあったから西洋とは違う“日本の良さ”が出ていたんですよね。
アプリコットジャムも、ただジャムを火に溶かしているのではなくて、ピューレを入れたお酒で香りづけをしたり、歯切れをよくするために寒天を入れたりしています。
チーズケーキへの想いを取材しながら、話はケーキのショーケースとお菓子の考え方へ。水野シェフの「変わらぬ美味しさ」「変わらぬあのケーキ」の想いとは。
水野シェフ「チーズケーキをブラシュアップしていくときは、これを使って新しいものをじゃなく、今あるものをより美味しくできないかと考えてやっています。
そこを大事にしている理由は、やはりお客さんです。前回あったものがないと寂しいじゃないですか? “あれを食べたい”と思ってくる人にはあれを用意してあげる。
代わり映えしないショーケース、それでいいと思っています。前回のあれがなかったといわれたら、寂しいですよね。日本はもちろん、色々な国にお菓子を教えにいくんですけれど、この材料を使って講習会をしてくださいと言われて色々新しいものは作りますが、そのケーキが洋菓子マウンテンのショーケースに並ぶことはほとんどありません。」
About Shop
洋菓子マウンテン
京都府福知山市猪崎小字山本322
営業時間:11:00~18:00
定休日:水曜日・不定休
クリーム太朗
ウフ。編集長
編集責任者。ショートケーキ研究家として、日本全国のケーキを食べ比べる。自身でも、ケーキやチョコレートの製造・販売を目指すべく、知識だけではなく実技も鍛錬中
Photo&Writing/Cream Taro
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