洋菓子の街と名高い神戸は、有名ベーカリーも数多く「パンの街」とも言われています。2023年に実施された1年間の家計調査「パンの消費額」では神戸市が全国1位!ちなみに2位が和歌山市、2位が大津市(滋賀)となり、トップ3位を関西が独占しています。関西人はパンが大好きなのです!
神戸のパンの歴史を語る上で欠かせないのが、今回取材に訪れた「フロインドリーブ」。1924年に創業し、今年で100周年を迎えます。神戸でしか味わえない歴史あるパンと洋菓子。そして唯一無二の”教会カフェ”が特徴の「フロインドリーブ」をたっぷりと紹介します!
「フロインドリーブ」は神戸・三ノ宮駅を降りて山側へ13分ほど歩いた場所にあるベーカリーカフェ。1924年の創業時は神戸の中山手という場所でお店を構え、1999年に現在の場所に移転しています。
創業者はドイツ生まれのハインリッヒ・フロインドリーブ。日本人のヨンさんと結婚し、夫婦で始めたドイツパンのベーカリーです。現在は1階がパン・洋菓子の販売スペース、2階はカフェとして営業。現在も神戸の人に愛されるパン、焼き菓子のお店として親しまれています。
神戸ユニオン教会をリノベーションした教会カフェ。2階は礼拝堂の雰囲気をそのまま残してあり、高い天井に細い柱、大きな窓、尖頭アーチなどゴシック風建築の佇まい。これだけ席数があっても週末はお客様が入りきらず、ウエイトがでるほどなのだとか。
お店の奥に進むと、お花いっぱいに囲まれた中庭が。待ち時間に写真を撮ったり、緑の中で寛いだりするお客様もいるそうです。カフェの席に着くと、サンドウィッチやフレッシュケーキ、ゲベック(焼き菓子)などのフードメニューをオーダーできます。
こちらはスタッフおすすめのオリジナルローストビーフ サンドウィッチ。自家製のローストビーフをライ麦のソフト食パンで挟んでいます。ボリュームたっぷりですが、ローストビーフもパンも柔らかいせいか、ペロリと食べられます!
カフェ入り口のショーケースには季節のケーキやタルトもラインアップ。席でオーダーすればケーキも楽しめます!ちなみに「フロインドリーブ」は三ノ宮以外に大丸神戸店、神戸阪急店にも販売店はありますが、カフェスペースが設けられているのは教会の店舗だけ。サンドウィッチやフレッシュケーキはここでしか楽しめないメニューだそうです。
「フロインドリーブ」は現在、100周年のメモリアルイヤーとしてイベント開催中!店内にバルーンを飾り、記念グッズを販売していて大盛り上がりです。イベントは2024年9月中なので、訪問を考えているならぜひその期間に行ってみてください。(※記念グッズは無くなり次第終了。詳しくはHPをご覧ください)
待合スペースには「フロインドリーブ」の歴史が分かる年表も飾られています。この記事でも、これまでの「フロインドリーブ」についてまとめました。
創業者のハインリッヒ・フロインドリーブさんは、第一次世界大戦で日本軍の捕虜となり、現敷島製パンの初代技術師長として日本に在留します。日本の生活で出会った日本人女性と結婚し、共に「フロインドリーブ」を開業したそう。しかし当時、ドイツパンというのは馴染みがなく、歯応えのあるハード生地はなかなか受け入れられなかったのだとか。
日本人の嗜好に合わせて、ドイツの製法はそのままにソフトタイプのパンを展開したそうです。お店のロゴマークにもなっているビスケット生地のサクサクのブレッツェルやクロワッサンなども販売し、徐々にファンを獲得。約10店舗にまで拡大しますが、第二次大戦をきっかけにお店は全焼してしまいます。それでも終戦の翌年、30坪のお店を再開させたそうです。
この「フロインドリーブ」創業の話は、1977年のNHK連続テレビ小説「風見鶏」のモデルにもなったのだとか。
創業者が「フロインドリーブ」を経営している間、夫妻の第一子となるハインリッヒ・フロインドリーブ2世さんがドイツへ留学。修行の末ドイツ国家マイスター試験に合格し、帰国後は「フロインドリーブ」を法人化させ、経営を引き継ぎます。
それまではドイツパン中心のラインアップでしたが、洋菓子・焼き菓子を並べられるようになったのは2代目が習得した本格的な菓子の技術あってこそ。1階の売り場にはクッキーやパイといった焼き菓子がずらりと並びます。
「フロインドリーブ」の代表商品「ミミ」は、豚の耳をモチーフにしたパイ。豚の耳はドイツで幸福のシンボルとされているそうで、バターの風味をふんだんに感じられるサクサク食感が特徴です。大きさが大・中・小とあり神戸っ子には「大ミミ」「中ミミ」「小ミミ」と呼ばれています。
そして1990年、経営は創業者の孫娘であるヘラ・フロインドリーブ・上原さんへ引き継がれます。中山手にあった店舗から、現在の教会への移転を決めたのはヘラ・フロインドリーブ・上原さんです。
きっかけは1995年の阪神淡路大震災だったそうです。地震の影響でお店は甚大な被害を受け、翌年になんとか営業再開するも、建物は傾いてしまっていたとのこと。そんな時、廃墟同然となっていた神戸ユニオン教会を買い取ることに決めたのは、ヘラ・フロインドリーブ夫妻が結婚式を挙げた思い出の地を守りたいという想いもあったからなのだとか。
蔦だらけの廃墟を2年がかりで修復し、教会は国の有形文化財にも登録されました。重厚感のある厳かな雰囲気をまとう建物の中で、気軽にティータイムを楽しめる唯一無二のカフェとして人気を博しています。
記念すべき100周年を迎えた「フロインドリーブ」の経営は、現在4代目に引き継がれたばかり。4世代にわたって当時の味を守り続けています。それは3世代、4世代にわたって「フロインドリーブ」のファンが居続けるということでもあります。
なぜ「フロインドリーブ」は、こんなにも愛されるのでしょうか?
その日販売するパンは当日朝に焼き上げたもののみで、作り置きは一切なし。作りたての美味しさにこだわって、初代の味を守り続けていることが愛される理由のひとつなのだとか。健康志向が高まっている今、「安心」「安全」を提供するポリシーは強みでもあります。
追加で焼くことはなく、開店時間に並んでいる商品が売り切れ次第、パンの販売は終了になるとのことでした。
初代のパン、2代目のお菓子も、レシピは変えていないそう。そして、100年を超えたこれからも、変える予定はないのだと言います。小さな頃によく食べていたパンとお菓子の味が大人になっても食べられる、自分の子ども孫の世代に伝えていける。そんなお店は意外と少ないかもしれません。
100年前から変わらない美味しさであり、これからも「この味を守っていく」というのは、ファンにとって嬉しい約束です。
実は全国から出店の依頼も少なくないのだとか。しかし会社として”品質第一”を掲げており、工房から遠く離れた場所での出店はこれからも「ない」のだそうです。
この”品質第一”はイコール”地元第一”であり、神戸市民の自慢でもあります。実際「神戸にしかないお店だから」とお菓子の詰め合わせを買っていくお客様は非常に多いそうです。
取材の中で、最後に「101年目からの方針」について聞くと「これまでと変わらず、この味とポリシーを受け継いでいきます」とのこと。ただしすべてが変わらないというわけではありません。例えばミミの大きさのバリエーションを増やしたり、ギフトボックスの種類を展開するなど、お客様の要望には柔軟に応えていきたい、と話してくれました。
神戸には、いつ来ても、いつまでも変わらない「フロインドリーブ」があります。神戸を訪れることがあれば、ぜひ100年間の歴史を堪能してみてください。
About Shop
フロインドリーブ
神戸市中央区生田町4-6-15
営業時間:10:00〜18:00(16:30L.O ※ただしドリンクメニュー等は17:30までオーダー可能)
定休日:水曜定休(祝日の場合翌日休)※その他臨時休業あり
あかざしょうこ
ウフ。編集スタッフ
関西方面のスイーツ担当。1984年生まれ、大阪育ちのコピーライター。二児の母。焼き菓子全般が好き。特に粉糖を使ったお菓子が好きです。
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