「今月のウフ。」は、「チョコレート特集」。ここ数年、チョコレート専門店やイベント・催事で「サスティナブル」という言葉を耳にすることが増えたのではないでしょうか?
サスティナブルとは「世界全体で、美しい地球や私たちの生活を保ち続けるための設計や仕組みを考えること」を意味します。その具体的な目標を示しているのが「SDGs」です。
今回訪れたのは、Bean to Barチョコレートを製造・販売する大阪府寝屋川市の「CHOCO FOREST」。SDGsに繋がる取り組みも積極的に行っているそうで、詳しい話を聞いてきました!
「CHOCO FOREST」は、クロアチアで生まれ育ったポーラック・アントニオさんと大阪出身の夢緒さんご夫婦が営むチョコレート専門店です。アントニオさんは家の近くにあった森を遊び場にして育ち、体験・発見・感性はすべて森の中で育まれたそう。そんな場所を自分も提供したいという想いで「CHOCO FOREST」を2022年に開業しました。
チョコレートはアントニオさんの大好きなお菓子で、メイン商品はタブレット。カカオそのものの素材を楽しんでほしいと、シングルオリジンにこだわっているそうです。
シングルオリジンとは、産地・農園・品種などで異なるカカオ豆がブレンドされていないこと。カカオは育った環境によって香りや味わいが変わり、それがチョコレートの奥深さと言えます。
「CHOCO FOREST」は、選定・焙煎・粉砕などすべて工房の中で行っているBean to Barです。決して広くはないですが、焙煎・粉砕・風選・磨砕・テンパリング…カカオ豆からの加工・製造はすべてこの工房内で行われています。
なぜ加工済みのクーベルチュールを使わないのか?という質問に
「オリジナリティを出しやすいから。自分が表現したい素材の香りや味わいを出すには、豆の焙煎から携わる方がいいんです」
と、アントニオさん。
大阪ではBean to Barの一般認知度はまだまだ低く、お店も天王寺の「yard」、中津の「モンプチ」、北浜の「カカオティエゴカン」など。お店に来る人も、最初は不思議そうに店内を見て回ることが多いのだとか。
店内ではタブレットのほか、カカオ豆の加工の工程で出てくる殻を再利用したカカオティーも販売しています。
また、シングルオリジンのタブレットにこだわっているため、製造の過程で混ざってしまった場合は別の商品に展開。ブレンドされたチョコレートを使った「ブラウニーキット」はそこから生まれた商品。ブラウニーに必要な材料と合わせて瓶詰めしたもので、自宅にある材料と一緒に混ぜ合わせ、電子レンジでブラウニーを作れるものなのだそう。
日持ちが短いタルトやテリーヌは完全予約制にし、受注生産のみ。日持ちする焼き菓子は、ロスになることはほとんどないそうです。このように「カカオのすべてを使い切る」「捨てない」ことを日々考え、取り組んでいます。
SDGsについて聞くと、初めはそこまでの意識はなかったとのこと。チョコレートが大好きなアントニオさんの夢を叶え、チョコレートを作りながら「捨てない」「使い切る」のアイデアを取り入れていたら、それがSDGsに繋がっていると気づいたのだとか。SDGsはポーラック夫婦の生活に自然に根付いていたのです。
「でも本当の意味で、私たちはやりきれていないと思っています。カカオの産地に直接行って買い付けをしたり、カカオ農園を持っているわけではありません。カカオハンターさんをはじめとするチョコレート活動家の視野は非常に広いです。私たちは、仲介してもらってカカオを仕入れていて、中途半端なんですよね。そんなもどかしい思いが、少しだけあります」
取材中、アントニオさんの腕では生後2ヶ月の女の子が気持ち良さそうに眠っていました。2歳になるお兄ちゃんも、まだまだやんちゃ盛りだそう。チョコレートの品質、そして可愛いふたりの子どもの成長。ポーラック夫妻の手で今しっかりと抱えられるのは、そう多くはないのかもしれません。
「けれど、今自分たちにできることを、一つ一つ取り組んでいきたいと思っています」
チョコレートの製造過程や産地による味わいの違い、カカオ農家の現状など、訪れた人たちに熱意たっぷりに伝える夢緒さんの言葉が、誰かの意識を変えるかもしれません。またフェアトレードによって取引されているカカオ豆を使った「CHOCO FOREST」のチョコレートを購入することが、カカオ農家の経営に貢献しています。
一人一人が自分にできることを、手の届く範囲で少しずつ取り組んでみてはいかがでしょうか。
「CHOCO FOREST」がSDGsに取り組むBean to Barであることの他に、もう一つ面白いと思えるのが、アントニオさんの独特な感性のもとで生まれたアーティスティックなパッケージ。描かれているのは、そのカカオからインスピレーションを受けたアントニオさんの世界です。
例えば、恐竜とゴリラがハグをしている様子が描かれたこちらのタブレットチョコレート。「たたかうものはお互いを愛する」というクロアチアのことわざに由来しているそうです。
こちらはカカオパルプに包まれたカカオ豆を擬人化(?)したことを表しています。アントニオさんがクロアチアの友人のデザイナーに依頼して、一つ一つテーマを具現化しているそうです。
テラスに飾られた巨大なタペストリーには、1万年前の人類がチョコレートを作っている様子が描かれています。これら、飾られているものはすべてアントニオさんの感性から生まれています。好きなこと、伝えたいことを自由気ままに表現し続ける少年心を感じます。
最後に、アントニオさんにこれからの夢を聞きました。
「日本には、試食をしながら見て回れるチョコレート工場がない。自分が育った森のように、体験や発見がいっぱいあるチョコレート工場を作るのが夢です」
About Shop
CHOCO FOREST
大阪府寝屋川市香里南之町9-14
営業時間:平日11:00〜19:00、土日祝11:00〜18:00
定休日:火曜日・水曜日
あかざしょうこ
ウフ。編集スタッフ
関西方面のスイーツ担当。1984年生まれ、大阪育ちのコピーライター。二児の母。焼き菓子全般が好き。特に粉糖を使ったお菓子が好きです。
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