大阪府は梅田駅近く、北区に2021年OPENして瞬く間に人気沸騰した「hannoc」(ハノック)。朝から行列ができ、若い子たちが「ケーキを買う」という新しい新風をふかせたこのお店の大きな特徴は、パティシエの新しい働き方と価値創造をテーマに、中心として指揮をとる「シェフパティシエ」がいない新しいスタイル。
まだ20代と若いパティシエたちが自由な発想とチームワークのもと、新しいお菓子とケーキを創り出しているこのお店を今回は早速取材してきました。お店で働く若いパティシエ5名の子たちが、それぞれのスペシャリテを語ってくれました。
梅田駅から徒歩では7~8分程度。店舗はパティスリーにしてはかなり広く、グレーを基調とし、店内はスタイリッシュでトレンド感を漂わせています。取材時期はクリスマスだったこともあり、かわいらしいリースが飾られ、開店前からすでに並ぶお客さんも。OPENすると、すぐに満席に。お客さんの層も若い女性が多いよう。
ショーケースには、かなりの数のケーキと横にはテリーヌ、バターサンド、ゴーフルなど、トレンドのスイーツがズラリと。焼き菓子コーナーには、ギフト用のラッピングもいっぱい。
そして注目すべきは、ズラリと並んだケーキ。それぞれ作り手が異なるというコンセプトが面白く、ケーキの前には作り手の写真が!
もともとお店として、トップダウンの組織を作らないというコンセプトのもとに始まったこのお店。強烈な縦社会に苦しむ若手パティシエを見てきて、そういう変えられない部分と変えられない部分がある中でも「一度自分たちでやってみようと思った」と広報の赤座さん。
「全員が横並びで対等な立ち位置で」それがこのお店のテーマでもあります。そしてこの「hannoc」という造語の由来は、また面白いものでした。
空気を構成している物質、窒素(N) 、酸素(O2) 、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO2)、ネオン (Ne)、ヘリウム(He)の頭文字を組み合わせた造語です。いろいろなものが混ざり合って存在する空気のように、いろんな個性や可能性が集まって、みんなでこの場所をつくっていきたいという想いを込めているんだとか。 20候補ぐらいあったという中で、選ばれたこの「hannoc」の文字をよく見ると、「he」「ar」など、元素記号が実際に並んでいます。ネオン窒素、炭素など、「色々な空気や要素が混ざっている」ことを表しています。
そんな元素記号としてのパティシエたちは、それぞれがメニューを考えるんだそう。それぞれのレシピを、それぞれが作り、新しい発見がお互いがある、そんな刺激的な現場と和やかな雰囲気も印象的でした。
それではそんな新しい風を吹かせる、hannocの注目のパティシエ5人を紹介していきます!
まず初めにお話を聞いたのは、前職はアシェットデセールの「サロン・ド・テ・アルション」で働いていたという森さん。
こだわりのケーキ「キャバリーヌ」。満開のお花型のトップはキャラメルとバナナのムース。シナモンを加えていることと、土台のタルトにごろっと入ったくるみの香ばしい香りが特徴的です。
神戸のホテル出身の野中さん。キャッチ―で明るいキャラクターで人気者なんだとか。(by 広報 赤座さん)フランス菓子が得意なんだとか。
上と真ん中と、入っている生地は水分量を多めに。しっとりさせながら、アーモンドの香ばしさを引き出し、生地が美味しくいただけることを考えたんだとか。フォークで切ったときに、生地も一緒にズレずに切れることを考えているのも、野中さんのこだわり。ラム酒を利かせ、カシスを組み合わせてちょっと大人な風味に。
続いては、hannocに10月に入ったばかりで初々しい高山さん。アーモンドを敷いた薄いクッキー、赤い部分はグリオットチェリーのムース。中にはチェリーの果肉とバニラのガナッシュ。デビュー作とは思えないクオリティと見た目。
生クリームにバニラと練乳を入れて、ミルキーに仕立てあげ、酸味があるケーキとバランスを取るために、トップのクッキーは甘くしているそう。
続いては、オシャレなInstagramに思わず見入ってしまったパティシエの卵、上田さん。昨年、製菓学校を卒業したての上田さんが作ったのは、大好きだという紅茶をテーマにしたもの。
アールグレイなど、みんなが好きな紅茶をタルトに。そんな紅茶のフレーバーに洋梨を合わせて爽やかさを出しています。紅茶の選び方もこだわっていて、さまざまな紅茶を試して、合うものを厳選したそう。
ラストは、SNSでも人気の「あめくん」。リッツカールトンのシェフのポジションを蹴って、hannocで掲げるコンセプト、優しい働き方に共感し入社を決断したそう。そんなあめくんが選んだのがこちら。
このティラミス、マスカルポーネを潜ませたクリームの内側にはエスプレッソを染み込ませたスポンジがどっしり。エスプレッソをつめて、生地の端を集めて、出来た生地を再び絞るという画期的なアイデアから生まれたんだとか。山のようなシルエットに、ヘーゼルナッツの木の実がゴロっとのっかったキュートな見た目です。
ティラミスと聞くと、甘く濃厚なイメージながらも、甘さひかえめであっさりした印象を持つタルトです。
今後の「hannoc」が目指す道を伺うと「洋菓子業界の改革」なんだとか。例えば、このお店の広さを利用して、閉店後にパティシエたちが集まるコワーキングスペースするなど、新しい取り組みを検討中なんだそう。情報交換やお互いのコミュニケーションを図れる場として、新しい居心地のいい場所。そんな発想も、今ならではで、これからの「hannoc」の行き先が新しい風が楽しみです。
About Shop
hannoc
大阪府大阪市北区万歳町4−12 1F 浪速ビル 西館
営業時間:11:00~19:00
定休日:無休
クリーム太朗
ウフ。編集長
編集責任者。ショートケーキ研究家として、日本全国のケーキを食べ比べる。自身でも、ケーキやチョコレートの製造・販売を目指すべく、知識だけではなく実技も鍛錬中
Photo&Writing/Cream Taro
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