駅を降りると昔ながらの古書店や新刊書店が軒を並べる「神保町」。世界最大級の本の街として知られています。
そんな街の路地裏にあるスペシャルティコーヒー専門店「オトナリ珈琲」が今回の主役です。場所はなんとコインランドリーの中に入って2階にある、これぞ隠れ家カフェ。
階段を上ると広がるコーヒーの香り。昔のものをリメイクされた家具の数々。小ぶりで可愛らしいプリンは極上の美味しさ。今回はそんなどこをとってもこだわり詰まった「オトナリ珈琲」の店主である柴田さんを取材。
店主としての傍ら、自身のサイトで焙煎士さんの魅力を発信されているほどコーヒー愛に溢れる柴田さん。そんな彼女のコーヒーについての想いやお店について聞いてきました。
2021年10月にオープンした「オトナリ珈琲」。
月替わりで提供される全国の焙煎士さんのスペシャルティコーヒーとプリンなどのホームメイドのお菓子を味わうことができます。
いまでは土日は満席になることもある同店。
目的地を目指すべくお店のある神保町・白山通りの路地裏を歩くこと3分程。なんと着いたのはコインランドリー。中に入り右手の階段を上ると外観からは想像ができないほどの“隠れ家”という言葉にふさわしい世界観が広がります。
「物件は1年以上探しました。誰の手の痕もないような綺麗に整えられている“白い四角い箱”のような物件に魅力を感じられなかったんです。ここの物件を見たときは、不自由というか、使いにくそうだし、昔からの跡が残っていました。そして本が好きということもあり、自分と街が合っていたことからこの物件に決めました。」
と仰る、店主の柴田さん。
この場所はもとは本屋さんの倉庫だったそうです。元々残っていた椅子をリメイクしてもらったものや、昔使われていたお茶屋さんの茶箱をもらってきて使われていたりなど、新しいものよりも手元にあるもので店内をデザインする柴田さんのこだわりが詰まっています。
そんな柴田さん。商品を紹介する前にバリスタになられた経緯や、コーヒーに対する思いを聞いてみました。
大学時代の19歳の時にオーストラリアにワーキングホリデーで滞在した柴田さん。この時の体験がいまのバリスタの道に繋がっています。
柴田さん
「当時、メルボルンは南半球の中でもカフェが一番多いと言われていました。現地の人は好きなバリスタがいたり、“あの人が淹れてくれないと、飲まない”と言う人もいました。毎日挨拶をしてコーヒーを飲む文化が好きで、バリスタを志しました。」
メルボルンのコーヒー文化。そういう雰囲気を自分でも作りたいという想いからバリスタの道へ。大学卒業後、お店立ち上げの資金を集めるため営業職を経験。休日にはコーヒー屋を回ったり、コーヒーセミナーに参加したりなど独学で勉強されたんだそう。
そして駒込の百塔珈琲で5年勤務。二店舗目の立ち上げ時に店長として腕を振るいます。その後、カフェギャラリー立ち上げのため出版社に勤務。そして2021年10月に「オトナリ珈琲」をオープン。
月替わりで提供される全国の焙煎士さんのスペシャルティコーヒーとプリンなどのホームメイドのお菓子が並んでいる「オトナリ珈琲」。
その傍ら、店主を中心に焙煎士さんへインタビューし、公式サイトで魅力を発信されています。そこにはコーヒーに対して並外れた想いがありました。
柴田さん
「焙煎士という仕事の素晴らしさを伝えたいと思っています。毎月焙煎屋さんを変えているのもその一つ。焙煎って調理みたいなもので技術職なのが一般の人にはあまり伝わっていません。昔からコーヒーの産地にまでこだわってきたような文化は日本独特のものでした。そういった先代の人たちが作ってきた文化を伝えていきたいです。」
日本の喫茶文化、コーヒーの文化を伝えていきたいという柴田さん。素晴らしい文化に光を当てて、後世に残しておきたいという想いから焙煎士さんを取材し発信されています。
お店ではそんな焙煎士さんがローストしたスペシャルティコーヒーを月替わりで提供されています。
そしてコーヒーだけではありません。ホームメイドのプリンにもこだわりがたくさん詰まっています。
子どもの時から飲食や芸術が好きでパティシエを目指されていた柴田さん。親から大学に行けと言われ断念。それでも在学中にどうやったら売れるお菓子を作れるか独学されていたんだそう。その一つがプリン。
柴田さん
「自立したプリンと口の中で溶けてしまうぐらいのなめらかなプリン。この二つの正解を出そうと試行錯誤して昔作ったレシピが今のプリンのもとになっています。辿り着いついたのは、ムチっとした食感の自立したプリンでした。」
そして香りづけにバニラを使うことで、卵臭さを減らしているそう。
少し甘めのカラメルにムチっとした食感。固めのプリンながら口に入れるとすーっと消えるなめらかさ。そしてバニラの香りの余韻が続く、見た目も小ぶりで可愛らしいプリン。
お皿は安藤雅信さんの白いうつわを黒の釉薬(ゆうやく)を塗って特別に黒くしてもらっているそうで、スプーンは金工作家moritaさんにお皿に合う形で特注で作られているなど食器・カトラリーにも柴田さんのこだわりが詰まっています。
カフェラテと合わせるともう手が止まらなくなります。
そして新しく登場したコーヒーゼリー。
オレンジが入っているのがポイントで、毎月変わる3~4種類のコーヒー豆の中からシトラス系のフレーバーを感じられる豆と合わせて作られています。
オレンジにシトラス系のコーヒー豆。コーヒーの苦みを感じながらもさっぱりとした味わいでこちらも絶品。
物件、店内、珈琲、プリンどこをとってもこだわり詰まったお店は、店名の通り“おとなり”にいるかのような温かさを感じます。この記事を通してコーヒーの産地だけでなく、焙煎士さん、コーヒーを淹れる人にも目を向けるきっかけになれば嬉しいです。
About Shop
「オトナリ珈琲」
東京都千代田区神田神保町2-48 2F
営業時間:12:00~19:00/20:00
定休日:不定休
公式Instagram:@otonaricoffee_shop
Takuma
インスタグラマー
都内のパティスリーやホテルのカフェを中心に巡り、その美しい写真と丁寧な文章にファンも続々。パティシエ界や編集長も注目のウフ。スイーツ男子部第一号
Instagram(@k.takuma.happy)
Photo & Writing / Takuma
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