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2023年注目の「ブラジルプヂン」とは何か? 国内唯一のブラジルプヂン研究家“中津雄春さん”に聞く

2023年注目の「ブラジルプヂン」とは何か? 国内唯一のブラジルプヂン研究家“中津雄春さん”に聞く

2023年はトルコのお菓子「バクラヴァ」、イタリアのお菓子「カンノーリ」が流行るなど、様々な海外のお菓子がブームになりそうな一年に。そんな海外のお菓子の中でも、ひときわ注目を浴びているのがブラジルのお菓子である「ブラジルプヂン」。日本でいう「プリン」のこと。今回は日本で唯一のブラジルプヂン研究家である中津雄春さんへ取材。本当の「ブラジルプヂン」とは何か、ブラジルではどう食べられているのか、またその魅力とは?

取材をしてくれたのはプリンインスタグラマーとして人気のpuddingirl1518さん。

ブラジルプヂン研究家、中津雄春さんに伺う、その魅力とは

2023年注目の「ブラジルプヂン」とは何か? 国内唯一のブラジルプヂン研究家“中津雄春さん”に聞く

ブラジル料理のレストランに加えて、最近はカフェでいただけるブラジルプヂンに注目が集まっています。中でも清澄白河の「TOKAKU coffee+(トカクコーヒー)」さんのブラジルプヂンはそのおいしさに加えて、プリンとココアスポンジの2層のビジュアルが「ケーキみたいでかわいい」とTVやSNSを中心に話題になっています。

2023年注目の「ブラジルプヂン」とは何か? 国内唯一のブラジルプヂン研究家“中津雄春さん”に聞く

ブラジルプヂン=プヂンとスポンジの2層になっているスイーツ」のイメージが強いですが、スポンジのないシンプルなプヂンもあり、お店によってブラジルプヂンの種類はさまざま。あらためて”ブラジルプヂン”とはどのようなスイーツなのでしょうか? 

今回は原宿の複合型ギャラリースペース「BLOCK HOUSE」で日本にいながらブラジルライフがテーマの国際交流団体「KIMOBIG BRASIL」(@kimobig brasil)が主催していたブラジルプヂンの1日限定イベントにお邪魔して、日本で唯一のブラジルプヂン研究家、中津雄春さんにその魅力を伺いました。

2023年注目の「ブラジルプヂン」とは何か? 国内唯一のブラジルプヂン研究家“中津雄春さん”に聞く

中津さんは(なんとメディアでの顔出しが今回初)、約12年前からブラジルプヂンの製作を開始。これまで作ったプヂンは1000個以上。研究を重ね洗練されたレシピのプヂンは、そのおいしさから日本人だけでなく、日本在住のブラジル人や駐日ブラジル連邦共和国大使館からも絶賛されるほど。現在は清澄白河のトカクコーヒーさんをはじめ、計9店舗(都内6店舗、大阪1店舗、宮城2店舗)にレシピを提供しているブラジルプヂンの先駆者です。

コンデンスミルクをベースにした、ブラジルらしいプヂン

2023年注目の「ブラジルプヂン」とは何か? 国内唯一のブラジルプヂン研究家“中津雄春さん”に聞く

Q:現在ブラジルプヂンといえば「かためのプヂンとココアスポンジが2層になったスイーツ」というイメージが強いですが、そもそもブラジルプヂンとは何でしょうか? 定義や特徴を教えてください。

中津さん「ひと言でいえば、ブラジルの伝統的なスイーツです。植民地時代にポルトガルから伝えられて以来、多くの人々に愛されていて、ブラジルの家庭でよく作られている人気メニューです。色々なタイプのプヂンがありますが、濃厚で甘いコンデンスミルクを使ったプヂンである『プヂン・ジ・レイチ・コンデンサード/ Pudim de leite condensado』が最もポピュラーです。

僕が作っているブラジルプヂンはBolo Pudim(ボーロ・プヂン)といって、コンデンスミルクをベースにした濃厚なプヂン生地とココアスポンジの2層になっているタイプです。たしかに今、日本ではプヂンとスポンジの2層のケーキのようなプヂン=ブラジルプヂンというイメージを持たれていますが、プヂンはポルトガル語のプリン(Pudim)の総称であり、種類はこれだけではありません。スポンジのないシンプルなものから、色々な食材を使ったブラジルプヂンもあります。」

組み合わせは無限大の遊び心あふれるブラジルの伝統的なスイーツの秘密

2023年注目の「ブラジルプヂン」とは何か? 国内唯一のブラジルプヂン研究家“中津雄春さん”に聞く

Q:色々な食材を使ったプヂンはとても興味深いです。具体的にはどんなプヂンでしょうか?

中津さん「キャッサバ(タピオカの原料)を使ったプヂン、オレンジ・ライム・パイナップルなどの果物やジャムを使用したプヂンなどがあります。ブラジルではココナッツが人気なので、プヂン液にココナッツミルクを使って、ケーキの層にココナッツのサクサクした果肉や粉末をふんだんにいれたトロピカルな味わいのプヂンもあれば、さとうきびから蒸留するブラジルのカシャッサというお酒を合わせることもあります。」

Q:バリエーションが豊富ですね!地域性などはありますか?

中津さん「地域による特色はみられますね。ブラジルは日本の約23倍の国土があり、東西南北は気候も自然環境も大きく違います。熱帯雨林もあれば、乾燥地域、湿原、雪が降る地域もあって食材が各地域で特徴があるので、デザートもその影響を受けています。

2023年注目の「ブラジルプヂン」とは何か? 国内唯一のブラジルプヂン研究家“中津雄春さん”に聞く

ブラジルはアフリカ系やヨーロッパ、アジア系まで幅広く色々な移民の方がいる国で、これまでも色々な文化が影響し合いながら、独自の文化が形成されてきました。食文化も同様で、ブラジルプヂンの種類の多さからも食文化の多様性を見出すことができます。色んな文化が影響し合いながら発展してきた分、ブラジル人は料理に対しても日本人には真似できない発想ができると思います。でなければ、できあがりの温度が異なるプヂン液とスポンジを同じ型に入れて焼いてみよう!という発想は生まれないですよね。

ブラジルプヂンの最大の魅力は遊び心をもって色々な材料の組み合わせを試せる所にあります。出来たプヂンの上に大量のクリームやフルーツの飾りを盛り付けると、ブラジルプヂンのコンセプトから外れてしまいますが、スポンジの有無だけではなく、プヂン液やスポンジ、カラメルの材料や組み合わせに決まりはありません。素材のかけ合わせをひとつ変えると、新しいおいしさが生まれる。工夫次第で組み合わせは無限にあるのが楽しいです。」

「忘れられないプヂンの味をもう一度」はじまりは純粋な情熱から

2023年注目の「ブラジルプヂン」とは何か? 国内唯一のブラジルプヂン研究家“中津雄春さん”に聞く

Q:中津さんはカフェにご自身のレシピを提供するだけでなく、イベントでのプヂン提供、ワークショップの開催など、ブラジルプヂン研究家として多方面にわたりご活躍されていますが、研究家になったきっかけは何だったのでしょうか?

中津さん「“お店のブラジルプヂンの味を再現したい”と思ったことがきっかけです。僕は外苑前にあったブラジル料理「コパ東京」(旧「サパス東京」)でブラジルプヂンに出会いました。いただいたときの濃厚な甘さとおいしさに衝撃を受けて、それ以降はプヂンの魅力に引き込まれました。

しかし、お店は2007年に閉店してしまったため、プヂンが食べられなくなってしまいました。残念に思うと同時に“ブラジルプヂンが食べられないのであれば、自分で作るしかない”と考え、見よう見まねで色々なレシピを試しながら、作りはじめました。

最初はスポンジのないシンプルなプヂンをメインに作り、知人や友人、SNSを通じて繋がることができたブラジル関係の方々など多くの人に食べてもらいながら、試行錯誤を繰り返していました。

2023年注目の「ブラジルプヂン」とは何か? 国内唯一のブラジルプヂン研究家“中津雄春さん”に聞く

そんな中、その当時の職場にいた日系ブラジル人の方から『ブラジルの家庭的なプヂンにはスポンジと2層になっているプヂンがある』と聞きました。ぜひ作ってみたい!と思いレシピを聞いたのですが、いただいたレシピがポルトガル語で書かれていて全く分からず、困ってしまいました。それでも作ってみたい欲はあったので、YouTubeにあったブラジルの料理番組の動画を見ながらレシピの改良を重ねて、今の2層のプヂンの形にたどり着きました。

自分の作ったプヂンを「おいしい」と喜んでいただけていることは嬉しいです。特に日本に住んでいるブラジル人の方に褒めていただけると「現地の味を再現できているのだ」と励みになります。」

2層のブラジルプヂン。おいしさの秘密は「日本らしさ」というエッセンス

2023年注目の「ブラジルプヂン」とは何か? 国内唯一のブラジルプヂン研究家“中津雄春さん”に聞く

Q:中津さんがブラジルプヂンを作るうえで意識しているこだわりを教えてください。

「現地の味を再現しつつ、「日本らしさ」を取り入れるように意識しています。

僕のブラジルプヂンはコンデンスミルクをたっぷり使い、かためのプヂン生地とココア風味のスポンジケーキにほろ苦いカラメルを使用した現地のレシピをもとに作っていますが、なめらかな表面にできるように温度や時間、カラメルの量などは研究を重ねて改良を加えています。現地のブラジルプヂンは一気にケーキ型に流し込んでから高温に熱したオーブンで一気に焼き上げるので、どうしてもプヂンに「す(気泡)」が入ってしまうのです。「す(気泡)」の入ったプヂンがオリジナルならばそのままでもいいのでは?”というご意見もあるかもしれません。

僕は研究家としてブラジルプヂンと向き合う中で“より多くの方に食べてもらい、美味しいと思ってもらえるにはどうすればいいか?”ということを意識しています。日本人は味覚が繊細であると同時に、見た目の美しさも重視する傾向にあるので、「す(気泡)」の沢山入ったプヂンよりはなめらかなプヂンが好まれる。SNSに上がっているトカクコーヒーさんのブラジルプヂンももし「す(気泡)」が含まれていたら、今ほど注目されていなかったかもしれません。

“「す(気泡)」を最小限に抑えるにはどうすればいいのか?”という課題にフォーカスして、ベストな焼き具合や温度を見つけ出す。根気がいりますが、納得のいくプヂンが出来たときはとても嬉しいですね。

2023年注目の「ブラジルプヂン」とは何か? 国内唯一のブラジルプヂン研究家“中津雄春さん”に聞く

今回のイベントで提供している持ち帰り用のプヂンの容器も日本では可愛らしいサイズの方が好まれることを踏まえて、ブラジルから取り寄せました。プラスチック製のためにオーブンが使えず、どのようにスポンジの層をかためるかが最大の課題でしたが、色々試した結果、ベストな答えを導くことが出来ました。今後もオリジナルの良さは残しながら、日本で喜んでもらえるような要素を加えて、より美味しいプヂンを作っていきたいです。」

これからブラジルプヂンはどのように日本で愛されるスイーツになっていくのでしょうか。日本オリジナルのブラジルプヂンの誕生も含め、今後もブラジルプヂンから目が離せません。

駐日ブラジル連邦共和国大使館の公式ページでプヂンの作り方のレクチャー動画の公開予定も!

今回、取材に全面協力してくださった国際交流団体「KIMOBIG BRASIL」さん。なんと駐日ブラジル連邦共和国大使館の公式ページでプヂンの作り方のレクチャー動画を撮影してきたんだとか。動画を撮影したのは中津さん。今後大使館のSNSで公開されるそう、ぜひ公式Instagramも追ってみてください。

取材協力/Kimobig Brasil Writing/puddingirl1518