雲のようなふわふわのメレンゲ、ガツンと酸味の効いたレモンクリーム、バターがふんわりと香るパイ生地…。〝天使のスイーツ〟とも言うべきこのお菓子は、東京都文京区を中心に3店舗を展開する「マミーズ・アン・スリール」の「雲の上のレモンパイ」。
2019年6月に発売されて以来、TVなど数々のメディアに取り上げられ、人気を博してきたお菓子です。文京区の人々に長年愛され続けるお店から生まれたレモンパイ、その誕生ストーリーを、代表の小松さんに取材してきました。
「マミーズ・アン・スリール」は、1995年に創業したパイ専門店。文京区で愛され続けて28年目、地域の人々にとっては「小さいころに食べたあの味」と言われる、ソウルフード的存在です。
お店には、看板商品のアップルパイを中心に、ブルーベリーパイやレモンパイ、キッシュなど、フルーツや具材をゴロゴロと使った素朴で懐かしいパイが並びます。訪れる人々は、地域の人たちを中心に老若男女さまざま。
「マミーズ・アン・スリール(mammies an sourire)」の「sourire」という言葉は、フランス語で「笑顔」という意味。「“母の味”で子どもたちに笑顔を」という願いが込められています。現在代表を務める小松さんは、創業したお母様を継いで2代目。
「もともと母は、私たち子どもを喜ばせるために、よく手作りお菓子を焼いてくれていたんです。家庭で作るごく普通の手作りお菓子だったけれど、アップルパイがおいしいと近所で評判になって。車の移動販売から始めて、少しずつお店を大きくしていったんです」と小松さん。
「母のこだわりは、『子どもに安心して食べさせられること』。それを今でも受け継いでいます。既存の生地を使わず、つまり保存料も着色料も使わない、すべて手作りでつくっています。毎日夜中に仕込みを始めて、朝に焼き立てをお店に届ける。パティシエが作るようなキラキラしたお菓子では決してないけれど、そこがうちのこだわりなんです」。
アップルパイ(中ホール)1700円
看板商品の「アップルパイ」は、これでもか!というほど林檎がぎっしり。林檎は季節によって一番おいしい種類のものを使っているそうで(※取材時4月時点では「ふじ」)、シンプルでほっこりする優しいお味です。お家でリベイクすると、バターのふんわり香ばしい香りが部屋に広がり、なんとも至福!
ちなみに、スタッフは子育て世代の女性が多く在籍。「作ったものを食べてもらう」という意識が強い“母”たちが作るという安心感も、魅力のひとつではないでしょうか。
「雲の上のレモンパイ」(小ホール900円)は、そんな「マミーズ・アン・スリール」らしい発想で2019年に誕生したお菓子。もともと通常商品として販売していたレモンパイ(※現在は一時販売休止中)に、ふわふわしっとりのイタリアンメレンゲをトッピングし、少しブリュレしています。柔らかな甘みのあるメレンゲに、酸味がガツンと効いたレモンクリームを混ぜつつ食べると美味!
この「雲の上のレモンパイ」も、もちろん手作りにこだわっています。パイ生地の白身と黄身を手作業で仕分け、レモン果汁を手で絞り…。酸味を効かせた味わいにするため、果汁はたっぷりめに入れているそう。
そんな「雲の上のレモンパイ」ですが、誕生のきっかけはなんと常連のお客様との会話からだったそう。
「特に50代~60代くらいのお客様からよく言われたのが、『昔はレモンパイにメレンゲが乗っていたけれど、それはないの?』という言葉。じゃあ作ってみるか!と思って、商品化を考えたんです」
小松さんは、子どもたちにも「どう思う?」と意見を聞いたところ「雲みたいにふわふわの楽しいやつがいいな」と言われたそう。そこで、雲に見立てたもこもこのメレンゲを載せることを着想。メレンゲを崩しつつ、酸っぱいレモンクリームを混ぜて味わうという、まさに家族のための楽しいレモンパイが出来上がりました。
普段から、地域の人や常連さんの声から商品をつくると語る小松さん。「この前は、常連の方が『横浜で塩あんこスイーツが流行ってるよ!』と言ってくれたことをヒントに、塩あんこパイを作ったんです。基本はお客さんの声を聞いて『じゃあ作ってみようかな?』と思って新しいお菓子を作りますね」と朗らかに笑う小松さん。
母の愛からスタートした、素朴で優しいパイのお店「マミーズ・アン・スリール」。地域の人々に親しまれつつ、またその期待に応えていくというシンプルで暖かいスタイルだからこそ、長年愛され続けているのではないでしょうか。雲のようなメレンゲを崩しながら頂く楽しいレモンパイ、家族や大切な人と、ほっこり過ごす日にぜひ。
About Shop
マミーズ・アン・スリール 谷中店
東京都台東区谷中3丁目8−7
営業時間:11:00~17:00
定休日:なし
Photo&Writing/Nanako Maeda
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