幼少期に誰しもが食べた、記憶の彼方にある“おやつのとっておき”。今回、21回目となるショートケーキ連載の舞台となるのは現在、首都圏を中心に全国400店舗ほど展開している、あの「銀座コージーコーナー」。あの定番の「苺のショートケーキ」ではなく、今回紹介するのは「シャンティ・ジェノワーズ」という名前のついた、新作のケーキ。聞けば目からウロコの開発に時間と情熱をたっぷりと注ぎ込んでまでこだわられた、奇跡の味を紐解いていく。
コージコーナー=「憩いの空間」、そんなメッセージが背景にある老舗は今では知らない人はいないほど。老若男女問わず愛され続けていて、人気のジャンボシュークリームをはじめ、種類豊富なケーキや焼菓子、チョコレートなど、常時150種類以上の商品が店頭を華やかに彩っている。喫茶室もある銀座1丁目本店から感じる空気感、外観の迫力は足をつい運びたくなるほどワクワクがつまったお店となっている。まるでケーキのショーケースのような外観だ。そんな「銀座コージーコーナー」が、熱い情熱を注いだのがシンプルな「ショートケーキ」である。
今回、新商品として2022年の4月8日から1カ月限定で販売されたのが「シャンティ・ジェノワーズ」(583円)である。人気の定番商品「苺のショートケーキ」とは違い、長方形になっており、この開発にはたくさんの想いが込められている。
今回、開発に際してのお話を「シャンティ・ジェノワーズ」開発者に話を聞くことができた。“既存のやり方に捕らわれない”ことを、研究・企画・製造・販促のチームが一丸となって取り組んだプロジェクトなんだとか。そこで「どんなスイーツをつくるか」という部分で、大切にしたのは“既存のショートケーキをどう発展させるか”ではなく、“いかにショーケースのセンターに置くにふさわしいケーキを作るか”。そこから創業以来、長年愛され続けている“苺のショートケーキ”を新しく、プレミアムな仕様で開発されたんだとか。
こだわりは、クリームとスポンジ&全体のバランスとのこと。なんとクリームは、風味や乳味だけでなく、脂肪分の違う国産2種(35%/47%)の生クリームをブレンド。比率だけでなく、1%単位で砂糖の添加量をテストし甘さを調整し、ホイップ方法も微調整を繰り返して作り上げたという、涙が出るこだわりっぷり。たしかにこの生クリームは、今まで食べたショートケーキの中でもトップクラスの美味しさ。ミルキーで、臭みも一切なく品質の良さと管理の良さを感じるほど。
スポンジの軽さも驚くほどで、クリームと一緒にフォークを入れて口に運べば、軽やかで一瞬で消えていく。苺との一体感はたまらない。
ここまでクオリティの高い美味しさを実現するには、生産が難しいのではないか?という点があり、質問をすると「難しかったことは工場での生産ラインへの落とし込み」とのこと。
「ふんわり軽やかな食感や、厳選した小麦・生乳・砂糖の素材の風味を凝縮させた味わいを最優先させて、お客様が口に運ぶ瞬間まで、それを維持させるためのレシピに非常に苦労しました」とのこと。ここまで繊細なクリーム、なめらかな美味しさを工場から配送し品質を保つのは並大抵ではない。
生産ライン自体も、ゼロから構築して、生産ラインテスト、配送テストなどを何十回と繰り返し行ったという企業努力は確実にお菓子界を変えていくだろうと感動もの。
側面を見ると、2層あるクリームの中で下の層には苺を入れず、上だけ苺を入れている。苺スライスの厚さやサンドの厚さは、食べた時の一体感を目指して調整しているそうだ。上段だけが苺になることで、クリームの乳味・風味を存分に楽しめる構成になっており、生クリーム好きとしてはたまらない。
生クリームは、軽い乳味と口溶けの良い35%クリームと、しっかりした乳味とコクの47%クリームをブレンドしている。異なる濃厚さのクリームが生み出す食感のコントラスト、後味の余韻の複雑さは素晴らしい設計である
なぜ三角形のケーキではないのか? 質問をすると、三角形のケーキは食べる場所により、苺とクリームとスポンジのバランスが崩れるため、どこから食べても、どこを食べても苺とクリームとスポンジの美味しさを(同じバランスで)感じられる商品を目指し、長方形にしたそう。
一つのケーキにかける想いとそのパッション、この原稿を読んで食べたいと思ってもらう人が一人でも増えたらと思い、5月8日まで。ぜひご賞味を。
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銀座コージコーナー
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Photo/Cream Taro
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