みなさんは“金木犀”と聞いてなにを思い浮かべますか?
近年、その甘く麗しい香りから注目と人気が高まり続けている秋の花。花言葉は“謙虚”や“気高さ”というのが有名です。
そして数々の神話にも登場する“金木犀”を店名に持つお店が西荻窪にあります。中国生まれの店主が営む中国茶、カフェ、ギャラリーを併合した「金木犀茶店」は、完全予約制のお店。ハーブやスパイスを多用した複雑で美しいパフェが人気です。
独特な魅力で遠方からの来客も迎えるいま旬のお店で、店主の李海純(リ・カイジュン)さんを取材。他では珍しいスパイスを主役にした今季の「旬とスパイスパフェ」についてお伺いしました。
2019年10月にオープンした「金木犀茶店」。店名はこの季節にインスピレーションを受けて決めたそうです。
李さん「今もですが、オープン当時の記憶として10月になると街中で金木犀の甘い香りがしたのを覚えています。私の実家にも金木犀が植えられていて、私にとってその香りは安心感とともにノスタルジックな気持ちにさせるものです。
また、英語で“金木犀”は“Sweet Olive”といいます。甘いものとお茶を出すこのお店にぴったりだと思いました。お客様には僕の故郷である中国のお茶を身近に感じていただければ嬉しいです」
ドライフラワーが飾られた店内には、至る所に中国陶器や掛け軸、書画が。その風景は現代的にも古典的にも感じられます。1階では店主が「金木犀茶店」の雰囲気を好んでくれたお客さんに向けたギャラリーが日々開かれています。
今季のパフェは「旬とスパイスパフェ」。オープン以降初めてのスパイス&ハーブが主役のパフェだそうで、14ものパーツで構成されています。
李さん「今回は私にとってもチャレンジでした。難題は、果物とスパイスをスイーツというカテゴリに落とし込むとき、どうやってバランスをとりつつ、スパイスの香りやピリッとした辛味を楽しんでいただくか。
今回はパリッとした焼きチーズで蓋をして作ったパフェグラスの外側と内側を堪能していただければと思います。まずは、チリペッパーの飴や洛神花(ローゼル)のメレンゲ、檸檬チーズのアイスと黒胡椒の焼きチーズをお好みのドリンクと一緒に楽しんでください」
取材時にペアリングとして選んだドリンクは「金木犀シロップのソーダ」。まずは、ガラスのような見た目のチリペッパーの飴と、メレンゲをひと口ずつ。それからフレッシュプラムを食べると、果物の甘さにびっくり。冷えたプラムが口の中を引き締めます。
檸檬とパルミジャーノチーズのアイスは食べるとこによって、感じる酸味や塩味が異なります。黒胡椒の焼きチーズと合わせることで辛味とコクが追加され、エキゾチックな味わいに。
李さん「グラス内部は杏仁豆腐アイス、クランブル、シャンティ―など混ざりやすいパーツを組み合わせました。ひとつひとつの味わいだけでなく、組み合わせで変化するパフェの印象を楽しんでいただければと思います」
ラズベリーのグラニテには、中国料理にはかかせないスパイスの八角を使用しています。真っ赤な姿と酸味の効いた味わいは、シルクロードを渡った高貴なビロードを思わせる存在感。
杏子の種子から取り出される仁(さね)から作る杏仁を加工した杏仁豆腐のアイスはなめらかな舌触り。白い花のようなやさしく甘い香りです。
パンナコッタやクリーミーなヨーグルトのシャンティは、フレッシュの巨峰や果肉のモヒートマリネの酸味と相性ピッタリ。さまざまなパーツに使われたスパイスが持つ、舌をひりひりさせる特有の刺激に対してミルクの脂肪分がクッションとなり落ち着かせます。
スイーツでありながらハーブやスパイスの辛味と塩味を巧妙に駆使したエキゾチックな味わいが新しく感じる「金木犀茶店」の「旬とスパイスパフェ」。
中国の伝統的な食材に対して、日本でも馴染みを感じてもらえるよう心がけているという李さん。パフェのアイディアは友人との会話や日々の買い物がヒントになっているそうです。
9月に入り、ようやく過ごしやすい陽気となったこの頃。
秋の始まりを予感させるそよ風が「金木犀茶店」にぴったりの季節を運びます。
皆さんもぜひ、パフェを通して中国の薬膳文化を感じてみてはいかがでしょうか。
About Shop
sweetolive 金木犀茶店
東京都杉並区西荻南2丁目5−6
営業時間:平日 12:00-16:00/土曜日 11:00-16:00
定休日:日、月、火、祝日
※毎週水曜日22時頃ホームページのブッキングより予約受付
園果わたげ
ウフ。編集スタッフ
ufu.の新米編集者。メンズカルチャー誌でアシスタントを経験後ufu.に転身。 特技は甘いものを食べ続けること。最近は美術館内レストランの限定コラボスイーツにハマっている。
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