じりじりとした暑さの続く夏。
関東を代表する人気のビーチスポット湘南地区はこの時期、特に多くの人で賑わいます。なかでも茅ヶ崎は長く広々とした海岸は元より、今もなお幅広い世代から愛されるロックバンド「サザンオールスターズ」の桑田佳祐さん(Vo)の出身地として数多くの音楽ファンが訪れる人気スポット。
そんな茅ヶ崎駅から徒歩10分。2021年7月にオープンした「BONBONS DE K(ボンボン ドゥ カ)」は今までその地になかったスタイルのお店。グルテンフリーの焼菓子のみを扱った専門パティスリーで、店内にはメインと日替わりを合わせて約50種類のフィナンシェが並びます。
「焼き菓子も、もちろん美味しいですがこのお店の魅力は何と言っても“パフェ”です!」
と、語るのはこれまで1,000種類以上のパフェを食べ歩き、「マツコの知らない世界」にも出演したパフェアンバサダーの小泉さん。
そう、「BONBONS DE K(ボンボン ドゥ カ)」は、小泉さんが“できれば秘密にしておきたい”とっておきのお店です。今回は小泉さんと一緒に、店主の永島かおりさんとパティシエの田中さんを取材。小泉さんがずっと知りたかった「BONBONS DE K(ボンボン ドゥ カ)」のパフェがもつ魅力的な世界を深堀りします。
小泉さん「何度もパフェを食べに来店していますが、いつ来ても雰囲気の良いお店です。まずは、この地でグルテンフリーのパティスリーをやろうと思ったきっかけを教えてください」
永島さん「『BONBONS DE K(ボンボン ドゥ カ)』には大きな2つのテーマがあります。“女性”と“創造(クリエーション)”です。
私たち“女性”が活き活きしていると、世の中がいいムードになると感じます。最近LGBTQなど、多様性が理解されるおおらかな世界になってきていると思います。しかし、まだまだできることがあると思うんです。
私自身、女性誌の編集長をしていた際、さまざまなお店や場所を紹介してきました。どこのお店も笑顔と良いエネルギーに溢れていましたし、活字や写真、企画を通して読者に伝えることにやりがいをすごく感じていました。
一方で‟食“とは、食べているその時間に幸せがあります。この瞬間に自分‟らしさ“が喚起するのではないかと思っています。このお店は、訪れる人に内なる創造力や“らしさ”を感じてもらいたいと作りました。そのためにはまず、自分がそうであるべきだと、実際に私が住む茅ヶ崎を選んだのです」
永島さん「グルテンフリーのお菓子にしたのも私の経験からです。30代で仕事をしていると日々の食事が身体に影響していることを痛感します。そこで1度、小麦(グルテン)を取らない生活をしたら身体に負担がかからず気持ちよく過ごせた。日本人は元々米社会なわけですから当然なのかもしれません。
うちでは小麦粉の代わりに米粉を使用しています。米粉のお菓子は健康的で素朴なイメージがありますが、うちのお菓子は誰でも笑顔になる味だと自負しています。
仕事で疲れて甘いものが食べたいときに、グルテンフリーで気兼ねなく西洋菓子を楽しんでもらいたいですね」
小泉さん「初めてお店に来たときには、こんな場所にこんなお店があるなんて!といういい意味で違和感がありました。パフェを食べた時にも、他のお店とは違ったところにこだわりを持っているように感じたんです」
永島さん「それは嬉しいですね。お店を通して“日常とはちょっと違う、“自分らしさ”を感じて欲しいので。接客をしすぎず、お1人でも楽しんでいただける空間を心掛けています。
パフェは最初にお話しした2大テーマの1つ、“創造(クリエーション)”に直結する大切なスイーツです。デセールやパフェというのは、イメージ力を創造させるデザートだと思っています。月ごとのパフェは季節や雰囲気を表現していて、見た目も味も毎回全く違います。私のプロとしての領域はさまざまな物事の編集なので、ここからはパティシエの田中にバトンタッチしますね」
田中さん「パフェのアイディアはかおりさんと二人で出し合っています。まずは1年間に使うフルーツを予め決め、その時の季節行事や流れを感じ取ってパフェの構成を考えています。毎月3回はやり直しをしているかな。二人ともこだわりが強いので、完成するのはいつもギリギリです(笑)」
小泉さん「田中さんのこだわりは食べていてとても感じます。『BONBONS DE K(ボンボン ドゥ カ)』のパフェはいつもパーツが多く繊細。また、何を表現されているにかも伝わります。今回のパフェは見た目にも鮮やかでジュレやフルーツの瑞々しさが夏らしい」
田中さん「今回のパフェの構成は、おっしゃる通り夏らしいフルーツの組み合わせにしました。10種類のパーツには、ミントのジュレやゴルゴンゾーラを入れて味が単調にならないようにしています。
最近、僕が意識しているのは“五味(塩味、苦み、酸味、旨味、甘み)”をどうパフェに取り入れるかです。グラスに塩を付けるスノースタイルや、スイーツでは珍しい材料を使用し、さらに組み立て方で味わいのバランスを整えます。
あまりにも奇抜なことをすると逆に、食べる人の創造力を妨げてしまうのでやりすぎには注意しています」
小泉さん「パフェで“五味”のお話が出るとは思いませんでした。どういうきっかけで意識したのでしょう?」
田中さん「僕はここに来るまでパフェ作りの経験がなくて、最初はパフェがなんなのかさえ分からなかった。生クリームやフルーツてんこ盛り、というのは何か違うし。そこで、考える軸として“五味”を意識するようになったんです」
小泉さん「いろいろなお店のパフェを食べていると、果物の味わいを引き出すアプローチが多い気がします。一方、『BONBONS DE K(ボンボン ドゥ カ)』のようにシチュエーションをテーマにしているところは珍しい。今回のパフェはどのようなイメージで作ったのでしょうか」
永島さん「夏のパフェということで、今までにないポップな仕上がりにしました。子供でも食べたくなるような。年配の方にはこのパフェの可愛さで、若いころの気持ちを思い出して楽しんでほしいです」
田中さん「毎月のテーマとなるフルーツはファースト・インパクトとして目に入るようにしています。そして食べ進めると、また違うアプローチで出会うんです。今回の場合、スイカがトップにあり、途中でグラニテとして再登場します。
元々アクセントとなるパーツを入れているので、パフェになったときの一体感も大事です。食材と食感でストーリーを紡ぐような感覚ですね」
小泉さん「確かに、丸くくり抜かれたスイカは可愛らしく、マンゴー、キウイ、パイナップルのビタミンカラーがスイカの赤に映えますね。ほのかに香るラム酒とバジル、ピンクペッパーは繊細な味わいのアクセントになります。何が入っているんだろうって、創造力をかき立てられる感覚に食べる楽しさがあります」
小泉さん「パフェもお店の雰囲気も堪能して、すごく有意義な時間です。改めてパフェ作りを通して何を感じますか」
田中さん「本当に難しいジャンルだなと。笑
1番は、グラスに入れて提供するので生菓子ではありえないような食感や立体感を表現できるということです。見せ方もグラスによって全く違います。
生菓子のように型に入れて作らないので、僕も型にはまった考えを捨てなきゃいけない。その自由度が面白さであり、難しさです」
永島さん「大人になっても食べたいものを考えると、生クリームやアイスがたっぷりのダイナミックなパフェだけではなくなります。パフェグラスも大切な構成の一部なので、リーデルグラスや木村硝子を使い、毎月異なるグラスを楽しめるようにしています」
小泉さん「僕にとってこうした飽くなきこだわりは、楽しみを何倍にも増やします。パフェを作る人って空間を大切にする人が多いんです。グラス内に1つの世界を作るわけですから。それが、シチュエーションや感情を動かすというお話に必然性を感じました。“女性が自由に創造できる場所”として、また僕のようにパフェの虜になった人にも『BONBONS DE K(ボンボン ドゥ カ)』は間違えなく最高の場所だと思います」
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BONBONS DE K(ボンボン ドゥ カ)
神奈川県茅ヶ崎市東海岸北3丁目15−34 茅ヶ崎ブロックイースト 1階
営業時間:11:00~19:00
定休日:月曜日、火曜日不定休
園果わたげ
ウフ。編集スタッフ
ufu.の新米編集者。メンズカルチャー誌でアシスタントを経験後ufu.に転身。 特技は甘いものを食べ続けること。最近は美術館内レストランの限定コラボスイーツにハマっている。
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