その名前を知らない人はいないであろう、ご褒美アイスの定番「PARM」が、今脚光を浴びていることはご存じですか?きっかけは、今年6月に実施された「#じゃない方パルム」のPRキャンペーン。人気バラエティ番組発祥の“じゃない方芸人”というワードが盛り上がっていることもあり、SNSで話題になりました。
勉強や仕事で疲れたとき、無性に食べたくなる「PARM」。あのクセになるような食感と味わいは、どうやって生まれたのだろう?食べるたびにおいしくなっているのはどうして? そんな気になる「PARM」のヒミツを、マーケティング担当者さんにたっぷり取材しました。
PARMといえば、バニラアイスにチョコレートがコーティングされた、赤パッケージの「チョコレート」味を思い浮かべる方がほとんど。ですが、他にも「チョコレート&チョコレート」「キャラメルラバーズ(※現在は終売)」「アーモンド&チョコレート」「ストロベリー」の4種類のパルムが販売されているんです。
定番である「チョコレート」以外のフレーバーの認知度をアップさせるため、その他のフレーバーを「じゃない方パルム」と名付け、「私たちも、パルムです。」という彼らの心の叫びをメインコピーにして、看板や新聞広告、SNSキャンペーンを展開していったのが「#じゃない方パルム」のPRキャンペーン。
特に大盛り上がりだったのがTwitterで、「#じゃない方パルム」のタグはなんと5万件も投稿されトレンド入り。そして、「じゃない方パルム」の売り上げも前年の1.3倍を超えたのだとか!PARMファンからは「じゃない方なんかじゃないよ」などの温かい意見が集まるなど、PARMの人気っぷりを再確認する機会にもなったのだそう。
今回お話をお伺いしたのは、森永乳業冷菓マーケティング部の武藤さん。PARMをはじめ、アイスクリームの商品開発・企画を担当しています。推しのPARMは赤の「チョコレート」。仕事の合間にアイスを食べるほど、アイスクリーム愛がとても深いお方!
Q.一番最初にPARMが発売されたのは2005年4月。愛され続けて17年目になる長寿アイスですが、開発のきっかけは何だったのでしょうか?
武藤さん「開発が始まった2003年当時、アイスクリームは“子ども向けのおやつ”というイメージが強かったんです。そこから、競合があまりいなかったことと、少子高齢化という社会情勢を見据えて、“大人向けアイス”をつくろうと企画が立ち上がりました。
当時の“大人向けアイス”は、高級アイスのハーゲンダッツくらいしかなかったので、日常的に食べてもらえるような、高級とプチプラの中間価格帯のものをつくれば行けるんじゃないかと。」
Q.一口食べたときに、生チョコのようなコーティングとやわらかめのバニラアイスが一緒に溶けていく“はむっと”食感がおいしさのヒミツかと思います。この絶妙な食感を実現するのは難しかったのではないでしょうか?
武藤さん「かなり苦戦したようで、開発は約2年、試作は約1000本つくったと聞いています。当時の開発担当者は、PARMを食べすぎて常に吹き出物に悩まされていたとか…。
チョココーティングの部分は、パリっと割れない、しっとりとした生チョコのような食感を出すのが難しかったんです。厳選した素材を配合して実現したのですが、これに至るまで開発は1年かかったそうです。
バニラアイスをなめらかな食感にする調整が特に難しくて。理想のなめらかさにするためには、急速冷凍して氷の粒度を細かくする必要があったのですが、当時の日本の工場設備ではできない。なので海外から新しく設備を導入しました。会社にとってはかなり大きな投資ですが、そのくらい期待をかけていた商品だったんです」
Q.そんな幾多の試作・開発を繰り返し、ようやく2005年4月に発売されたPARM。実は、販売当初は売上がふるわなかったそうですが、そこから超定番アイスのポジションを確立できたのはなぜですか?
武藤さん「食べてもらえば、絶対に『おいしい!』と言ってもらえる自信はあったのですが、なかなか知名度が上がらなくて。何かがきっかけで爆発的に人気がアップしたというよりは、実際に食べてもらう機会をつくったり、CMの打ち出しを変えたりして、PR活動を地道に積み重ねた結果だと思っています。
例えば、スーパーの売り場店頭で、PARMの「チョコ付け体験」(その場でチョコの海にバニラアイスを漬けて、仕上げて食べる試食販売)を行ったり。実際に味を知ることで、『こんなにおいしかったんだ!』と知るお客さんがじわじわと増えていったんです」
発売から17年間、いつ食べてもずっとおいしいPARM。地道な開発部のマーケティング調査をもとに、大なり小なり、常に改良を続けているそう。
武藤さん「定番化した今でも、時代にあった美味しさにアップデートしていくために商品改良は続けていますね。『リニューアルしました!』という告知を打ったりして、アピールもします。
ただ、味を変えると、今までのファンが離れてしまう可能性もある。だから、改良サンプルをつくってはお客さんに食べてもらい、今までと比べてどう?と聞きます。その調査の結果で、市場に出すか慎重に慎重に決めていくんです」
こんなにおいしいのに、慢心せずにずっとアップデートを続けているからこそ、ずっと大人気の定番アイスでいられるんですね。
PARMといえば、定番フレーバーに留まらず、季節限定味もおいしいですよね。春夏・秋冬の年2回で限定フレーバーを発売しているそうですが、今年の秋冬フレーバーがちょうどお披露目されたので、こちらもご紹介して頂きました。
「1つ目は、種子島産の『安納芋』フレーバーです。濃厚な安納芋アイスと、ホワイトチョコのこっくりとした味わいのハーモニーが絶妙。焼き芋の湯気と共に立ち上る、素朴な甘い香りを再現しました。エ霞文(えがすみもん)の、和の高級感あふれるパッケージにもこだわっています!」
「2つ目は『キャラメルパンプキン』。かぼちゃ味のアイスはPARM史上初なのと、他でもあまり発売されていないのとで、みなさんに味わってもらうのがドキドキのフレーバーです。中にほろにがいカラメルソースを入れ込んで、かぼちゃの甘さにアクセントを加えています。」
ちなみに季節限定フレーバーも、約1年かけて開発しているそう。開発期間は長めですが、それもPARMファンの期待に応えるため。「現在は2023年秋のフレーバーを開発中です。トレンドはすぐに変わるので、1年後の市場はどうなっているのかドキドキしながら日々開発に取り組んでいます!」
2005年の発売から、老若男女にずっと愛され続けてきたPARM。このおいしさは、歴代の開発担当者たちが少しずつ進化させ、守り続けてきた味でした。夏の暑さも終わりかけの昨今、今晩のアイスはPARMを食べてみてはいかがでしょう?
まえなな
ウフ。編集スタッフ
住宅雑誌の編集者を経てufu.編集部に。あんこや抹茶味の和スイーツがとにかく大好き♡ 最近のマイブームはあんバターサンド食べ比べ。
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