miki
チョコライター
ufu.でも連載がスタートする、平成生まれのチョコライター。チョコレート検定エキスパートも取得し、その丁寧な文章に各界からも注目を浴びる。
某テレビ番組のチョコレートケーキ特集で紹介され、その美しい見た目と精巧なケーキがHOTなLENÔTRE<ルノートル>。本国フランスのクリエーション・ディレクター「ギー・クレンザー」氏の厳しい指導と監修のもと、日本で腕をふるうシェフたちに密着。今まで表舞台にあまり登場することのなかった、日本のアトリエ責任者「北川健一」シェフの素顔とその思いを聞いてきました。
「たまたまご縁があり、募集されていたシェフ職に応募しました。本国フランスでは、誰もが知る老舗。日本では一度上陸して、撤退もしている。再度上陸し、日本市場で勝負しようとしている真っ只中だったんです。そこに、一番の魅力を感じました。LENÔTRE<ルノートル>をみんなに知ってもらうために“やってやろう”、そんな気持ちで入社しました」
「”フランス語が必修″という条件も厳しかったですが、何より厳しかったのが研修です。当初、2週間のフランスでの研修予定だったのが、1週間程度になり、ギーシェフから教わることも、ほんのわずかな時間。日本に戻ってからは、ギーシェフの弟子・インターナショナルシェフに教わる日々でした。とくに一番難しかったのが、フイユ・ドトンヌ。繊細なケーキのため、1個を作り上げるのにも精神統一が必要で、1個作れても、20~30個とたくさん作ると、当初は丸半日以上かかってしまい、苦労しました」
「ギーシェフから言われたこの言葉が、すごく印象的です。LENÔTRE<ルノートル>は、50年以上続くこのレシピを、下回ることはもちろん許されない、上回ることも許されない。不変の味を守り続けることの大切さ、そしていつ、どんな時でもその味を再現できることの難しさを突き付けられた気がしました。最初は何度作っても、ギーシェフには目も合わせてもらえないし、コメントももらえなかった。」
「ギーシェフが来日した時に、二人でデモンストレーションを行うことになりました。まさかギーシェフと一緒に……とすごく緊張した瞬間でした。
“大丈夫だ。お前のミスは俺がカバーする。でも、俺がミスしたらお前がカバーしろ”
「救われた瞬間でした。その言葉が今もずっと、心に残っています。ギーシェフが初めて僕のことを褒めてくれ、LENÔTRE<ルノートル>認定書を渡されました。僕がLENÔTRE<ルノートル>ファミリーとして認められた瞬間でした。」
「まだまだ、日本には入ってきていないものがたくさんあります。本国の商品を、日本でも販売できるように、僕が率先して学び続け、また若いスタッフたちに教え続けていくことが、これからの課題です。」
編集後記:皆さんからしたら“もっといっぱい色々な種類が食べたい”と思われるかもしれません。小さなケーキのたった1個に、これだけの物語がつまっています。そう思って食べると、また感じるものも、味も、感動も違うかもしれません。ぜひ、物語と一緒においしいスイーツを食べてみませんか?(By 編集長)
Profile
北川健一 Kitagawa Kenichi
株式会社ル・サントノーレ
・Patisserie G・M-Bressand MOF
・chocolaterie Fontaine MOF
・株式会社ヨックモック
・都内、製菓の学校の教師
・2019年 現LENÔTRE<ルノートル>アトリエシェフ(日本)
About Shop
LENÔTRE 銀座三越店
〒104-0061
東京都中央区銀座4-6-16
銀座三越本館 地下2階
不定休
Photo/Kim Ahlum Writing/Cream taro
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