神奈川県・逗子にある漁師町・小坪。決してアクセスのよくない路地の中に、絶景を有する小さなカフェ『Minamicho Terrace(南町テラス)』があります。
息を切らして坂を上がると現れる小さな古民家カフェ。高台から望む相模湾の美しい眺望。そして素材にこだわった手作りのオーガニック料理が『南町テラス』を訪れた人を癒します。
今回は、オーナーのひだかなおこさんに取材。不便を楽しみ、日常を丁寧に過ごすなおこさんならではのおもてなしについて伺いました。
2012年8月にオープンした『南町テラス』はバス停「小坪海岸」で降り、5~10分ほど坂道を上がったところにあります。現在は完全予約制で、貸し切り状態になるように時間管理をしているんだとか。そのため自然が奏でる音をBGMにゆったりと過ごせます。
なおこさん「元々都内で暮らしていたのですが、仕事や私生活に追われせかせかと過ごす日々。子供には自然の中で伸び伸びと育ってほしいという思いがありました。そんな中で偶然見つけたのが小坪の小さな古民家だったんです。
『南町テラス』をオープンするにあたり、地域の人たちの憩いの場であると同時に、ちょっとした不自由を楽しみ、自然と共に生活する喜びを少しでも届けられたらと、現在の営業形態になりました」
『南町テラス』は漁師が住んでいた古民家をなおこさんと一級建築士の夫の二人で改装。お気に入りは小道に続く石畳で、大きな石を家族で協力して運び、1つ1つ削って作ったんだとか。
なおこさん「不便を不便と思わず 、自分たちの手でやろうと決めていました。改装はこれが完成ではなく、今も少しずつ手を加えているんですよ」
メニューの多くはなおこさん自ら現地に行って仕入れた素材で作られています。特に人気なのが「おやつプレート」で、コースのように1皿1皿提供。お茶とお着き菓子から始まり、日によって異なる季節の素材を使ったスイーツが2種類ほど順番に出てきます。
なおこさん「家族を思うように、お客様を思って作ることを心がけています。そのため余計なモノが入っていない身体に良い素材しか使っていません。メニューはその日や人によって変えています。例えば常連の方は好みを知っているので、タルトの果物をお客様の好物に変えることも。そうして笑顔になる姿をみていると、私もやりがいを感じます」
なおこさん家族が引っ越してきたばかりの時、改装作業をしていると様子を見に来た近所の人が集まるように。“カフェでも開けばいいのにね”という言葉を受けて『南町テラス』をオープン。昔からカフェを開きたいと思っていたなおこさんにとっては、思いもしない成り行きに驚きつつ、同時に心躍ったそう。
カフェオープンのきっかけとなった近所の方や、新しいお客さんがくつろげる空間を何よりも優先し、現在の『南町テラス』となりました。
取材時の「おやつプレート」は、お着き菓子に地元・小坪で採れた天草を使用した寒天と、手摘み手揉みで仕上げた茶花茶。オードブルはみずみずしく濃厚な完熟無花果と、紅茶風味の豆乳カスタードを合わせた「無花果のタルト」。そして、サクサクのパイ生地に自家製ベリーソースと和栗を合わせた「和栗のミルフィーユ仕立て」です。
アレルギーをできるだけ気にせず食べられるよう、卵や乳製品は不使用。お菓子はどれも日差しを浴びてキラキラと輝いています。特にグラスデザートは特別感があり、お客さんも喜んでくれるんだとか。
なおこさん「土地の素晴らしさ感じていただきたいと、『おやつプレート』には必ず小坪の食材を使うようにしています。今回は寒天と蜂蜜が小坪産です。果物はできるだけ農家さんに会いに行き、時には収穫を手伝うこともあります。働いて分かる素材ならではの美味しさがあるんです」
都内の生活から離れ、全く新しいライフスタイルを楽しむなおこさん。そこで、今後やりたいことについて伺いしました。
なおこさん「まだまだやりたいことの半分もできていません。
今一番力を入れているのは茶作りでしょうか。山梨県に廃屋のある茶畑と出逢い、今年3年目でやっと若い目が出てきたんです。コツコツ世話をしてきた分、自然が与えてくれる恵みがこんなにも素晴らしいものかと、毎日感動してばかり。将来的にはこの廃屋を改修してカフェを開きたいと思っています」
茶畑の中に佇む小さな古民家カフェとは、想像しただけでもワクワクします。
なおこさんが丹精込めて作った無農薬の茶葉は、現在『南町テラス』でスイーツと一緒に楽しめます。
About Shop
Minamicho Terrace(南町テラス)
神奈川県逗子市小坪4-12-15
営業日:南町テラスHPから予約
園果わたげ
ウフ。編集スタッフ
ufu.の新米編集者。メンズカルチャー誌でアシスタントを経験後ufu.に転身。 特技は甘いものを食べ続けること。最近は美術館内レストランの限定コラボスイーツにハマっている。
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