いま若い女性の間で大ブームの純喫茶めぐり。でも純喫茶って一体何だっけ?と思っている方も多いはず。そこで、喫茶カルチャーなどに詳しい識者・田中慶一さんに、純喫茶が生まれた理由、喫茶店、カフェの違いや歴史について、詳しく聞きました!
純喫茶の前に、実は、カフェーというものが、昭和初期に流行りました。カフェじゃなくて、カフェー(うしろにアクセントがついて伸ばす)です。コーヒーのほか、洋食やアルコールも提供していて、女給さんがいたり、ダンスを披露するお店があったり、とにかく当時流行ってたんです。今でいうキャバレーというかスナックに近い感じ。
でもカフェーという店名でひとくくりにすると、そういう風俗的なお店と普通の喫茶店の見分けがつかなくて、未成年が入店してしまったり、問題が起きたんですね。それは由々しきことだと政府が思って取り締まることに。純粋に喫茶を楽しめる、アルコールの提供などがない店を純喫茶と名乗るルールにしました。そこから純喫茶という名前が生まれ、今に至ります。
そして、喫茶店も細分化されていき、Jazz喫茶が生まれたり、カフェ&バーができたり、個性を打ち出すお店が増えていきました。
現在は、純喫茶と、喫茶店の決定的な違いは、アルコールを提供するか否かで分けられるようです。でも喫茶店や喫茶室と名の付くお店も、実態は純喫茶だったりすることが多いですね。
諸説あるのですが、東京・上野にあった『可否茶館(かひさかん)』がルーツと言われています。コーヒーを楽しめるほか、ビリヤード、トランプ、クリケット、碁、将棋など娯楽も楽しめたとか。大人のハイカラな社交場として人気だったようです。
ちなみに、初めてコーヒーをお店で出したのは、神戸のお茶屋『放香堂』といわれていて、社会の教科書にも載っています。明治10年代の頃で、コーヒーを飲む人も少なかったようですが、神戸は外国の人が多かったから、早かったのかもしれませんね。
カフェーのルーツは、明治40年ごろにできたカフェープランタンやライオンと言われています。現在の銀座ライオンは、飲める洋食レストランですが、もともとはカフェーだったそう。
個人的な見解ですが、今の若い女性にウケているのはインスタ映えするからだと思います。
昔の歌謡曲が流行ってるように、昭和レトロな雰囲気がエモいからでしょうか。昔も今もなぜか惹かれてしまう魅力があるようですね。
コーヒーカルチャーも巡り巡っています。鎌倉の『カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ』が流行ったり、『カフェロータス』や『バワリーキッチン』がブームになったり。
ちょっと前は、『ブルーボトルコーヒー』などのサードウェーブ系が大人気でしたし、今後もまた何かがトレンドになるんでしょう。
燈台下暗しかもしれませんが、銀座の『洋菓子ウエスト』は、空間、箱が素敵なのでおすすめです。また、銀座『パウリスタ』、お茶の水『穂高』、日比谷『喫茶ストーン』、銀座『カフェ・ド・ランブル』、南千住『カフェバッハ』あたりもエモい気分に浸れると思いますよ。
教えて下さった方
文筆業・田中慶一さん
〈Profile〉
1975年生まれ。神戸の編集プロダクションを経て、フリーランスの文筆・編集・校正業に。コーヒー好きが高じて独自に喫茶店・カフェ事情の取材を続け、珈琲&喫茶にまつわる小冊子「甘苦一滴」を刊行。
Writing/Mariko Ebisawa
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