色とりどりの花々が芽吹き始める春。
日常の風景にも彩りが増え、“花のある暮らしっていいな”と花屋を覗きたくなる気持ちが増します。
今回紹介する『NECO QAVREENO (ネコカヴリーノ)』は、中野区・江古田エリアにある店。実はここ、1つ屋根の下に店主も運営方法も異なる、同名の花屋とカフェが併設されているんです。
下田宗明さんは、常に30種類以上の草花を取り揃える『ネコカヴリーノ』花屋の店主。一方、誰もがほっとする雰囲気の『ネコカヴリーノ』カフェで、身体に優しいお菓子を作るのは、カフェ店主の福原悠さんです。
なぜ2人は同じ名前でお店を出したのでしょうか?
気になる2人の不思議な関係と、『ネコカヴリーノ』ならではの花とカフェ空間をufu.編集の「園果わたげ」が取材してきました。
花屋店主の下田宗明さんとカフェ店主の福原悠さんは元々、医療・福祉系の仕事に従事していたのだとか。
園果わたげ「お二人とも、以前はまったく違う仕事をしていたんですよね?どんな仕事をしていたのでしょうか?」
下田さん(花)「僕は元々看護師を14年間やっていて、花屋になったのは35歳のときです」
福原さん(カフェ)「僕は高齢者福祉で15年間。その当時『ネコカヴリーノ』は花屋だけで、店は今ある場所の隣にありました。僕はそこのお客さんとして花を買いに通っていただけ。でも、店を移転する話を聞いて、一緒にカフェをやりたいと思った。それから下田さんに猛烈アプローチ。(笑)」
下田さん(花)「飲食は厳しいからやめた方がいいよって言ったんだけどね。(笑)
福原くんとは、よく話をしていて息が合うことも知っていたから。本気なら、じゃあやってみようとなったわけです。そのため、店名は一緒ですが花屋とカフェは別業態でやっています」
園果わたげ「先に下田さんの花屋があって、途中から福原さんがカフェを始めたわけですね。別業態でやっている理由がわかりました」
園果わたげ「『ネコカヴリーノ』カフェのテーマを教えてください」
福原さん(カフェ)「世代、障害、ジェンダーなど、人と違うことで生きづらさを感じている方々にとって垣根のないカフェを目指しました。これは前職の経験が大きく影響しています。ソファ席は子供もくつろげるように。車いすの方も気軽に入れるよう、天板の高いテーブル席を用意するなど、どんな方でも心地よい空間になるように工夫しています」
園果わたげ「確かに温かみのある店内です。焼き菓子は素朴な印象で、食べているとほっとした気持ちになります。お菓子を作るときはどのようなことを大切にしていますか」
福原さん(カフェ)「誰もが安心して美味しく、気軽に食べられるお菓子を目指しています。『ネコカヴリーノ』の人気商品は『ショートブレット』、『チョコチップクッキー』。
『ショートブレット』に使われているのは、きたかみ小麦、よつ葉バター、サトウキビが原料の洗双糖の3つの材料のみ。卵は使用していません。低温でじっくり焼くことで水分を飛ばし、スコーンよりも固く、クッキーよりもしっとりとした食感に仕上げました。
『チョコチップクッキー』はザクザクとした食感と、チョコチップの相性が抜群。毎月参加している赤坂蚤の市では『ショートブレット』と『チョコチップクッキー』を目当てに来る方も多いです。老若男女問わず好まれています」
園果わたげ「『エッグタルト』はあまりカフェで見かけないのですが、素朴な見た目がむしろ魅力的です」
福原さん(カフェ)「こちらも人気ですね。基本は『ショートブレット』同様、3つの材料に卵を加えただけです」
園果わたげ「『ショートブレット』1個60円。『チョコチップクッキー』80円。『エッグタルト』は380円って安すぎませんか」
福原さん(カフェ)「そうですね、ギリギリの価格です(笑)
最近は材料の値上がりがあるので、少し価格を上げざる得なくなっています。ですが、子供が1人で片手に小銭を持って買いに来てくれたり、美味しそうに食べる姿を見ると嬉しくて、できるだけ変えずにいたいと思っています」
店内には生花やドライフラワーが沢山飾られ、季節と自然を感じられます。店の奥には直接花屋に繋がるドアが。近づくにつれ草花の香りに包まれてゆきます。
園果わたげ「ところで花屋としての『ネコカヴリーノ』はカフェよりも長いんですよね?」
下田さん(花)「はい。今年で花屋は13年目。カフェは7年目になります」
園果わたげ「下田さんはなぜ、花屋になろうと思ったのでしょうか」
下田さん(花)「一言で言ってしまえば“勢い”ですね。(笑)
昔から自然や工作が好きでした。1度きりの人生、何か好きなことをやりたいと思った。
花屋を選んだのは看護師時代に、偶然華道の先生と出会い、学んだのがきっかけ。それから間もなく、良く通っていた花屋の店主の後押しもあって僕も花屋になろうと決めました」
園果わたげ「『ネコカヴリーノ』は30種類以上の草花を扱っているとか。まるで、森の中にいるような気分になります。また、空間全体に統一感も感じてお洒落。何か参考にしているモノはありますか」
下田さん(花)「強いて言えば日々の生活の中でふと感じたことでしょうか。元々生命感のあるものが好きで、山や川、神社によく遊びに行きます。建築家のフランク・ロイド・ライトが手掛けた建築も好きです。生活と自然の調和が素晴らしい。そうしたモノが空間作りにいかされているのかもしれません」
園果わたげ「確かに、ここにある草花はどれも自由で生き生きとした雰囲気があります」
『ネコカヴリーノ』という名前を受けて、ufu.編集部はきょろきょろ。しかしどこにも、猫の姿はありません。
園果わたげ「ところで『ネコカヴリーノ』の由来っていったい何でしょうか。イタリア語っぽいけど、日本語にも聞こえる。不思議な言葉です」
下田さん(花)「実は日本語の“猫を被る”が由来です。それを外国語っぽく発音して『ネコカヴリーノ』。店名をつけるときに、花屋っぽくない名前がいいなと思ったのと、僕自身が元々人見知りで。友人から“猫を被っている!”と言われたのが由来です。」
園果わたげ「恥ずかしがり屋なんですか?!むしろ気さくで、人懐っこい印象でした」
下田さん(花)「皆さん同じことを言ってくださいます。でもそれが、ネコカヴリーノ。(笑)
ブーケを作る時にヒアリングしたり、ワークショップを開くほどだから、人との交流は嫌いじゃない。緊張しやすいだけなんです。でもやっぱり僕は、花屋として何かを作っているときが一番しっくりきます」
福原さんと下田さんの“希望”から生まれた『ネコカヴリーノ』。誰もが心地良いと感じる空間では、人との交流も自然と生まれるんだとか。
不定期で行われている花屋のワークショップや、音楽イベント。これらは2人の人柄に惚れた人達が集まって出来たアイデア。コロナの影響で延期していたイベントも徐々に再スタートするそうで、詳細は随時HPやInstagramで配信予定だそう。
どんな人でも受け入れる懐の大きさを感じる、小さなお店『ネコカヴリーノ』。皆さんもぜひ、ほっとする時間を過ごしに行ってはいかがでしょうか。
About Shop
flower shop +cafe NECO QAVREENO -ネコカヴリーノ
東京都中野区江原町1丁目40−12
営業時間:11:00~19:00
定休日:【カフェ】木・その他不定休/【花屋】水・木
※営業時間と休日は場合により、カフェと花屋で異なります
備考:イベント:公式HPかInstagramを確認
ネコカヴリーノ花屋 @necoqavreeno
ネコカヴリーノカフェ @necoqavreeno_cafe
園果わたげ
ウフ。編集スタッフ
ufu.の新米編集者。メンズカルチャー誌でアシスタントを経験後ufu.に転身。 特技は甘いものを食べ続けること。最近は美術館内レストランの限定コラボスイーツにハマっている。
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