コロナ禍を経て、パン業界も数多くのアプリ・サービスが誕生する中でも話題になっているパンの取り置き・取り寄せアプリの「sacri (サクリ)」。アプリ内で好きなお店の好きなパンを自由に選び、事前決済が完了。あとは指定した時間にパンを受け取りに行くだけ、というパン好きにとって夢のようなサービスです。
今回は、そんな「sacri」を運営する株式会社sacriの代表取締役CEO大谷パブロ具史さんに取材をさせていただきました。
「sacri」を立ち上げた経緯や苦労話、サービスのこれからについてお聞きしました。
sacriのサービスを立ち上げようと思った背景には、小学生時代の思い出が強く影響していると大谷さんは語ります。
「僕が小学生だったころ、家の近くに釣具屋さんがあったんです。泊まりがけで釣りに連れて行ってくれるくらい、そこの店主さんに可愛がってもらいすごくお世話になっていました。一緒に釣りに行くときは、釣りの知識以外のこともたくさん話しました。道中の車内で聴く音楽のこととか、恋愛相談とか。そういう釣りに関係ない部分も含めて、釣具屋さんとの時間がめちゃくちゃ楽しかったんですよね。
しかし、あるときそのお店が潰れてしまったんです。予定のない放課後に通っていたお店が、突如なくなった。日常がとてつもなく空虚なものに感じられたのを、今でも覚えています。
そこで個人のお店の大切さを実感しました。個人店だからこその、人との出会い、距離感。そういうのって、どんなに便利なECサイトでも、なんでも揃うデパートに行っても手に入らないものなんです。そしていつしか、そんなお店に恩返しができたらいいなと思うようになりました。」
「そもそも僕は根っからのパン好きというわけではなくて。パンのサービスをスタートするきっかけになったのは、前職の博報堂時代に社内ベンチャーとして立ち上げた、ライフスタイルショップを紹介するメディア事業での経験でした。
そのメディアでは、パン屋さんに取材に行くことが多かったんです。そこでとても印象的だったのは、パン屋さんに訪れるお客さんの熱量。『〇〇パンありますか?』と聞いては、店頭になくて悲しげに帰っていく姿を見て、その熱量に驚くとともに不思議に思ったんです。こんな便利な世の中になったのに、どうして欲しいパンを欲しいときに買えないんだろうって。パン屋さんはパン屋さんで、お客さまが来て欲しいときに来てもらえないと思っている。簡単に取り置きができるシステムがあれば、両方がハッピーになれるのに。
そのことに気づいてからは、小さいころから頭の片隅にあった『個人店を応援したい』という想いを、個人店の中でもパンというジャンルに絞って考えるようになり、そこからsacriが生まれました。」
コロナ禍真っ只中の2020年10月にローンチした「sacri」。そのユーザー数は現在全国で5.4万人以上に及ぶといいます。一見順風満帆にみえる「sacri」ですが、実際は想定外の難しい課題に直面し今もなお苦戦していることもあるんだとか。
「一番苦労しているのは、パン屋さんが想像以上にアナログなところです。他の飲食業ではかなりデジタル化が進んでいるのに、パン業界ではなかなかそれが進んでいない。それは、ベーカリーには独特の商流があるからだと思っています。
というのも、パン屋さんの店主は職人肌の方が非常に多くて。例えば、経験と勘で日々の作るパンの数を決めていたり、何が何個残ったかを計算していなかったり。客観的なデータが取れておらず、忙しさもあってマーケティングまで気を回す余裕が無い方が多い印象です。そういう根底の思考から切り崩すって、かなり難しいことです。
だから僕は、sacriの一番の競合はお店のアナログな意識だと思っています。
職人さんが大切にしていることを理解して、僕らはそれを応援する黒子のような存在だと彼らに表明し、それを体現するべく手と足を動かして信頼を築いていく。それによって彼らに根付いている旧来の意識を少しでも解いていこうと努力しています。」
「sacriがパン屋さんのインフラとして当たり前のものになったらいいなと思っています。そのためにやらなきゃいけないこと、サービスとしての改善点はまだまだたくさんあって。
その中でも、先ほどお伝えした通り、パン屋さん側の意識改革が一番の大きな壁。それをぶち破っていくには、単純にお金を投じたってダメなんです。パン屋さんの奥底にある意識が少しでも変わるようにつとめなければいけない。なので、今は営業を広げていくというよりかは、既に利用してくださっているお店の中でsacriがインフラとしてちゃんと機能することを目指しています。」
「アプリでは、プッシュ通知を強化したいと考えています。タイムセールや新商品など、常連さんにとって嬉しい情報をプッシュ通知で届けることで、よりアプリ内でフレッシュ感を味わっていただけたらなと。また、sacriの強みである『サテライト展開』にも力を入れていきたいです。従来パン屋さんがお店を新たにオープンするとなると、ものすごく費用がかかりますよね。でも、sacriなら事前決済&予約型なので受け渡し場所だけ設定すればどこでも新たに出店できます。このように、パン屋さんがしたくても簡単にはできなかったことをsacriで簡単に実現できることで、パン屋さんの想いを叶える手助けが少しでもできたらいいなと思っています。」
今回のインタビューでは、ユーザー側からはわからないような貴重なお話をたくさん聞くことができました。パン屋さんにもパン好きにも嬉しい機能が満載のsacri。これからのsacriの進化に期待が止まりません。
ここまでお話してきたsacriをここで改めてご紹介します。sacriとは、パン屋さんのパンをお取り置き・お取り寄せができる無料のスマートフォンアプリです。iOS、Android端末ともに対応しています。
お気に入りのお店を登録しておけば、焼きたてをプッシュ通知でお知らせ。アプリ内で事前決済できるので、お店では待たずにサクッと受け取りが可能です。当日取り置きだけでなく事前予約も可能なため、24時間いつでもどこでも好きなパンを購入することができます。全国の出店者さんのパンをお取り寄せできる機能もあるので、全国のパン好きさん必見のアプリです。
まつこ
新米ライター・パン好き爆食女子大生
女子大生ながら、企業で取材記事を執筆するなど新米ライターとして活躍&日々勉強中。かなりの大食いで爆食女子と呼ばれ、たくさんのパンを食べるので本当に美味しいお店に精通。お店の前でパンを撮影する#まつこ撮りでパンインフルエンサーの間で話題にも
Photo&Writing/まつこ
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