スイーツ、焼き菓子の世界では、知っていそう?でも実は意外と知らないことが多いですよね。そんなスイーツの疑問に現役のパティシエ・大澤智弥氏が答えてくれます。今回は、同じ甘い砂糖でも、ちょっと特別感のある和三盆について、大澤シェフに聞いてみました。洋菓子に使うこともあるの?
「和三盆は、黒糖やてんさい糖など、いくつかある砂糖の種類の中でも、少し特別なものとして位置付けられています。日本人好みの甘さがあります」と大澤シェフ。
「もちろん甘さの感じ方は人それぞれなんですが、和三盆の甘さにはやさしく、誰もがおいしいと感じる独特の甘さがあります。一般のグラニュー糖と比較しても、甘さが際立つというか、甘さの感じ方がとてもまろやかです」
和三盆は、主に四国東部で作られています。原料となるサトウキビは「竹糖(ちくとう)」と言われる、徳島県や香川県に生息&育成されている品種です。サトウキビと聞くと沖縄のイメージが強いのですが、沖縄で栽培される一般的なサトウキビよりもかなり細く、背丈は2mほどの品種です。「細黍(ほそきび)」とも呼ばれています。
この竹糖から生成される和三盆はその作り方にも特徴が!
少し長いですが、和三盆は次のように作られていきます——
竹糖の搾り汁を加熱&ろ過し、不純物を取り除いた液を濃縮されるまで煮詰めていきます。それを冷やして飴色状の「白下糖(しろしたとう)」が出来上がります。この白下糖から糖蜜だけを搾りだし、さらに圧搾します。それを適量の水を加えて練り上げてきます。
この「練り上げ」が和三盆作りで欠かせない「研ぎ」という作業です。この「研ぎ」作業を何度か繰り返すことで和三盆が完成します。
一説には、この「研ぎ」を三度繰り返すことから「和三盆」と言われるようになったとも(諸説あり)。
今では機械化も進み、すべての工程に人が入らずとも完成される和三盆もあるようですが、長く手間暇をかけて出来上がる極上のお砂糖です。
「和三盆を使った和菓子は、やっぱりおいしいですよね。和三盆の風味がうまく生かされている。洋菓子で使うことももちろんありますが、どちらかというと和菓子でよく使われます。まろやかで繊細な甘さが和菓子によく合います。
洋菓子では、ロールケーキの生地やクリームに使うことが多く、ふわふわ食感と和三盆のやさしい甘さがマッチして、とてもおいしくなります」
でも、洋菓子での使い方は難しいという一面も。
「和菓子のおいしさは、使う砂糖の甘さがストレートに出るものが多いため、和三盆のような甘味自体に旨味がある砂糖を使うことで、出来上がった菓子も和三盆そのもののおいしさになります。
でも、洋菓子は、甘さを出す材料以外にもいくつかの材料が混ぜ合わさって完成されるおいしさがある。和三盆を使っておいしいスイーツに出来上がってはいても、和三盆そのもののおいしさかというとそうではなく、全体のハーモニーのようなおいしさなのです。
そうなると和三盆を使った意味がなくなってしまう。材料と材料がぶつかり合って、マイナスになってしまうことも。せっかく和三盆を使うなら、和三盆の良さが引き立つスイーツがいいですよね」
そこが洋菓子に活かしにくい点だと大澤シェフは言います。
洋菓子に、和三盆を使うお菓子が少ないのはそういう一面もあるのですね。
使えば必ずおいしくなる素材はたくさんあっても、その素材のおいしさを生かすとなると、そこにはまた別の工夫が必要になってくる。
スイーツの世界、奥が深いですね。
パティシエ:大澤智弥さん
専門学校を卒業後、ビゴ東京に入社。その後「レストラン シェ・イノ」、「ホテル雅叙園東京」、「アングラン」などを経て、「こむぎのおいしいおかし」ほか、ガレットデロワ専門店「Galet Galet(ガレ ガレ)」のシェフとして活躍している。ufu専属パティシエ。
ウフ。
ウフ。編集部スタッフ
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