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“パン屋店主おすすめのパン”「ボンヴィボン」(神奈川・青葉台)~新米ライターまつこが取材~vol.09~

“パン屋店主おすすめのパン”「ボンヴィボン」(神奈川・青葉台)真摯にパンとお客に向き合う誠実派シェフが推す、ガリガリカレーパンとは?~新米ライターまつこが取材~vol.09~

“パン屋店主おすすめのパン”「ボンヴィボン」(神奈川・青葉台)~新米ライターまつこが取材~vol.09~

パンの魅力に取り憑かれた女子大生まつこが『一流パン職人が本気でおすすめするパン屋さん』をテーマに、インタビューを行いリレー形式で繋いでいく連載企画。最終回となる今回は、前回インタビューしたデイジイのシェフ倉田さんおすすめのお店・ボンヴィボン(青葉台)。シェフ児玉さんにインタビューを行い、パン屋さんを営むうえでの苦労やパン職人として大切にしている考え方について伺いました。

幼少期から慣れ親しんだパンと真剣に向き合う、努力家のシェフ

“パン屋店主おすすめのパン”「ボンヴィボン」(神奈川・青葉台)~新米ライターまつこが取材~vol.09~

神奈川県内に複数店舗を展開する「ボンヴィボン」。シェフの児玉さんは、祖父が始めたパン屋に両親が勤めていたこともあり、幼少期からパンに慣れ親しんでいました。そこからさらにパン作りの腕を磨くため、大阪の「パン工房青い麦」にて修行を積み、2004年にボンヴィボン青葉台店をオープンします。

“パン屋店主おすすめのパン”「ボンヴィボン」(神奈川・青葉台)~新米ライターまつこが取材~vol.09~

ボンヴィボン青葉台店は、木のぬくもりが感じられるナチュラルな内装が印象的。アイボリーの漆喰の内壁も可愛らしく、絵本の中のパン屋さんに迷い込んだようなわくわく感があります。

修行先で培った技術を活かせない。すれ違う価値観に苦戦した時期

“パン屋店主おすすめのパン”「ボンヴィボン」(神奈川・青葉台)~新米ライターまつこが取材~vol.09~

「パン工房青い麦」での修行後、実家のベーカリーに戻った児玉さん。しかし、バゲットやクロワッサンなど、ヨーロッパのパンが主流だった修行先で培った技術や価値観は、実家では通用しないものでした。

「『フランスパンなんて硬くて食べれないよ』と言われましたね。というのも、実家のパン屋があったのは埼玉の田舎の土地。さらに僕が戻ったとき、そこで働いていたのは50代前後のベテランのパン職人で。売れるのは、あんぱんやカレーパンとか昔ながらのパンでしたし、作り手の方も特にこだわりがなくパンを作っている状態でした。その環境にいきなり帰ってきた僕がパンの製法についてあれこれ言っても聞き入れてもらえるわけもなく、対立することもしばしばでした。」

「自分の方針に耳を傾けてもらえるように、技術力の高さを証明しようと努力しました。職人さんが10分でやる作業を、僕が5分でやってみせたり。ついてきてもらえるまでは中々苦労しましたが、このままでは店がうまくいかないと気づいたこともあり、徐々に受け入れてもらえるようになりました。地元で何十年も続いているパン屋さんなので、ラインナップをいきなり変更することはできませんでしたが、徐々に新しいパンも増やしていきました。」

自分の理想のパンが売れない。独りよがりなパンを作っていた過去 

“パン屋店主おすすめのパン”「ボンヴィボン」(神奈川・青葉台)~新米ライターまつこが取材~vol.09~

その後、児玉さんは晴れて「ボンヴィボン」をオープンさせます。ヨーロッパ流の最新のパンを受け入れてもらえるように高級住宅街がある立地を選んだものの、実際お店を始めてみるとそうしたパンが全然売れなかったのだとか。

「鋭利なクープの入ったバゲットとか、見た目が美しくてかっこいいパンをアピールしていれば売れるはず、と信じていたのですが箱を開けてみるとそんなことはありませんでした。お客さんからは『もっと柔らかくておいしいものはないの?』と言われましたし、開店当初は売上が5万円くらいしかなくて苦しい時期が続きました。当時の自分は、お客さん無視で自分の理想のパンを押し付けていたように思います。でもパンが全然売れない現状を目の当たりにして、それでは商売はやっていけないのだと気づきましたね。」

失敗して気づいた、顧客目線に立つことの大切さ

“パン屋店主おすすめのパン”「ボンヴィボン」(神奈川・青葉台)~新米ライターまつこが取材~vol.09~

「それからは、自分自身がお店のレジに立って、お客さんとコミュニケーションをとるようにしました。お客さんはどういうパンを求めているのかを直接聞いてちゃんと理解して、それを商品開発に反映させるようにしてからは売上が回復しました。パン屋さんをやるうえで大切なのは、”お客さんに向けてパンを作る”ことなのだと実感しました。」

「今でも、自分自身がレジに立つ時間は必ず取るようにしていて。お客さんにパンのおすすめの食べ方を伝えたり、『あのパン屋さんおいしかったから行ってみてよ』なんて話を自分からしたりすることも。笑 また、女性のお客さんが多いことから、お店の雰囲気やパンのラインナップも女性目線に合わせています。例えば、レジ横に置くボールペン。よくある100均のものではなく、可愛らしいデザインのものを置いています。そういう小さい気遣いが大事だなと考えていますね。」

パンは裏切らない。労力を惜しまないパン作りへの熱意

“パン屋店主おすすめのパン”「ボンヴィボン」(神奈川・青葉台)~新米ライターまつこが取材~vol.09~

パン職人としてのキャリアが長い児玉さんですが、”労力を惜しまずにパンと向き合うこと”が大切だと語ります。

「やっぱり、パンは裏切らないよね。今は効率良く合理化させた製法っていくらでもあるし、一時のブームで終わってしまう中身のないものも多くある。でも僕は、粉を熟成させて発酵させて、手間暇かけてつくったパンの方がおいしいと思います。」

「トレンドの中に、取り入れるべき優れた技術が多くあるのも事実です。昔ではありえなかった冷蔵発酵が今では主流になったり、最近ではアロマ乳酸菌を使った製法も生まれたりなんかしていて。そういう意味では、常にパン作りのトレンドに敏感でいたいと思っています。優れた新しい製法をうまく取り入れて、時代に合わせてパン作りもシフトしていきたいですね。」

外はガリガリ中はとろ〜りの、あのパン

“パン屋店主おすすめのパン”「ボンヴィボン」(神奈川・青葉台)~新米ライターまつこが取材~vol.09~

「『一流パン職人が本気でおすすめするパン屋さん』としておすすめしたいのは、所沢のブーランジェリーキシモトです。中でも特にお気に入りなのが、カレーパン。外側の衣のガリッとした食感がすごくて、中にはとろとろのカレーがたっぷり入っていておいしいんですよね。」

“パン屋店主おすすめのパン”「ボンヴィボン」(神奈川・青葉台)~新米ライターまつこが取材~vol.09~

面はガリガリ、生地はもっちり、中からはとろ〜りとカレーが溢れるカレーパン。ガリガリ食感の秘訣は、パンを合計7分ほど長めにじっくりと揚げること。カレーは野菜の旨みたっぷりのマイルド系で、大人から子どもまでおいしくいただけます。

“パン屋店主おすすめのパン”「ボンヴィボン」(神奈川・青葉台)~新米ライターまつこが取材~vol.09~

こだわりは、カレーパン用に挽いた無糖の自家製パン粉。市販のパン粉には砂糖が入っていて時間が経つとべちゃつきやすく、それを避けるため自家製のものを使用しているのだそう。それをさらに米油で揚げることで、通常のカレーパンより後味が軽くなるように工夫されています。

今までご愛読いただきありがとうございました

“パン屋店主おすすめのパン”「ボンヴィボン」(神奈川・青葉台)~新米ライターまつこが取材~vol.09~

今回でこの連載は最終回。パン屋さんのシェフのインタビューを通して、ただの”パン好き”では知ることがなかったであろう裏側を多く知ることができました。表では見えないパン作りへのこだわりであったり、シェフ自身の人生や価値観であったりを知るとこれまで以上にパン屋さんが愛おしく思えました。連載は終了になりますが、さらに増したパン愛とともに引き続きパン巡りを続けたいと思います。

最後に、これまで連載をご覧いただいた読者のみなさま、ご多忙のなか取材を受けてくださったシェフの方々、そしてufu編集部のみなさま、今まで本当にありがとうございました!

About Shop
Bon Vivant(ボンヴィボン) 青葉台店
神奈川県横浜市青葉区青葉台1丁目32-2
営業時間:8:00~19:00
定休日:月曜、火曜

まつこさん

まつこ

新米ライター・パン好き爆食女子大生

メンバーの記事一覧

女子大生ながら、企業で取材記事を執筆するなど新米ライターとして活躍&日々勉強中。かなりの大食いで爆食女子と呼ばれ、たくさんのパンを食べるので本当に美味しいお店に精通。お店の前でパンを撮影する#まつこ撮りでパンインフルエンサーの間で話題にも