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フランスのチョコレート菓子「オペラ」と松川星さん

名店のパティシエが教える。モデル・松川星さんが学ぶ正しいフランス菓子 vol.8|「オペラ」

ミルフィーユやエクレアなど、日本に馴染み深いスイーツの多いフランス菓子。そんなフランス菓子の歴史や魅力を、毎月1つのお菓子をテーマに紹介する連載「名店のパティシエが教える。モデル・松川星さんが学ぶ正しいフランス菓子」。

フランス菓子について教えてくれるのは、フランスの有名パティスリーやホテルでの経験を持つ「パティシエ・シマ」の島田徹シェフ。ナビゲーターを務めるのは、女優・モデルとして活躍している松川星(あかり)さんです。

連載8回目のテーマは、多くの層からなるチョコレートとコーヒーのケーキ「オペラ」。日本でも愛されているスイーツには多様な歴史が!チョコレート好きの松川さんの瞳が輝くフランス菓子の魅力に迫ります。

【前回の記事はこちら】
名店のパティシエが教える。モデル・松川星さんが学ぶ正しいフランス菓子 vol.7|「クレープシュゼット」

日本が誇る名パティシエがフランス菓子の歴史を深く教える

「パティシエ・シマ」の島田徹シェフと、モデルの松川星さん

本連載でフランス菓子について教えてくれるのは、麹町駅から約徒歩3分の「パティシエ・シマ」オーナーシェフを務める島田徹シェフ。日本で最初のフランス菓子専門店「A.ルコント」でフランス菓子の基礎を学んだあと渡仏し、パティスリー界のピカソと呼ばれる「ピエール・エルメ」パリ本店、フランス最上位の格付けホテルである「ル・ブリストル」を経て約5年の滞在後帰国し「パティシエ・シマ」へ。

2016年に東京都洋菓子協会の公認技術指導員に任命、2022年フランスに本部を持つ世界最古のシェフの会「フランス料理アカデミー」に入会を認められるなど、若くして業界全体を盛り上げ、尽力する姿は日本を代表するパティシエといっても過言ではありません。

2月のお菓子。チョコレートとコーヒーの重奏を楽しむ「オペラ」

チョコレートを使ったフランス菓子「オペラ」

「オペラ」は、幾重にも重なる層と、コーヒーシロップが染み込んだ生地が特徴のフランス菓子。つややかなグラサージュ※1も美しく、芸術品のような見た目に惚れ惚れします。

※1 グラサージュ:つやを出すためにかける柔らかなチョコレートソース。糖衣でケーキの表面をコーティングすることをグラサージュと呼ぶ場合もある。

島田シェフ
「オペラは、チョコレートのガナッシュとコーヒーのバタークリーム、ビスキュイ・ジョコンド(アーモンドパウダーと同量の粉砂糖に、卵白やバターを加えた生地)を重ねて作ります。層の数は店によって異なり、『パティシエ・シマ』のオペラは表面のグラサージュを含めて11層です。

チョコレートオペラの断面

ビスキュイ・ジョコンドにコーヒーのシロップを含ませるのも特徴で、基本的には、ひたひたになるくらいまでたっぷりの量を染み込ませます。日本ではチョコレートケーキのイメージもありますが、本来はコーヒーを味わうお菓子だといえますね。

使うコーヒーは製菓用の濃縮コーヒーエキスやエスプレッソのように深煎りの豆を抽出したものが多く、さらにラム酒やブランデーを入れることもあります。うちの店では、コニャックの王様と呼ばれる『hennessy(ヘネシー)』を加えています」

誕生と歴史。多くの物語がある大人のお菓子

日本にも複数の店舗を構える「ダロワイヨ」発祥のお菓子として、世界的に有名なオペラ。パリの象徴・オペラ座の荘厳な雰囲気が漂うお菓子には、その他の説もあるようで……?

島田シェフ
「オペラはフランス・パリのガストロミー『ダロワイヨ』が発祥というのが定説です。このお店のオーナーによって1955年に考案されたものが、世界へ広まったとされています。

しかし、実はそれより前に『マルセル・ビュガ』というパティスリーがオペラのもとになるお菓子を作っていたとの説もあります。その説では、ビュガの作ったケーキを食べた『ダロワイヨ』のオーナーがその味を気に入ったため、お店ごと買い取って“オペラ”と名付けてお店に出したとされていますね。

オペラの名前はパリのオペラ座に由来しており、オペラ座の屋根に佇む金のアポロン像が、ケーキでは金箔で表現されています。『ダロワイヨ』のオペラは表面のグラサージュを含めて7層で、日本でも7層のものが多い印象です」

振り向く松川星さん

松川さんは毎日チョコレートを食べるほどのチョコ好きで、ケーキでもチョコレートを使ったものを注文することが多いそう!オペラを口に運んだ瞬間に、たちまち笑顔があふれます。

松川さん
「コーヒーの風味がありつつ、まろやかさもあって美味しい!チョコレートとコーヒーの相性がぴったりで、普段スイーツを食べない人でも食べやすいケーキだと思います。大人の人がクセになるような、“大人の味”を楽しめました」

フランスでは菓子店よりもパン屋に並ぶ?日本とは違った立ち位置に

日本では、多くのパティスリーに並んでいるオペラ。しかしフランスでは、菓子店で見かけることは少ないそう。

島田シェフ
「フランスでは、オペラを常に販売しているパティスリーはあまりありません。『ダロワイヨ』のオペラの知名度が高いことから、“他人のお店のお菓子”という印象があるのではないでしょうか。

一方で、常温でも経時変化が小さく、日持ちするお菓子のため、パン屋、ブーランジェリーのラインアップのひとつとして定着しています。

一方日本では、フランスに渡った日本のパティシエの第一世代の多くが『ダロワイヨ』で働いており、帰国した彼らによって多くのパティスリーに広まりました。うちの店の創業者も『ダロワイヨ』に務めた経験があり、層の数や厚みに違いはありますが、『パティシエ・シマ』のオペラにもその伝統が含まれています。

“生地にシロップをしっかりと染み込ませる”製法はフランス菓子の特徴の一種ですが、日本では、日本人の好みに合わせて生地にあまりシロップを染み込ませないお店もありますね。コーヒーとチョコレートの組み合わせが日本人に好まれることもあり、今のような定番のスイーツとして愛されるようになったのだと思います」

NEXT→イースターチョコレート

イースターチョコレート

次回のテーマはニワトリやカカオ豆など、バリエーション豊かな形も楽しい「イースターチョコレート」。日本では卵の形のお菓子やインテリアのイメージが強いイースターは、フランスだと、じつはクリスマスの次に多くのチョコレートを食べるイベントなのだそう!

島田シェフと松川さんとともに、日本ではまだあまり知られていないフランスのイースターの世界に迫ります。

<衣装協力>
ワンピース¥6,490 tocco closet(@toccocloset)

教えてくれた人

「パティシエ・シマ」の島田徹シェフ

パティシエ・シマ 島田徹シェフ

日本で最初のフランス菓子専門店「A.ルコント」でフランス菓子の基礎を学ぶ。渡仏し「ピエール・エルメ」、「ホテル・ル・ブリストル」を経て5年の滞在後帰国し、東京麹町「パティシエ・シマ」オーナーシェフに就任。フランス菓子・食文化に精通し、世界最古のシェフの会「フランス料理アカデミー」に若くして入会を認められ会員となる。また公益社団法人東京都洋菓子協会技術指導委員、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパートとしても活躍

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パティシエ・シマ(PATISSIER SHIMA)
東京都千代田区麹町3-12-4 麹町KYビル1F
営業時間:平日 11:00~19:00、土曜日 11:00~17:00
定休日:日・祝
Instagram:@patissiershima

Photo/Masahiro Noguchi(野口マサヒロ) hair&make/Nakashima Aki(中島愛貴)