スイーツ、焼き菓子の世界では、知っていそう?でも実は意外と知らないことが多いですよね。そんなスイーツの疑問に現役のパティシエ・大澤智弥氏が答えてくれます。今回は、アップルパイとタルトタタンの違いについて聞いてみましたよ。有名なタルトタタン発祥のエピソードも!
タルトタタンもアップルパイも材料はほぼ同じで、パイとアップルの組み合わせで作られる焼き菓子です。端的に言えば、生地の上にアップルを乗せたのがタルトタタンで、生地でアップルを包んだのが、アップルパイです」と大澤シェフ。
「本来(昔)のタルトタタンは、パイ生地を敷き詰めて、そこにバターと砂糖でソテーした、まだ形のあるアップルを重ねて全体の形を整えてからオーブンで焼き上げます。アップルの形は崩して作ることもあるし、薄く切って、幾層にも重ねて生地の上に敷き詰めて作られたものもあります」
一方のアップルパイは、同じように煮詰めたアップルをパイ生地で覆って焼き上げるお菓子です。だた、最近では、さまざまなアレンジが加わって、全体を覆ったものではなくてもアップルパイと呼ばれているものもたくさんあります。
「二つの焼き菓子は、材料や作る工程もとてもよく似ています。そもそもタルトタタンはアップルパイ作りから生まれた副産物的な焼き菓子と言われているんです」と大澤シェフ。
タルトタタンの発祥として、とても有名なエピソードがあります。
19世紀後半、フランスのソローニュ地方の町にある「ホテル・タタン」で働く2人のタタン姉妹がタルトタタンの創始者。
「タタン姉妹が間違えて、タルト型に直接リンゴを入れて焼いてしまったんです。そのまま忘れてしまい、アップルが焦げて、こびりついてしまった。これをどうしようってなったときに、上から生地をかぶせて、焦げつきが見えないようにした。それをひっくり返してみたら、とても香ばしいタルトになっていたんです」
それがタルトタタンの始まり。以後、ホテルではこのデザートが人気を呼び、今のタルトタタンとして定着したと言われています。
アップルパイはアメリカを代表するスイーツとして有名です。発祥そのものは、古くヨーロッパで親しまれていた焼き菓子がアメリカに渡って、今のようなパイ生地でアップルを包んだ形に定着したと言われています。
「アップルパイは種類も豊富ですし、今は、家庭で作る人もたくさんいるくらい、日本でも定番のスイーツになっています。アップルも形や硬さも程度残したものから、ジャムのようにトロトロするくらいに溶かしたものまで、たくさんのバリーションが楽しめます」
アップルを甘く煮詰め、サクサクしたパイ生地と組み合わせる。シンプルだけど、なんて素敵な組み合わせでしょう。タルトタタンもアップルパイもこんなに長く庶民の味として親しまれているのも納得ですね。
ちなみに、大森由紀子著『お菓子の名前と由来』(世界文化社)には、こんなエピソードも紹介されています。
古くなったアップルの活用方法として、姉妹はアップルにキャラメルとバターを染み込ませると美味しくなることを知っていた。タルトタタンは失敗の副産物ではなく、タタン姉妹の計算づくの焼き菓子だったのでは?と。
さらに同書には、ホテル・タタンは現存し、今でも訪れる多くのお客さんにタルトタタンを提供していると記されています。
パティシエ:大澤智弥さん
専門学校を卒業後、ビゴ東京に入社。その後「レストラン シェ・イノ」、「ホテル雅叙園東京」、「アングラン」などを経て、「こむぎのおいしいおかし」ほか、ガレットデロワ専門店「Galet Galet(ガレ ガレ)」のシェフとして活躍している。ufu専属パティシエ。
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ウフ。編集部スタッフ
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