フランス最高峰メゾンのひとつとして知られ、パリの美食家たちを虜にする「LENÔTRE(ルノートル)」。日本でも24年10月に麻布台ヒルズにカフェ併設店を新たにオープンし、さらなる盛り上がりをみせています。
今回はフランス本国から来日したルノートルのクリエーション・ディレクター Guy Krenzer(ギー・クレンザー)氏を特別に単独取材。フランス菓子界の父とも呼ばれる創業者 ガストン・ルノートル氏の遺志と技巧を引き継ぐギー氏に、日本のルノートルに込めた思いや、今後の展望を伺います。
ルノートルの日本国内店には、フランスにはない限定メニューが多数存在。麻布台ヒルズのオープンに合わせて登場した『プロフィットロール・オペラ』もそのひとつです。普段はフランスで挑戦を続けるギー氏が、日本限定のメニューに込めた想いとは?
「『プロフィットロール・オペラ』は、日本のコーヒー文化をふまえ、ルノートルが創業した1957年から続くスイーツ「オペラ」を再構築した品です。
じつは、フランスのルノートルにシュー生地を使ったメニューはありますが、プロフィットロールやシュークリームは作っていません。コーヒーを嗜む午後のひとときに合うものとして日本のシェフと一緒に作ったのが、この冷たいデザートです。
また、日本の季節感を取り入れ、秋の期間限定のフィナンシェには洋梨と栗を使った『ポワール・マロン』を選びました。今後も、四季を感じられるお菓子は作っていくつもりですね。
その一方で、日本の方に“これこそがルノートル”というメニューや味を知っていただくことは非常に重要であり、欠かせません。スぺシャリテの『フイユ・ドトンヌ』や創業時のレシピを継ぐ『マカロン』など、まずはルノートルの伝統を伝えながら徐々に新たな取り組みを、と考えています」
「私が創業者のガストン・ルノートルと仕事をしていたとき、彼は日本のことを非常に愛していました。彼が今の日本のブティックを見たらとても喜び、先に進んでいくよう希望したと思います。
国外でルノートルの伝統を守り続けることには難しさも感じています。2019年に銀座三越に店舗がオープンする前は、日本にパリのようなルノートルを作れるとは想像していませんでしたね。
しかし、パリでの研修や店での経験、お客さんからの声を受けて日本のシェフたちが成長し、今では本国とほとんど変わらないサービスを提供できるようになっています。こうした進化は、私もとても嬉しいです」
ギー氏は2つの部門でフランス国家の職人における最高峰の称号「M.O.F.」を獲得しているシェフながら、2016年にはバリスタ・焙煎士の資格も取得。彼はコーヒーのどこに惹かれ、どうスイーツに活かしているのでしょうか。
「コーヒーは、フランスの多くのケーキに古くから使われている素材です。また、世界においても取引量が非常に多く、文化として広く成立しています。特に日本はその傾向が強いため、スイーツもドリンクも、多くのメニューにコーヒーを取り入れていますね。
ただ、コーヒーは苦いものという印象もありますが、それは本来あまり好ましいことではありません。熟成させた豆を香りがとどまるように焙煎し、自然な味わいや心地よい酸味を感じられるようにしています」
「家族で子どもを育てるように、多くのパティシエたちにルノートルの技術を伝えたい」と話すギー氏。スイーツ界への愛に満ちた彼が描く、伝統と革新のあり方とは?
「フランスには、古くから続いてきた歴史あるお菓子が多く存在します。そこに新たな風を吹き込んだのが、ガストン・ルノートルです。彼をきっかけに、それぞれのパティシエがオリジナルなものを作るようになりました。
ルノートルでは2009年から毎年新しいクリエーションを続けており、例えば新年を祝うお菓子・ガレットデロワでは、毎年伝統的な品を売ると同時に、クリエイティブなものを作っています。新たなスイーツが、パティシエが技やアイデアを披露する機会となっているんです。段階を踏みながらではありますが、日本でもそうしたお菓子を生み出していきたいですね」
取材の最後まで、にこやかな笑顔で話してくれたギー氏。彼がけん引するルノートル、そしてこれからのスイーツ界の進化が楽しみで仕方ありません。
【ルノートル 麻布台ヒルズ店紹介記事はこちら】
ルノートルの新店が麻布台ヒルズに!待望のマカロンも日本初上陸
注目記事