スイーツ、焼き菓子の世界では、知っていそう?でも実は意外と知らないことが多いですよね。そんなスイーツの素朴な疑問に現役のパティシエ・大澤智弥氏が答えてくれます。お菓子のヒミツや、業界にまつわる裏話も深堀り。今回はタルトとパイ、ガレットの違いについて聞いてみました。
お馴染みのスイーツ、パイとタルト、そしてガレット。何が違うのかについてあまり考えたことってないですよね? どれもサクっとした生地の食感が特徴で、生地にバターや甘い砂糖が練り込まれていたり、フルーツやクリームが乗っていたり、あるいは包まれていたり……。
でも、この3つの違いについて考えてみると、はて?と思いますよね。
「パイとタルト、ガレットの違いについては、実は難しいんです。それぞれにイメージされる焼き菓子が一般的にあると思うんですけど。たとえばアップルパイとかいちごのタルトとか……」と大澤シェフ。
ただ、何が違うのかとなるとそのボーダーは、少しあいまいなのだそう。
「まず、パイとタルトの違いでいうと、実は明確な違いがあるようでいて、そうでもないんですよ。パイは、小麦粉の生地にバターを挟んで、それを伸ばして何度も折り込んで、幾層にも重ねて焼き上げていきます。タルトは、器の中に入れて焼き上げていく焼き菓子なんですが、器の中にパイ生地を使って、〇〇タルトということもあるんです」
さらに、パイ生地も「折りパイ」「練りパイ」と呼ばれる生地の違いがあるのだとか。そこが難しいところなんですと大澤シェフは言います。
「パイそのものの定義も実はあいまいな部分もあるんです。タルトも同じで、タルトと名がつく焼き菓子であっても先のように生地はパイと同じものを使っていることも。もうひとつ似たイメージのものとしてガレットがありますが、こちらも日本ではそば粉を使ったクレープをイメージする人が多いと思うのですが、実際にはパイ生地を使うこともあるんです。
ガレットについては、また次回もう少し詳しく紹介しますね。
パイは一般的には小麦粉の生地でバターを包み込み、それを何度も折り込んでミルフィーユのような層にしていくんです。そのためにふっくらとした焼き上がりになり、食べたときにサクッという食感が味わえます。一般的には折り生地と言われているんですが、同じパイでも、小麦粉にバターを練り込んで作る練り生地もあるんです。これが折りパイ、練りパイと呼ばれているものです。
一方のタルトは、作る生地に限定はありませんが、一般的には練り生地で作るものとされているんです」と大澤シェフ。
そうではあっても、パイとタルトはやはり同じものではないようです。生地以外の違いについて伺うと、こう教えてくれました。
「タルトは、もともと器なんです。器に敷いた生地の上にフルーツやクリームを乗せて作っていくのがタルトなんです」
タルトはフランス語(「tarte」)で、もともとはラテン語の「tourte(トゥールテ)=丸い皿のお菓子」から来ていると言われています。そのことからもタルトは、もともと器があって、そこに何かを乗せ焼き上げるのがタルトお菓子の起源になっているようです。
「なので、器にはめ込んで作っていれば、生地がパイのような折り生地であってもタルトということもあるんです。
例えば、アップルパイといちごタルトをイメージしたときに、アップルパイは生地の中に煮詰めたリンゴを包み込んで焼き上げるのが一般的ですよね。いちごタルトは、器に敷いた生地にイチゴやクリームが乗せて焼き上げます。包むか器に乗せるかが、パイとタルトの違いと言っていいと思います。
端的に言ってしまうと、完成されたスイーツの形状(乗せているか、包んでいる)によって、パイとタルトは分けられていると思ってもらうといいかもしれないですね」
では、もし器に生地を敷いて、その上にいちごやクリームを乗せ、さらにその上を生地で覆ってしまったら、それは「いちごパイ」になるのでしょうか?
「それはいちごパイかもしれないですね(笑)。
でもそれをいちごタルトとして提供しているお店もあると思います。それは間違いではなく、それぞれのお店の考え方や商品に込めた思い、作り方によって、違ってくるんです」
では、そのパイとタルトと、ガレットは何が違うのか。
それは、次回のお楽しみに……。
パティシエ:大澤智弥さん(プロフィール)
専門学校を卒業後、ビゴ東京に入社。その後「レストラン シェ・イノ」、「ホテル雅叙園東京」、「アングラン」などを経て、「こむぎのおいしいおかし」ほか、ガレットデロワ専門店「Galet Galet(ガレ ガレ)」のシェフとして活躍している。ufu専属パティシエ。
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