月に4~5日、間借りのカフェでのみ提供される「手作りの店 HANNAH(ハンナ)」の幻のパフェ。カフェは池袋の隣駅、要町駅から徒歩8分ほど。インスタのDMか、公式メールアドレスから申し込みの完全予約制で、予約開始日にほぼ席が埋まってしまうほど大人気。パフェ好きの方たちから口コミで広がり、今パフェ界で話題沸騰中。今回は、去る8月中旬に発表された、「パフェ ソンマルロヴ」について、店主ハナさんにインタビュー。
まず、「パフェ ソンマルロヴ」って何語?って感じですよね。ソンマルロヴは、スウェーデン語で、夏休みという意味。現在スウェーデン在住の昔の同僚がプレゼントしてくれたKOBBSのサマーハウスブレンドティーをきっかけに、夏休みをイメージしたパフェ作りを始めることに。
スウェーデン人の多くは森や泉のほとりなど、自然の中にサマーハウスという別荘を持ち、夏の時間を楽しむよう。そんな風景をパフェに落としこんでみました。
パフェの構成を詳しく解剖すると、
<上部>
グラスのトップに乗っているのは夏の花を模したブルーベリーのスプモーネ※
(※スプモーネ=アイスの原形となるイタリアの氷菓)
有機ブルーベリーや国産バレンシアオレンジ、有機レモンを丸ごと使い、ノンアルコールカクテルのような爽やかかつ華やかな味わいに仕上げています。土台となっているのは、ひよこ豆由来の紅茶入りのメレンゲ。
<中部>
ブルーベリーで囲んだのは、朝焼けに染まる水辺をイメージした、ライムジンジャージュレと桃のコンポート。日の出のような雫玉の中は有機レモンと苺が隠れています。
桃の下にはリオレ、ブルーベリー、マンゴー。
別添えで提供しているコーヒーリキュールを、桃やリオレに混ぜると味の変化を楽しめます。
<下部>
夕暮れどきの海辺にいるような気持ちにさせてくれるサマーハウスブレンドティーのジュレとリオレのマリアージュ。ペアリングのダージリンティーで余韻を楽しみながら少しぼうっとするのも良いかもしれません。
材料にはとてもこだわっています。
有機農園のブルーベリー、国産レモン、国産バレンシア、沖縄マンゴー、あかつき(桃)、有機米、など。
パフェに限らずですが、応援したい農家さんから農産物を買わせていただいて、お菓子に使うようにしています。きれいな土を使った農業が、いつまでも続いていけるように。
私のような小さなお店では、雀の涙かもしれませんが、素敵だと思う農家さんの作物の良さをお客様に少しでも伝えられたらと。デザインは、私が20代の頃に初めて一からレシピを作ったケーキを基にしています。
取材班が食してみると、素材それぞれにエネルギーがあり、一口運ぶごとに元気が湧いてくるようなパフェで。上部はスプモーネ(アイス)のひんやり食感から始まり、中部では、素材本来の甘さが全面に押し出され、瑞々しい美味しさにスプーンが止まらなくなり……。下部にいくと、リオレとジュレがのど越し爽やかであっという間にグラスが空に。グルテンフリー、ヴィーガンだからか、体の細胞ひとつひとつが喜んでいるようでした。
パフェを始めたきっかけは、本当になんとなく。パフェを始める前は、お店にフランス菓子やヴィーガン菓子など置いていましたが、「謎のお店」と思われていたようで、お菓子について理解してもらうことが難しく、どんなにおいしいヴィーガン菓子を開発しても、多くの方に認知して頂くことはできませんでした。
そんな状況を変えられないかな……と思っていたところ、偶然カフェの営業先として間借りしているスタジオに「パフェが一番エラい。」(著者:斧屋 出版:ホーム社)という本が置いてあり。ふーん、パフェが一番偉いのか…と思いながら、文章はあまり読まずに写真集のようにこの本を眺めて。
みなさん、こういうものを食べる方がワクワクするのかな??
じゃあ私のお菓子もグラスに詰めてみようか?!
このようなノリにより、私のパフェが始まりました。
実際パフェを始めてみると、ケーキというものはある程度保形性と硬さが必要なものですが、グラスという支えのあるものにデザートを入れるパフェは、多種多様な食感のものを楽しめるようになるので、アイデアが無限大に広がります。
アイデアの源泉は、その時々。今回は元同僚のスウェーデンでの暮らしぶりと、お土産にもらったKOBBSの紅茶だったり。
その前はドイツの森をテーマにして歴史を調べているうちにパフェになったり、その前は春が終わって夏に移り変わる気配を感じた刹那的な気持だったりいろいろです。日常生活の中に感じる季節感や感情を具現化していることが多いかもしれません。
私がヴィーガンやグルテンフリーのレシピを作り始めたのは3年前くらいから。とある親子がカフェにいらした際、両親はケーキを食べているのに、男の子がアレルギー持ちで、ただ見ているだけだったんです。その様子をみて、アレルギーの子も食べられるお菓子を作ってあげたいと思い、ヴィーガンやグルテンフリーのお菓子を作り始めて。
それまでは、10年ほどフランス菓子を作る仕事をしていました。その他、イタリア菓子やイギリス菓子に携わるときも。個人的な好みですが、現代的な軽いフランス菓子よりも、古典的なお菓子で、癖があったりヘビーな印象のものが好きなんです。
ヴィーガンだからグルテンフリーだから、という理由で自分の好みの味から外れることだけは避けたいと考えているので、そのための試行錯誤は惜しまないようにしています。
とてもヲタクな世界なので、楽しめる方も楽しめない方もいらっしゃると思います。色々なお仕事と共通した答えになってしまいそうですが、パティシエの仕事の魅力は、どれだけ学んで研究して知識や技術を深めても、沼のように深く底がないという事かと。
例えば、私は古典菓子が好きなので中世フランス菓子や貴族の食生活について調べていました。すると、昔は精製された砂糖というものを薬屋が取り扱うものになっていて、薬とされていたものが貴族の嗜好品になっていたことがわかったり、そもそもフランス菓子やヨーロッパ菓子の起源をたどると、オスマン帝国まで遡って歴史が垣間見えてくるのです。とてもヲタクで沼のような世界でしょう??
そして、インプットした知識を使ってどこまでも新しいモノづくりに生かせるのがパティシエをしている醍醐味ではないでしょうか。
約一か月前には予告と予約受け付けを開始するようにしていますが、毎回新しくレシピを開発してからパフェを組み立てているもので、告知が販売3週間前などギリギリになってしまうことも。現段階では、10月・11月・12月はパフェが出せそう。10月は梨と金木犀がテーマになる予定です。
※農産物の熟れ具合などでパフェの販売時期がずれ込む可能性もあります。
カフェを開ける時は、パフェ以外にも、焼き菓子や、月替わりの各国伝統菓子、軽食等お店に揃えています。全ての商品それぞれにファンがいて下さるので、お店に並べている物は全ておすすめ商品です!
特に、ジンジャービスケット(ヴィーガン、グルテンフリー)や酒粕スコーン、パブロヴァはリピーターが多い大人気商品。ジンジャービスケットと酒粕スコーンは通販も行っています。
お店のコンセプトは、「どこまでも贅沢に美味しいものを楽しめる空間」ということ。テーマは、「幸せの連鎖」です。
お菓子を食べる人に・原料を育てる農家さんに・お菓子を作る人に・お店に関わる全ての人に・幸せが連鎖していくような製品づくりとお店作りを目指します。
少しずつ増やしているヴィーガンやグルテンフリー製品についても、持続可能なお菓子の基礎を構築することによって、この基礎が未来に引き継がれて、未来の古典菓子として親しまれてほしいという願いを込めています。
About Shop
店名 手作りの店HANNAH(ハンナ)
住所 東京都板橋区南町11-1 (11-1Studio)
営業時間 月5日営業 詳しくはインスタからチェック
Instagram:@handmadeshophannah
Photo/Cream Taro Writing/Mariko Ebisawa
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