コロナ禍の向かい風を受けながらも、2021年から2022年にかけて、多くのカフェやパティスリーがOPEN。そこで今回、スイーツメディアufu.独自の視点で、大賞を実施。推薦するのは、ジャーナリストやスイーツライターではなく、人気シェフ4名!
今もなお一線で活躍する彼らが2022年、最も注目したお店やシェフを推薦していただきました。その視点は、職人としての技術力はもちろん、お店をマネジメントや、効果的なSNSの発信といった点も含味されています。
お菓子好きの人はもちろん、お菓子業界で成功したい!と思っている人にとっても大注目の記事です。
今回アンケートに答えてもらったのは、『UN GRAIN(アングラン)』(南青山)の昆布シェフ、フリーのパティシエとして活躍している上野シェフ、『L’atelier à ma façon(ラトリエ ア マ ファソン)』(上野毛)の森シェフ、『Mr. CHEESECAKE』の田村シェフの4名。
オーナーシェフとして店舗の経営する方。企業向けのコンサルティングを行っている方。自社ブランドを立ち上げ成功を収めた方、などなど。様々な形でお菓子と関わり、それを作るパティシエたちの価値を高めるブランディングにも力を注ぎます。
そんな4名が、どんなお店をどのような視点で選ぶのか。そこで今回聞いた質問はこちら。
“2022年、注目したお店やパティシエを教えてください”
この超ストレートな質問に、シェフたちがそれぞれの観点からチョイス。その答えには、まさかと思う店名やシェフの名前が並びました。しかし、理由を聞けば“なるほど!”と思わされるものばかり。早速、気になるお店と理由を見ていきましょう!
~2022年のトップワード“エディブルフラワー”の至極。里山の風景をデザートにする創造力を持った唯一無二のシェフ~
東京銀座資生堂ビル の10階にあるイノベーティブイタリアンレストラン『FARO(ファロ)』。モダンでオリジナリティーあふれる雰囲気と、その料理は「ミシュランガイド東京2023」において、3年連続の一つ星を獲得したお店です。
そんな『FARO(ファロ)』でシェフパティシエ加藤峰子さんが作り出す「花のタルト」は、デザートの概念を覆すような近未来的スイーツ。約40種類ものハーブを使用した「花のタルト」は、シェフが出会った里山からインスピレーションを受けたもの。
加藤峰子シェフにはいつも、お菓子だけに限らない視野の広さに脱帽させられる。ちょっと先ではなく、100年後の未来を見ているようだ。
『FARO(ファロ)』加藤峰子シェフのインタビュー記事はこちら
~ニューヨークの国際的世界大会で入賞。文化の垣根を越えて作られる神秘的な美しさで人々を魅了する菓子界の魔術師~
2020年にOPEN以来、話題を集める『フォーシーズンズホテル東京大手町』。そこでエグゼクティブペストリーシェフを務めているのが青木裕介シェフです。
青木シェフは米国で唯一の国際的なペストリーの大会で上位入賞。ニューヨークで開催された「ヴァローナ チョコレートシェフ コンペティション(C3)」優勝など。数々の世界大会で賞を勝ち取る世界トップクラスのシェフです。ヨーロッパに限らず、中東での修業経験を活かしスイーツに組み込まれる、多国籍なニュアンス。「チョコレートと燻製イチジク」はそんな青木シェフのクリエーション力の凄さを体感できるデセールの1つです。
青木シェフのスイーツは“美しい”の一言。見て、食べて、味わって、改めて緻密に計算された菓子なんだと感じさせる奥深さ。世界トップクラスのクオリティを目の前に“美しい”以上の言葉が出てこない。
『THE LOUNGE(ザ・ラウンジ)フォーシーズンズホテル東京大手町』青木裕介シェフのインタビュー記事はこちら
~パティシエ自らブランディングをする時代。“焼き菓子”を強みにSNSで話題を集めたサステナブルな人気店~
“美味しいのは当たり前”の時代で新たな視点とテーマを掲げ、オープン前から話題を集めたお店「feuquiage(フキアージュ)」。焼き菓子とケーキのお店として2021年11月にオープンし、次世代の“パティシエの在り方”としてオーナーシェフ畠山和也さんもまた、注目を集めました。
畠山シェフは「エコール・クリオロ」や、ジャカルタの高級パティスリーでエグゼクティブシェフを務め独立開業。お客さんにはもちろん、働き手にとっても「feuquiage(フキアージュ)」に関われてよかったと思うお店を目指しています。そんな畠山シェフの得意分野は焼き菓子。特に「フィナンシェ」は、慣れ親しんだフランス菓子を素材から見直し、ダイレクトな美味しさを楽しめる1品に。また店頭に焼き菓子を積み上げて販売するスタイルは、魅せ方まで意識する “次世代のパティシエ”として一目置かれる存在です。
開業前からポップアップの出店でブランドを広め、昨今のSNS時代にコミットしたパティスリー。お菓子ももちろんだが、セルフプロデュースの素晴らしさからもマルチな才能を感じる。
「feuquiage(フキアージュ)」を語る上でブランディング力は外せない。生菓子ではなく珍しくも、焼き菓子を全面的に押し出しているところが差別化になっている。また、従業員の雇用や、価格改正への対応など。今後新たに開業を考える人にとっては、素晴らしいモデルケースになると思う。
『feuquiage(フキアージュ)』(調布)の畠山和也シェフのインタビュー記事はこちら
~“作り立て”を楽しめるケーキ屋の究極形態アシェットデセールのお店。古都・鎌倉にパリの空間を作り出した実力派シェフ~
2021年9月鎌倉にオープンしたサロン・ド・テ『Regalez Vous(レガレヴ)』は、昨今注目を浴びているスイーツの新たな体験“アシェットデセール”のお店。シェフがその場で作るライブ感、そして作り立てのみ味わえる食感や香りを存分に堪能できます。
そんな『Regalez Vous(レガレヴ)』のオーナーパティシエ佐藤亮太郎シェフは20年以上、フランスの数ある名店で経験を積んできた実力派。オーセンティックな菓子作りから、料理とデザートの協調性を探求するガストロノミーの視点まで、幅広い知見で注目のスイーツを作り続けています。
流石はフランスでのご経歴が長い分、本物のパリを感じさせる空間。渡来のデザート専門店とは全く異なるアプローチで、遠方からでも鎌倉に行くべき価値を見出している。
『Régalez-Vous(レガレヴ)』(鎌倉)の佐藤亮太郎シェフのインタビュー記事はこちら
~誰もが知る名店。お菓子が好きな人たちのニーズを掴んだ発信力で新たな顧客の心をつかむ~
1998年3月20日にオープンして以来、お菓子好きなら誰もが知るパティスリー『Mont St. Clair(モンサンクレール)』。自由が丘を“スイーツの街”としてイメージ付けたお店と言っても過言ではありません。
フランス語で“これが人生”と名付けられたケーキ「セラヴィ」を含め、当時からスイーツ界に旋風を巻き起こし続けている辻口シェフがオーナーシェフをつとめます。お菓子や素材と本気で向き合うだけではなく、技術の継承や、働き方など。社会の風を先読みし、いち早く行動へと移します。職人の枠を超えた活躍で、不可能を可能にし続ける姿勢は、今一度注目したいところ。
約25年続いていまだに長蛇の列ができる人気ぶりには流石としか言いようがない。近年では、コロナ禍を受けてクオリティの高い冷凍ケーキに注力するなど、世の中のニーズをいち早く察知するところに驚きました。またSNSの運用など、その時代に合わせた適格な発信方法など、僕自身、一経営者として勉強する面が沢山ある。
『Mont St. Clair(モンサンクレール)』(自由が丘)の辻口博啓シェフのインタビュー記事はこちら
~店舗を超えた活躍で町や会社とコラボレーション。“パティシエ”の新たな仕事を生みだす~
2019年オープンした『Equal(イコール)』は、幡ヶ谷の西原商店街の中にある、いま注目の人気店。特にチーズケーキやシュークリームといった素朴なお菓子が人気で、商店街の人はもちろん、全国からお菓子好きが集まります。
オーナーシェフは後藤裕一氏。フランスの名店でアジア人初のシェフパティシエを務めたり、東京の有名レストランで活躍したりと、“食事とスイーツ”という繋がりを得意としています。また、自ら社会のニーズを探し出し、新たな市場を生み出す姿勢も、今までの菓子職人と一線を置かれる理由。『ブルーボトルコーヒー』や『DEAN & DELUCA』といった企業との関りは、パティシエという職業へのイメージを向上させる活躍ぶりです。
後藤シェフのチーズケーキはピカイチの美味しさ。極上の滑らかさと奥深い味わい、そしてシンプルさ。そして自らが職人であることを最大限に活かして、企業とのコンサルティングにも取り組む姿にも注目。パティシエの新たな可能性を引き出してくださいました。次はどんな仕事ぶりで僕らを魅了するのか、楽しみで仕方ないです。
『Equal(イコール)』(幡ヶ谷)の後藤裕一シェフのインタビュー記事はコチラ
~自らの個性をそのままお菓子に映し出す。職人魂が、心を掴むお菓子を作る~
2015年にオープンして以来、色鮮やかで個性的なプチ・ガトーが並ぶパティスリー『Ryoura(リョウラ)』。オーナーシェフを勤める菅又亮輔氏は、実力と創造性を持ち合わせた日本きってのパティシエの一人。フランス北部にあるノルマンディや、スイスとドイツの国境沿いに位置するアルザス地方など、フランス各地で修業。帰国後は「ピエール・エルメ・サロン・ド・テ」でスーシェフに抜擢されました。
いつも屈託のない笑顔の菅又シェフ然り『Ryoura(リョウラ)』のお菓子もまた、とってもチャーミング。その背景には素材選びや組み合わせはもちろん、作る工程における状態管理に妥協を許さない職人魂があります。そうして出来たケーキは、素材本来の色や食べた時の食感に感動を覚えるほどです。
『Ryoura(リョウラ)』(用賀)の菅又亮輔シェフのインタビュー記事はコチラ
『Ryoura(リョウラ)』は、そうだと知らずとも見た目と味で誰のお菓子なのか分かります。それくらい素晴らしい個性をもっている。特に菅又シェフのスペシャリテ「レブリー」は香りも含めて凄く好き。食べていて奥行きと余韻を感じるのは、ベリーにバラの香りを加えているからでしょうか。こうしたシンプルながら繊細な印象を与えるケーキの数々。研究に余念のない菅又シェフは、本当に美味しいお菓子を作られる方だと思います。近年はTV出演や、コンビニエンスストアでのコラボレーションスイーツの開発など。活躍の幅を広げていらっしゃる印象です。
いかがでしたか?
全く異なる視点で推薦された7人のシェフとブランド。ここにあえて共通点を見出そうとするならば、“各自がパティシエという枠にとらわれないアイディアと独自性を持っている”ところではないでしょうか。
モノが溢れる現代で求められているのは、いかに魅力的に伝えるかといった発信力。そして、一時的な流行に終わるのではなく、未来を見据えた基盤づくり。お菓子が本当に好きだからこそ、その未来と作り手のことを考える彼らの姿勢は、着実に時代を進化させているようです。
昆布智成シェフ
お店:『UN GRAIN(アングラン)』(南青山)
プロフィール:老舗『オーボンヴュータン』(尾山台)、『ピエール・エルメ サロン・ド・テ』で学び渡仏。フランスのMOF取得パティスリー「リエデレ」や、2つ星レストラン『ラトリエ ・ド・ジョエル・ロブション』にてさらに、経験を積む。現在『UN GRAIN(アングラン)』シェフパティシエを担当。今年、地元福井県で『昆布屋孫兵衛』を後継する予定。
森郁磨シェフ
お店:『L’atelier à ma façon(ラトリエ ア マ ファソン)』(上野毛)
プロフィール:辻調理師専門学校卒業後、『ホテルニューオータニ東京』に8年勤務。その後『Café 中野屋』開店。2019年に『Café 中野屋』を閉店し、現在の『L’atelier à ma façon(ラトリエ ア マ ファソン)』を上野毛にオープン。製菓界では特に、パフェなどのグラスデザートで評価されている。
上野 啓介シェフ
肩書き:フリー・パティシエ
プロフィール:「パティスリー・ドゥ・シェフ フジウ」勤務後、渡仏。2年間の修業を終え、日本に帰国後は「パークハイアット東京」や『中沢乳業株式会社』に勤務。
現在は、お菓子のコンサルティングを専門とする『上野菓子研究所』代表。酪農家と製造者を繋げる活動を行っている。
田村 浩二シェフ
ブランド:『Mr. CHEESECAKE』
プロフィール: ミシュラン2つ星『Edition Koji Shimomura』(六本木)の立ち上げに携わるなど、いくつかの店舗を経験し渡仏。3つ星レストラン、 1つ星レストランで修業を重ねる。帰国後は世界最短でミシュランの星を獲得した『TIRPSE(ティルプス)』のシェフに就任。現在は、2019年にスタートしSNSを中心に話題沸騰した『Mr. CHEESECAKE』の代表。
園果わたげ
ウフ。編集スタッフ
ufu.の新米編集者。メンズカルチャー誌でアシスタントを経験後ufu.に転身。 特技は甘いものを食べ続けること。最近は美術館内レストランの限定コラボスイーツにハマっている。
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