2023年に始動した、異色の経歴を持つショコラティエ&チョコレートプロデューサー「チョコアイカ」さん。学習院大学物理学科出身、卒業後はローソンで商品開発を10年という、まさにエリートの人生を歩んでいた“リケジョ”の彼女。開発職時代には、人気番組「ジョブチューン」の商品ジャッジ企画に出演しては涙を流す姿も放映されました。
これほど仕事に情熱を注いできた彼女が、なぜ今チョコレートの世界に飛び込むのか。昨年、チョコレートを求めて世界一周した旅から帰国し、今月から応援購入サービス「Makuake」で、「Aika Chocolat」を販売開始。この最高のタイミングで、ufu.単独取材が実現しました。彼女のつくるユニークで唯一無二のショコラの魅力とともに、その誕生ストーリーをお届けします。
大手コンビニの開発職を退職し、チョコレートの道を選んだアイカさん。「10年も務めたのに、一体なぜ?」と気になるところ。
「社会人になるまで、ずっと周囲の期待に応えようとする“他人軸”の人生でした。世間一般で言う、“いい”大学に入って“いい”仕事につくのが目標で、将来の夢は医者か弁護士だったんです。
そんな“いい子”でいた学生時代。カナダに留学したとき、『アイカは何が好きで、何になりたいの?』と聞かれることが多くありました。でも当時の私には、好きなことや夢中になっていることが特に無くて…。
バンドサークルに所属していたこともあり、『歌うことが好きだけど、稼げないし歌手にはならないよ』と回答したら、『Yоur life is a gift from God,you can do whatever you want.(あなたの人生は神様からの贈り物で、自分で人生を選べるんだよ)』と友人に言われて。その言葉がずっと心にわだかまりを残していました。私が本当に好きになれるものって何だろう?って」
そんな学生時代を経てローソンに入社したのは、上京してホームシックだったときに、コンビニスイーツに救ってもらったからだそう。
「初めての一人暮らしが寂しくて、学生なのでお金も無くて。毎週火曜日にスイーツを求めてコンビニをパトロールするのが趣味になっていました(笑)当時はコンビニスイーツ全盛期で、ローソンの『プレミアムロールケーキ』を初めて食べたときは美味しくて衝撃的でしたね。これが全国の1万4000店舗で食べられるだなんて…。
大手企業で大好きなコンビニスイーツの開発ができるというのは、私の中で最善の選択肢だったんです」
ローソンに入社して2年目のころ。実店舗で朝から晩まで店長として勤務していたアイカさん。スイーツへの愛は顕在だったものの、その激務さに打ちひしがれていたそう。
「朝6時に家を出て22時に帰宅する毎日でした。勉強になることも多かったのですが、身体が疲れてヘトヘトだったんです。
そんな毎日のなかで、ふとTVをつけたら石原さとみさん主演のドラマ『失恋ショコラティエ』が放映されていて。TVに釘付けになったんですよ。小さなボンボンショコラがキラキラしていて、美しくて、美味しそうで…!『これだ』と思いました、チョコレートに完全に恋に落ちました」
物理学科出身で、学生時代は無重力実験などに勤しんでいたアイカさん。一見、無関係に見える物理とチョコレートも、彼女から見ればこんな関係性が。
「知っていますか? チョコレートって物理学的にも面白いんですよ!チョコレートの分子の並び方って6パターンあって。5型のパターンじゃないと、硬すぎておいしくないんです。カカオバターの温度変化のグラフも面白いんです、人間の体温のところで一気に溶けるようになっていて!
…と、こんな風にどんどん夢中になりました(笑)。その後、激務の店長時代も、チョコレートのおかげで乗り越えられました」
ローソン時代にアイカさんが開発に携わった商品は、なんと年間約100個! 2021年にはジャッジ企画でおなじみの『ジョブチューン』にローソン代表として出演したことも。とにかく駆け抜けた開発職人生が、今にどうつながっているのかを伺いました。
「商品開発のために、スイーツならレストランのデセールから駄菓子まで、とにかくピンからキリまで食べましたね。試作品も約2000回以上食べましたし、原材料にも詳しくなりました。この時に培った、『この味にするならこのレシピだな』という感覚は、今のショコラ作りの基礎になっています。
また、TV番組『ジョブチューン』の出演でシェフたちと出会ったことも、今の道を選ぶ大きなきっかけになりました。コンビニ開発職で、工場生産でより多くの人に届けるスイーツを生み出すことも素敵ですが、シェフたちのように、“自分の手で”直接商品を作って届けてみたいと思うようになったんです」
いわゆるバリキャリだったアイカさん。新卒から入社10年目を節目に「今だ」と思いローソンを退職。そこからショコラトリーを開業…ではなく、なんと約3か月の「チョコレート世界一周」へ行くことに。
「入社2年目で『失恋ショコラティエ』を見てから8年間ずっとチョコレート屋さんになりたいと思っていて。心の中で暖めてきたんです。
大好きなスイーツ開発も、部署移動でフード系担当になったりして、少しずつ違和感が降り積もっていたころ。コロナに罹って10日間家で自粛したときに、自分と改めて向き合ったんです。
その時思いました、『このまま会社にいても、本当に好きなこと(=チョコレート)はできない』って。そして10年を節目に退職を決意しました。だって、今までの人生で何かをこんなに好きになれることがなかったから」
「会社員時代から、仕事と並行して製菓学校に3年間通ってショコラ作りを勉強していました。退職したらショコラトリーに弟子入りしようかな…とも思いましたが、もっと多くのショコラや、それに携わる人たちにまずは出会いたい。そう思って『世界一周チョコレート旅』をすることにしたんです。
どんな旅かというと、世界中のチョコレートと、チョコレートに携わる人々に会いに行く旅。カカオ農園に訪問したり、現地でマップを調べてショコラトリーやパティスリーを探してチョコを食べ、『日本から来た、チョコレートの話が聞きたい。明日行ってもいいですか』とショコラティエにアポを取る。そんな旅でした。
旅で出会った方は150人以上、7か国31都市を巡りました。新たなチョコレートの知識はもちろん、チョコレート関係の方とのつながりも増えました。そして、帰国してしばらく頭の中を整理したら、(人生への)『情熱』というショコラ作りのコンセプトが思い浮かびました。
この旅で出会った人たちからひしひしと伝わってきたもの、そして今まで“他人軸”だった私の人生で求めていたのは、何かへの『情熱』という言葉なのかなと」
現在日々ショコラの試作に励み、新たなチョコレートを生み出すアイカさん。デビューブランド名は「Aika Chocolat」に決定し、ついに2月より予約が開始します。元会社員のチョコレートと侮ることなかれ、開発職出身の確かな味の設計、そして“リケジョ”ならではの驚きのコンセプトや組み合わせは、彼女にしか生み出せない唯一無二のショコラとしか言いようがありません。
「私はチョコレートの匂いをかいだだけで、あの激務の日々で助けられたチョコレートのことを思い出して幸せな気分になります。とにかくチョコレートが好き。人生で、こんなに好きなものに出会えると思っていなかったです。
『Aika Chocolat』第一弾は、世界一周ショコラ。世界一周の旅で実際に出会った美味しいものや発見を詰め込んだショコラなんです。今まで食べたことのない味や体験を提供して、驚きを届けていきます。願わくば、情熱に従って生きる人の原動力になりますように。
まだまだショコラ作りもコンセプトも模索中ですが、発酵食品同士が合うとか、この作り方だと分子がこう変化するとか、今まで培った経験と知識で新しいショコラを生み出していきます」
その行動力と情熱が周囲を惹きつけてやまないアイカさん。夢と愛がぎゅっと詰まったショコラ、これからの進化に乞うご期待です。
<「Aika Chocolat」詳細>
会員制&予約生産チョコレート。初代会員を応援購入サービスサイト『Makuake』にて、2/1(水)より募集開始。ショコラの発送は4月以降を予定。URL:https://www.makuake.com/project/aikachocolat/
<リターン内容>※1次販売は完売済。追加分のみ。
・「世界一周ショコラ」1箱+初代プレミアム会員権(¥5,000~)
・【まとめ割】「世界一周ショコラ」2箱+初代プレミアム会員権(¥9,500~)
・セミオーダーメイドショコラ3箱+初代プレミアム会員権(¥30,000~)
・チョコアイカとチョコカフェ(¥12,000~)
・ショコラとワインのペアリングパーティーご招待+初代プレミアム会員権(¥16,000~)
・世界一周ショコラプレミアム勉強会(zoom)+初代プレミアム会員権(¥11,000~)
【編集後記】情熱的でポジティブな人柄がとてもチャーミングなアイカさんですが、一番驚いたのは、さすがリケジョ、「最大公約数」「方程式」「分子」といった表現がインタビュー中にもどんどん出てくることでした。感覚的な方が大多数の食の世界で、数字や成分からアイデアを見出いだすアイカさんのショコラは、まさに唯一無二。始まったばかりの彼女の活動に、ぜひご注目ください。
Photo/Cream Taro、sae inoue Writing/Nanako Maeda
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