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メディア初取材。「枯星森安息所(カラホシモリアンソクジョ)」(茨城・笠間)若き夫婦が叶える飲食の未来

メディア初取材。「枯星森安息所(カラホシモリアンソクジョ)」(茨城・笠間)若き夫婦が叶える飲食の未来

スイーツメディアufu.がお届けする“食とその未来”の話。美味しい情報、最新情報だけではなく、日本が抱えている食にまつわる問題、みんなで考えていくべき課題を伝えていきます。

今回はとある地域で奮闘する、若い夫婦のお話です。

メディア初取材。「枯星森安息所(カラホシモリアンソクジョ)」(茨城・笠間)若き夫婦が叶える飲食の未来

今まであった風景、暮らし、その地に根差す植物や野菜や果物たちと、そこに住む動物や人etc.多くのことがどんどん変わっていく世の中。この記事を読んでいる人の中にも、地元を離れて都心部へと移り暮らしている方もいるのではないでしょうか?

令和2年、政府のレポート※では全国の半数近くの市町村が過疎化となっており、日本の面積で言えば国土全体の6割弱という報告が上がっています。そもそも過疎化とは何か? 人口の急激な減少により、地域住民の生活水準や生産機能が一定のレベルを維持できなくなった状態を「過疎」、そしてその状態が進行していることを「過疎化」といいます。
※総務省発表、令和2年度版資料より

メディア初取材。「枯星森安息所(カラホシモリアンソクジョ)」(茨城・笠間)若き夫婦が叶える飲食の未来

そんな過疎化の問題の中、地域を盛り上げようと奮闘する小さな飲食店があります。茨城県笠間市にある「枯星森安息所」(カラホシモリアンソクジョ)。全国には様々な想いで営まれているカフェがたくさんあります。そんな中でも、多くの問題と向き合い、発信し、そして彼らの情報を見て共感し多くの人が集まるお店です。

メディア初取材。「枯星森安息所(カラホシモリアンソクジョ)」(茨城・笠間)若き夫婦が叶える飲食の未来

店内では色鮮やかな野菜があふれるランチプレートや季節のフルーツを使ったスイーツはもちろん、こだわり尽くされた珈琲や雑貨なども販売されています。

このお店を切り盛りするのは、若い飯田夫婦。自分たちが育った「大切な何か」を取り戻そうと、地元の問題と向き合い、耕し続けています。なぜこの地で、このお店を開いたのか、何を考え、この先どのような未来を描くのか。今回はちょっぴりドキュメンタリータッチでお届けしていきます。

~始まり~ 地元への愛から生まれた、夫婦の決意

メディア初取材。「枯星森安息所(カラホシモリアンソクジョ)」(茨城・笠間)若き夫婦が叶える飲食の未来

日本屈指の栗の産地である茨城県の笠間市。東京からは約1時間と少しという場所に。最寄り駅である岩間駅を降りて、約2.8㎞。周りを見渡せば小川と田んぼと畑、瓦屋根の古民家が数軒。自然豊かな里山で、車がないとなかなか行き着くことのできない、自然の豊かな場所に「枯星森安息所」(カラホシモリアンソクジョ)はあります。十数年空き地となっていた屋敷を改装し、2021年に開業し今年で2年目へ。

メディア初取材。「枯星森安息所(カラホシモリアンソクジョ)」(茨城・笠間)若き夫婦が叶える飲食の未来

もともと会社員だったころは、地元を離れて働いていたという飯田さん。なぜこの地で、どのようにして「安息所」を築き上げたのでしょうか?

飯田さん「地元を離れて関東圏内で働きに出ていて、大きな組織に入り、販売の仕事で店長の役職に就いて働いていました。その頃に、薄くぼんやりと“何か小さいことでもいいので、地元でできないかな”という想いが心の奥底にありました。

メディア初取材。「枯星森安息所(カラホシモリアンソクジョ)」(茨城・笠間)若き夫婦が叶える飲食の未来

僕が通っていた栃木県の益子市。陶芸の町としても有名な益子の「starnet(スターネット)」というギャラリーcaféに当時の仕事を辞めて、勤めることになりました。益子市は、観光地ではありましたが、このカフェはそこから離れた場所にあり、何か田舎で商売をやる感覚はこの益子で学びました。お店が成り立つ感覚、人を呼べる吸引力であったり、そういったことを学びながら“自分だったら地元で、どうしていくか”。ぼんやりと考えながら地元に帰りました。」

メディア初取材。「枯星森安息所(カラホシモリアンソクジョ)」(茨城・笠間)若き夫婦が叶える飲食の未来

その後、実際に地元へ帰り、ご実家の田んぼを一反借りて無農薬の米作りを始めていたという飯田さん。地元へ戻ったころには、数人いた幼馴染も都心部に出て、家を建てて暮らしているという。畑仕事に勤しみ、飯田さんはこの地の空気の気持ち良さを再確認していました。

メディア初取材。「枯星森安息所(カラホシモリアンソクジョ)」(茨城・笠間)若き夫婦が叶える飲食の未来

飯田さん「地元へ戻り、五感をフルに使って遊んでいた幼い頃の記憶が蘇ってきたんです。実際に手で土に触れながら、“出来ることならこの地に根ざして暮らしていきたい” “この地を残していきたい”。そう思い描いたことをここで完結できたら最高だなと考え始めていました。ふと思い出したのが、一つの屋敷。子どものころから知っていた屋敷が、ずっと空き家でした。そこで何かやれないかな、そう考えたのが5~6年前のことです。」

その後、飯田さんは奥さまに出会い、この地への思いと計画を吐露し、この物語は始まるのでした。

一人のおばあちゃんとの出会いが道を切り開く

メディア初取材。「枯星森安息所(カラホシモリアンソクジョ)」(茨城・笠間)若き夫婦が叶える飲食の未来

先述の屋敷からは、15分ほどのところに住んでいたという飯田さん夫婦。家から飯田さんの田圃があるこの集落へ通っていたそうで、この屋敷に立ち寄っては、建物や庭の植物の観察をして妄想を楽しんでいたんだとか。伝手(つて)もなかった、この屋敷。そこで一人のおばあさんに出会い、運命の歯車は回り始めます。

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飯田さん「きっかけは、2018年の秋ぐらいのことでした。近辺を散歩していると、井戸端会議をしている80歳くらいのおばあさん2人組に出会いました。そこで名前を名乗ると、小さい頃に面倒を見ていただていたおばあさんたちでした。ふといい機会だと思い、あの屋敷について尋ねると同時に、そこで何をしたいのかを話すと、このおばあさんの家は、あの屋敷と本家と分家の関係にあって、塀を挟んで隣。」

その後、飯田さんのひいお爺さんにお世話になったというおばあさんの心意気もあり、家主に連絡をして貰えることになったんだとか。このおばあさんは、「テルミ」さん。飯田夫婦が「枯星森安息所(カラホシモリアンソクジョ)」を開業するにあたり、重要な登場人物の一人です。

完成へと向かう「枯星森安息所」。終わりから始まる、次のストーリー

メディア初取材。「枯星森安息所(カラホシモリアンソクジョ)」(茨城・笠間)若き夫婦が叶える飲食の未来

飯田さん「その後、テルミさんのおかげで移住する手続きが始まりましたが、書面の手続きであったり、改装をどういう方向性で、どう描いていくか、試行錯誤しているうちに移住するまでに2年という時間が経ちました。築60年以上の歪みの多い古民家だったので、大工さんたちも大変だったかと思います。お店はもともと民芸が好きだったので、その要素を取り入れたり、市内のほうにある廃材を再利用したり、汗水を流してくださった大工さんたちと作り上げていきました。」

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その後、この飯田夫婦の想いの詰まった空間は交流がある陶芸家や硝子作家にデザイナー、多くの人達の手と手が繋がってどんどん彩られていきます。お店で出される食器、内装、ありとあらゆるものが夫婦の人と人との繋がりを感じるものに。こうして「枯星森安息所(カラホシモリアンソクジョ)」は、無事2021年に開業することになりました。

さて、このお店の名前はどこから、どのようにして生まれたのでしょうか?

「安息所」の意味

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お店のロゴは、花島 脩一朗氏によるデザイン。安息所に灯る火のようなイメージ。そう、珈琲店やカフェ、ギャラリーという名前でもなく、この「安息所」という言葉。その言葉の裏にも、計り知れないエピソードと思いが隠れていました。

飯田さん「“安息所”というワード自体は、以前に僕がつとめていたギャラリーカフェが裏テーマとしてあります。そのカフェは、オーナーが途中で病気でなくなってしまっていたんです。でもオーナーを慕っている人が凄く多くて、継続しての運営に繋がっていました。

“ここはこれからどうされるんですか?”と働いている方々へ質問したときに、『究極の安息所』という考えを聞いて、すごくビビっときました。ここはご老人も来るし、若い方も数多く訪れるなど、様々なお客さんが自然と“集まる”場所でした。

こういう“人に選ばれる場所”は凄く新しくて、自分の中でもそれをコンセプトにしようと思っていました。何をもって安息所か、まず名前からはじめよう。それがスタートでした。」

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“枯星森”この名前にどんな想いと意味を込めた思いもユニーク。使いたい言葉を3つ並べて、字面を見てどう読むかわからない。でも口にしてみたい。そんな言葉を散りばめているそう。

飯田さん「特に『枯』という言葉は、一般的にはネガティブな印象。時間の流れを感じさせるこの言葉には、枯れる=物語の始まり、復活の象徴。瞬間で見るとネガティブに感じますが、時間軸をトータルでみると、枯れて次が始まる。そんな意味合いもあると思っています。」

現在の安息所が向かう先。少しずつ進む地元の発信

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こうして、Instagramのアカウントはフォロワーが7000人を超え、この夫婦が発信するメッセージを読んで足を運ぶ人が絶えません。開業した当時と、今ではどう違うか? 二人が感じること、そしてこれから先のことをお聞きしました。

飯田さん「1年目、2年目となると、想像していたことと違うことはたくさんありました。一つは、結局は飲食店ではあるという現実と向き合うこと。ただ、実際にお店を開けてみて、理想のお客さんが来てくれて、現実この土地に住む80歳、90歳のお爺さんやおばあさん、また子連れの方も来てくださっています。僕たちのInstagramの発信の影響もあると思っています。投稿にもよく出ている娘に会いに来てくださる方も多くて、嬉しいですね。

メディア初取材。「枯星森安息所(カラホシモリアンソクジョ)」(茨城・笠間)若き夫婦が叶える飲食の未来

食は、すごく大事な要素です。この作りこんだ雰囲気で食べるなら、パスタじゃないなというのはありました。ここで食べるんだったら、パンチのある美味しさではなく、何か“ほっとする特別なもの”があればいいなと思って日々作っています。この場所で座って食べたり飲んだりできる、つながりがある生産者さんのものを使い、無理のない範囲でやっていきたいと思っています。」

発信基地としての「枯星森安息所(カラホシモリアンソクジョ)」“これから”

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飯田さん「お店を完結させるだけではなく、拠点として広がっていったらいいなと思っています。安息所をきっかけに、外の人がこの土地を興味を持って貰えたら。昨年はお客さんたちと安息所の田んぼを始めました。今は山林整備の為に、1年をかけて林業の技術をみんなで学んでいます。今年は森の整備に着手したいんです。

こういう荒廃していく里山の美しさや機能を未来に残す為には、やはり人手が大切です。今となっては地域の住人だけではそれは守りきれない。ですから外からの人を集めて、共に守っていかなければいけません。その為の発信拠点としても安息所が在り続けられれば良いなと思います。」

2022年の10月は、里山の風景を作るという目的で田んぼを耕して、枯星森の田んぼとして拓き、12月には初の展示会を「枯星森安息所(カラホシモリアンソクジョ)」にて行った飯田夫婦。一つ一つ、急がずゆっくりと、アクションを起こす二人の姿。この記事を読んだ人へ、この若い夫婦の情熱に触れて一人でも多くの人に刺激になりますように。そんな想いを込めて。

About Shop
枯星森安息所
茨城県笠間市上郷2386
営業時間:11月から3月:11:30-16:00
4月から10月:12:00-17:00
定休日:定休日 5の倍数日+不定休

Photo&Writing/Cream Taro