元東京カレンダーで現在はソーシャルメディアマーケティングをしている、鈴木セイラさんの連載『金曜日、秘密のデザート』。予約困難なレストラン、知る人ぞ知る名店、大人のバーetc. 今までメディアでも掘り下げてこなかった、大人のための秘密のスイーツをお届けします。今回は、“本当は教えたくない”、2年間の期間限定で運営しているデザートコースのお店「John」をご紹介。
今回の隠れ家があるのは、JR鶯谷駅から徒歩6分。山の手線を使って新宿や池袋からもアクセスの良いこの場所。大通りから閑静な住宅街の裏路地へと進むと、そこには無機質な銅板にきらめく「John」の文字。
レトロな唐草模様のエントランスをそっと開き、古民家の中へと進みます。玄関に一歩足を踏み入れるだけで、ふわりと広がるヒバの香り。どこかノスタルジックな気持ちに浸りつつ案内され進むのは、小さなお庭が見えるリビング。
手塗りの深緑色の壁や抽象画のアート、銅のペンダントライト、生け花、DIYされたテーブル。築約60年の時の流れが醸し出す大らかな雰囲気と、店主のこだわりがひしめき合うリノベーション空間は、不思議な心地よさがあります。
窓際の特等席は、窓からの自然光を浴びて思わずまどろんでしまうような場所。ここから始まるデザートコースを、お庭を眺めながらまったりと待ちます。
Johnが提供するのは、月変わりのデザートコースとドリンクのみ。「味覚の旅」をコンセプトにし、毎月様々な味わいを体験できます。取材当時の10月は、芋栗南瓜をはじめとした秋の王道食材を名残惜しく味わうコース「秋納めの旅」。
2年間という期間限定にしたのは、若き店主・吉村シェフにとって「始まりのお店」だから。まず期間を設けてチャレンジすることで、コンセプトや、一緒にお店をつくっていくチームをつくりあげたいとのこと。
吉村シェフがこれまで疑問を持っていたのは、食の世界の高級志向。そこから“誰もが食を楽しめる文化をつくりたい”という想いを持ち、5~6品のコースとドリンクのペアリングで3800円という良心的な価格からコースの提供をスタート。日々、試行錯誤しながら毎月新しいメニューを開発しているのだそう。
今回は、コースメニューの中から2皿頂きました。1皿目は、栗をメインにした「野焼き」。野焼きとは、栽培が始まる前に田畑に火を入れて、畑に残っている雑草などを燃やす作業のこと。田舎の農家などで行われる、古くから受け継がれている行為です。
コロンとしたシルエットに、粉雪のようにふわふわと舞い落ちる胡桃のパウダーと、レモンのゼスト。素朴ながらも愛らしいビジュアルの一皿は、一口一口丁寧に味わいたくなります。
中身は、底に蕎麦のクッキー、栗のクリームとエスプーマ、栗の甘露煮。ダイレクトに伝わる秋の食材たちの味わいに、セイラさんも思わず頷きながら味わいます。
ペアリングできるドリンクは、グラスの白・赤ワインをはじめ、ハーブティーやフルーツジュース、ほうじ茶など様々に用意されています。今回はお昼の撮影ということもあり、葡萄とザクロのジュースをチョイス。 ※ドリンクは追加料金
2皿目は、テーブルにサーブされた途端、秋の風が通り抜けるような美しい一皿「黄葉」。まるで、銀杏がはらはらと舞い落ちる瞬間をそのまま切り取った絵画のよう。
メレンゲとマロングラッセ、モンブランクリームの土台に、和栗を練りこんだひらひらのチュイルをトッピング。まわりに美しく散らされた銀杏は南瓜を練りこんだ薄いラングドシャで、フランボワーズとカシスのジャムを付けながら頂きます。
チュイルのサクサクから始まり、食べ進めれば、モンブランクリームのなめらかさ、底にあるクッキーのザクザクが楽しい。こんなにおいしい食材たちの旬は、また一年後。過ぎゆく季節が名残惜しくなる、味覚の旅。
約60年間の時を経て洗練された古民家で、まったりと食材の味を堪能するデザートコース。セイラさんも「この価格で味わっていいんですか?普段使いできそうなデザートコースってうれしいです」と思わず笑みがこぼれます。
2022年の2月から開始した「John」のデザートコース。オーナーパティシエである吉村シェフにとってスタートのお店ということもあり、メニューも店内も日々刻々と進化しているそう。若きシェフが、小さな古民家から始めるスイーツ界への挑戦。ぜひ目撃してみては。
2年間限定ということで、現在の予定期間は2024年の2月頃まで。続々予約が埋まってきているので、気になっている方はぜひ早めのご予約をオススメします。
【メニュー詳細】
月替わりデザートコース:3800円
全6品
完全予約制
※公式Instagramにて予約フォームあり
※取材当時は10月「秋納めの旅」のメニュー。
11月は「掛け合わせの旅」を提供中。
About Shop
John
東京都台東区根岸3丁目6−23−12
営業時間:12:00~20:00
定休日:月曜、火曜
@john_uguisudani
Photo/Cream Taro Writing/Nanako Maeda
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