国産のフルーツと和菓子を融合したスイーツを提供する「青果堂」の2店舗目が昨年2021年9月、銀座に新店舗を構えました。季節や状況によって変化するフルーツの味。その中でベストだと感じるフルーツのみを選出するため和菓子には毎回違う品種が使われています。“和のフルーツパーラー”と呼ばれている所以もこのこだわりがあるからこそ。
そんな「銀座 青果堂」のどら焼きはこだわりのフルーツを惜しみなく、まるまる入れた見た目にも華やかな和菓子。数あるフルーツからこの時期は、苺と柑橘が大人気です。今回は、世界に誇る日本のフルーツと、伝統と現代を組み合わせたファッショナブルなどら焼きの秘密を取材しました。
季節によって変化する日本の味と、その瞬間の一番おいしいところを切り取るようにしてできた「青果堂」の特別などら焼き。一流のモノが集まる銀座でもその美味しさは瞬く間に広がり、たった1年で多くのリピーターが。取材時も「青果堂」の和菓子を求めて、狭い路地を何度も人が交差していました。
※撮影時のみ、手袋を外しています
“和のフルーツパーラー”と呼ばれるほどフルーツにも和菓子にも定評がある中で「青果堂」の店主が最初に発した言葉はとっても現代的で、挑戦的なものでした。
店主「僕らが『青果堂』を始めた時に、老舗のどら焼き屋さんから“こんなものはどら焼きじゃないね”って言われたら勝ちだと思っていたんです。従来の、どら型の中にあんこが入った和菓子という“型”を守るよりも、僕らができる方法でお客様が美味しいと言って受け入れられたら、それが僕らの勝ちだなと考えていました」
ここでしか食べられない、もち米と白玉粉を使用したどら生地は薄くてもちもち。そして初めて聞くブランドのフルーツに、美味しいだけでなく新しい発見があるのが「青果堂」らしさのひとつです。和菓子という古典的なスイーツに、現代の風を読み、取り入れることを大切にしているそう。
店主「僕らがやっていることって、伝統と技術の融合“リノベーション”なんですよね。元々日本人は、食において日本風にアレンジするのがとても上手い。例えば、抹茶を使った洋菓子はもう鉄板です。僕らは、このアレンジを時間という縦軸で行っているんです」
フルーツをどら生地で包み込むのではなく、あえて断面を露出させた見た目は洋菓子のような華やかさがあります。銀座という移り変わりの早い土地で色物ではなく多くの人に受け入れられ、常連客が付くのは見た目に勝る味とこだわりがあるからこそ。
肝となるフルーツ選びには一切の妥協がありません。その時の旬を一番美味しい状態で食べてもらいたいと選ぶフルーツは聞いたこともないブランド品種ばかり。取材時、どら焼きに使用されていた苺は熊本県産「ひのしずく」という品種だそう。
店主「『ひのしずく』はとっても甘いのが特徴です。中でも粒の大きなものを厳選しているので、どら焼きとして食べた時にも苺の個性をしっかり感じてもらえると思います。
フルーツの甘さを引き立たせるため、合わせるのは粒あん。きっと美味しすぎてほっぺたが落ちちゃいますよ。笑」
食べると、苺のみずみずしさにビックリ!噛むたびにあふれる甘さと水分に店主の警告通り危うくほっぺが落ちるところです。低糖の粒あんは苺のほのかな酸味を引き出し、生クリームが口の中の水分量を均一に整えてくれるので食べやすく、知らないうちに口の中は空っぽに。
生クリームが多ければショートケーキのような軽やかさを、あんこが多ければ苺大福のような食べ応えを感じます。ころころと変わるどら焼きの印象は鮮やかです!
※粒あんには有機JAS認定の北海道産オーガニック小豆を使用しています
合弁花をいっぱいに広げて春の訪れを喜ぶタンポポのように、どら生地の間で咲き誇る柑橘は、見ているだけでもワクワクします。
店主「今回仕入れたのは、静岡の『青島みかん』です。フルーツはちょっとした時期変化によって味が変わるので、同じブランドでも日々産地を変えています。微々たる味の変化ですが、和菓子に加工した時に感じる印象が全く異なるんです」
一粒一粒から溢れる果汁は光を跳ね返してキラキラと光ります。柑橘らしい爽やかな酸味は、白あんの甘みとバランスを取り合って、苺とはことなる若々しさのある味に。
北海道産の生クリームに黒糖を加えてまろみのある仕上がりにしたというクリームは、どら生地の風味と柑橘の酸味に均衡をもたせて、和菓子らしい後味に。
そして薄いどら生地は、余分な水分を含むことなく、もちもちとした食感を最後までキープ。
どんな席に出しても、無視できない美味しさは場の雰囲気を明るくしてくれそうです。
世界でも類を見ないほどの品種数と美味しいフルーツを育てる技術は世界に誇れる日本の技術のひとつです。しかし、年々増えるフルーツブランドから、和菓子に使用する種類を選ぶのは骨が折れるのでは?そんな疑問に答えてくれました。
店主「日々、農家さんが美味しいフルーツを作るために試行錯誤した結果、世界でもトップクラスの品質を保ち、さらに発展させています。しかし、スーパーで並ばないフルーツってなかなか口にする機会がないんですよね。
だからまずは、日本の皆さんに“世界に誇れるフルーツの味”を知っていただきたいと思っています。
ひと房1万円もするシャインマスカットなんてなかなか買えないけど、加工してご提供すればお値段も手ごろになります。さらに、“和菓子ってこんなに美味しんだ”と新しい発見に繋がれば嬉しいですね。やっぱり、お客さんから“美味しかった”と言われるのが何よりも嬉しいですから」
そう笑顔で話す店主は、ハツラツとしていて思い描いていた和菓子職人とは対極的な印象です。時代によって変化するお客さんの感覚に合わせて、時代に沿った美味しい和菓子を提供していきたいと考える「青果堂」はこれからもさまざまな挑戦を行っていくそう。
どら焼きの次は、どんなお菓子で楽しませてくれるのか。そのアイディアに期待大です!
About Shop
銀座 青果堂
東京都中央区銀座4丁目4−1
営業時間:11:00~21:00
定休日:なし
園果わたげ
ウフ。編集スタッフ
ufu.の新米編集者。メンズカルチャー誌でアシスタントを経験後ufu.に転身。 特技は甘いものを食べ続けること。最近は美術館内レストランの限定コラボスイーツにハマっている。
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