バタークリームで1枚1枚丁寧に花びらを絞り、まるで本物の花のように仕上げるフラワーケーキ。ケーキの上に可憐に咲き誇る花は、まさに芸術。このフラワーケーキが今、韓国を拠点として、日本でもじわじわと盛り上がってきているのをご存知ですか?
今回取材したのは、フラワーケーキデザイナーであり、講師でもある義山友紀さん。元CAでありながら、フラワーケーキに魅せられ現在の仕事に就いたという異色の経歴の持ち主。SNSでは積極的にフラワーケーキ作りの情報を発信中しています。今回はそんな友紀さんの半生を深堀しながら、フラワーケーキの魅力を教えてもらいました。
フラワーケーキ界で、レッスン講師やデザイナーとして活躍中の友紀さん。2018年にはIKAFCD(韓国国際フラワーケーキデザイナー協会)の日本代表講師に就任し、2019年には北海道・函館にフラワーケーキカフェ「Flower Picnic Cafe -Hakodate-」をOPEN。フラワーケーキレッスンや自身のブランドを通じて、フラワーケーキの魅力を伝えながら、着実にファンを増やしています。
「もともと新卒でCAをしていたのですが、これからの長い人生を考えた時に、もっと他にもたくさんの選択肢があるのではないかとモヤモヤして。そのあと、法律事務所やベンチャー企業…と職場を転々としていました。でも、自分に合う仕事がなかなか見つからず…。
そんな中、ストレス発散に趣味で始めたアイシングクッキーにドハマりしてしまって。あまりの熱中ぶりに、夫から『仕事にしたら?』と言われ、アイシングクッキーの講師を始めました」
「アイシングクッキーで生計を立て始めたころ、SNSで韓国スイーツを調べていたら、偶然フラワーケーキを見つけたんです。初めて見たときは、『なんだこの美しさは!?』と衝撃的でしたね。すぐに私も作りたい!と思って、本格的に学べる韓国へフラワーケーキのレッスンを受けに行きました。韓国でフラワーケーキは、習い事としても普及しているほど大人気で、最先端なんです。慣れない英語のレッスンで講師資格を得て、フラワーケーキの仕事を始めました。
もともと、スイーツというよりはものづくりが好きで。子どものころは手芸や塗り絵に夢中で、友達とビーズのアクセサリーを作って遊んでいました。やっと自分に合う仕事を見つけたという感じです」
友紀さんのフラワーケーキは、生花を忠実に再現した繊細さはもちろん、やわらかく可憐なカラーが特徴的。友紀さんの、芯が強いながらもふんわりと優しい雰囲気の人柄が、そのまま表れているよう。
「フラワーケーキはアートのようなもので、同じお手本をもとに作っても、人によって全然違うものができるんです。そういった個性や素直な気持ちを大切にすることも、フラワーケーキを通して伝えたいことのひとつです」
花の部分を全て手作業で仕上げるフラワーケーキは、もはやアート作品。講師もしている友紀さんに、実際にフラワーケーキ作りを実演してもらいました。
花の部分を作るのは、バタークリーム。ミキサーで材料を混ぜて作ったクリームに、色を混ぜていきます。ナチュラルな色合いにするために、色の配合は少しずつ微調整。濃すぎず薄すぎず、なるべく生花のようなグラデーションカラーに近づけるのがポイントなのだそう。
口金を取り付けて、フラワーネイルという土台の器具をくるくるとまわしながら、花びらを一枚一枚絞っていきます。みるみるうちに咲いていく、美しいお花。クリームの固さ、花弁の開き具合に角度。すべてを同時に意識しなければならない、かなり集中力が必要な作業です。
ものの数秒で、パッと咲いた一輪の薔薇。慣れた手つきでここまで作れるようになるまで、「1000個以上は絞りましたね」と友紀さん。「作っているときは、工作や手芸をしているような、童心に帰る気持ち。花ができた時の『できた!』という達成感も好きですね」
フラワーリフターという専用のハサミで花を摘み取り、そっとケーキに載せていきます。大きな花をのせて、隙間に小さな花、葉やつぼみ、ベリーなどを添えて完成。小さく可憐な、まるでブーケのようなカップケーキに、乙女心がくすぐられます。
「フラワーケーキのデザインは、花屋さんに並んでいる花や近所の道端の花、フラワーアーティストのアレンジメント…とにかく本物の花を参考に研究しています」と友紀さん。
「難しいのは、いかに生花っぽくナチュラルに仕上げるか。同じお花でも、花弁1枚1枚の大きさも皺も違いますよね。これを再現するために、あえてランダムに花弁を絞り、リアル感を演出しています。
配色もすごく難しい。大きな配色はきちんと決めてから作りますが、実際に載せてみるとイメージと全然違うものが出来上がったりして。『Flower Picnic Cafe』の商品や、レッスン用のサンプルなんかは、何度も試行錯誤してつくっています」
そんな友紀さんのフラワーケーキのデザインは、実は昨年2022年末、とあるスイーツブランドに盗作されていたことが発覚。レッスンの生徒さんがデザインの酷似を見つけて教えてくれ、Twitterでその事実を呟いたといいます。
「これだけ何度も作り直して考え抜いたフラワーケーキのデザインを、そっくりそのまま真似されていて。それで先方が利益を得ていたことが、とても悲しかったです。もっと悲しかったのは、商品ではなくレッスンのサンプル用に作ったデザインだったこと。
サンプルは、生徒さん、つまり作り手の個性を殺さないために、あえて様々な配色や技法を使ったフラワーケーキを作るんです。それを写真のままに、そのまま真似されては、わたしが大事にしているフラワーケーキの魅力である『個性』がなくなってしまいます」
「あえてTwitterで呟いたのは、『もしこの事実が許される世の中なら、もう物作りの仕事をしたくない』と思ったからです。それくらいの覚悟でした。批判や中傷が来るのではないかととても怖かったけど、予想以上に賛同してくださる方も多くて救われました。今は先方からの謝罪もあり、話し合いも進んでいます」。
講師としてフラワーケーキレッスンを行ったり、実店舗や自身のブランドでフラワーケーキを届けるだけでなく、InstagramやTikTokを始めとしたSNSでも、積極的にフラワーケーキを発信する友紀さん。
「フラワーケーキをもっとたくさんの人に届けて、見た人がとにかく楽しく幸せな気持ちになってほしいと思っています。そんな想いで今後も作り続けていきます。
また、今は大人の女性の習い事としてのイメージが強いですが、男性や、今まで来なかった層の方にもチャレンジしてもらいたいですね。そういった企画に今後は取り組んでいこうかと思っています」
見ているだけで心ときめく、可憐なフラワーケーキ。そこには、作り手の長年の研究と、個性と想いがぎゅっと詰まっていました。韓国から日本へと、今じわじわと人気が高まっているスイーツ、今後も要チェックです。
<「Flower Picnic Cafe Hakodate」POPUP 出店情報>
※公式オンラインショップにて購入も可能。
【3月】
・グランスタ東京
(3月15日(水)~26日(日))
・エキュート上野
(3月27日(月)~4月9日(日))
【4月】
・名古屋松坂屋店
(4月13日(木)~19日(水))
【5月】
・東京スカイツリー
・アトレ吉祥寺
(5月1日(月)~14日(日))
・エキュート東京
(5月8日(月)~14日(日))
・日本橋三越本店
・高島屋横浜店
・西武池袋本店
・グランデュオ立川
(5月10日(水)~16日(火))
・東武池袋本店
(5月11日(木)~17日(水))
・渋谷スクランブルスクエア
(5月11日(木)~24日(水))
About Shop
Flower Picnic Cafe Hakodate
北海道函館市元町7-9
営業時間:10:00~18:00
定休日:なし
@flowerpicnic_cafe
Photo/Cream Taro Writing/Nanako Maeda
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