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光と色彩が織りなす輝かしきフルーツの世界。「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」(中央林間)の江森シェフが作る素材を活かした究極のガトー3種

光と色彩が織りなす輝かしきフルーツの世界。「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」(中央林間)の江森シェフが作る素材を活かした究極のガトー3種

ここ近年、夏だけでなく一年行事を通して好まれるようになったアイスケーキ。皆さんの中でも食べたことがある人は多いのではないでしょうか。色鮮やかさはもちろん、長期保存のきくケーキは大人だけでなく、家族単位で楽しめる極上スイーツ。

光と色彩が織りなす輝かしきフルーツの世界。「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」(中央林間)の江森シェフが作る素材を活かした究極のガトー3種

今回は、そんなアイスケーキを日本で常識化した、まさにアイスケーキのパイオニア、江森シェフを取材した第二弾。2017年にオープンして以来注目を浴び続ける名店「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」について伺いました。前回の記事では、零下の世界が織りなす魅惑の味を徹底解説。そして後編となる今回は、同店ならではのフルーツの世界に焦点を置きます。

「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」ならではのフレッシュな食材をふんだんに使用したスイーツは、生きている間に一度は堪能したいところ。そんな「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」で絶対に外せないスペシャルなガトーを紹介します。

パティシエとシェフグラシエを股に掛ける江森シェフだから気づく、構築できる。無駄のない「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」の加工技に驚愕

いまや日本のアイスケーキ界の第一人者となった江森シェフは元々、フランス国家最優秀職人章MOFを獲得したフランス「Pâtisserie FRESSON(パティスリー フレッソン)」のフランクフレッソン氏の師弟として修業時代を積みました。帰国後には横浜の名店「ベルグの4月」にてシェフパティシエを経験。アイスを専門に扱う菓子職人シェフグラシエとしてはもちろん、パティシエとしての経歴もまた世代を担うほどのものです。

アイス好きのためのパティスリー「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」(中央林間)。日本を代表する冷菓子のパイオニア江森シェフが語るアイスケーキの世界とは

そんな江森シェフによってオープンした「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」は、日本ではかつてないアイスと洋菓子の良いところを引き出すことに成功した、まさにハイブリットなパティスリー。シーズンごとに入れ替わるスイーツはどれも、素材の良さを最大限に活かすため生菓子、ジャム、焼き菓子、ジェラートと姿かたちを変えて、私たちを楽しませてくれます。

アイス好きのためのパティスリー「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」(中央林間)。日本を代表する冷菓子のパイオニア江森シェフが語るアイスケーキの世界とは

江森シェフ「うちはフルーツに留まらず青果全般を使用しています。その時に一番魅力的な素材を選んでいるので、ショーケースに並ぶスーツのラインナップが同じになることはありません。産地から仕入れた青果を見て最適な加工をしていくわけですが、どれも大切なのは鮮度。生菓子では、できるだけダイレクトに素材を味わってもらうため大き目にカットします。形の整っていないものはジャムや焼き菓子、ジェラートに。

生菓子だけに縛られない加工で、フレッシュがだめでも糖度や食感で差をつけることで素材本来の全く異なる美味しさを引き出すことができますから。「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」の良さは、こうした素材に合った出口を幅広く持っていることだと思います」

20種類以上のスイーツが並ぶ「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」ではときに同じ青果が使われています。しかし、その見た目やフルーツに抱く印象は千差万別。生菓子を最初の出口に、加工段階を増やすことで青果を無駄にせず、また食べる人の想像力を触発させます。

黒イチジクを使った“秋のフレジエ”。実りの季節を思わせる見た目と完熟感のある味わいに確信する“これが正解”

アイス好きのためのパティスリー「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」(中央林間)。日本を代表する冷菓子のパイオニア江森シェフが語るアイスケーキの世界とは

しかし、アイスからガトーまで、選択肢が広がればどのように加工するか迷ってしまいそうなもの。江森シェフは一体どのように青果の活かし方を極めたのでしょうか。

江森シェフ「それは生で食べた時のインスピレーションと色合い、食感ですね。

経験から直感的に判断しますが、中には生で食べるのに向いていなくても焼くことで美味しさを増すことがあります。クッキングアップルがその良い例。青果にはそれぞれ特徴があるので、秀でているところをいかに魅力的にさせるかが僕の腕の見せ所だと思っています。

シーズンごとに異なる素材でフレジエを出している理由も、自分なりの素材への敬意の現れです」

光と色彩が織りなす輝かしきフルーツの世界。「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」(中央林間)の江森シェフが作る素材を活かした究極のガトー3種

取材時のフレジエはなんと黒イチジクを使った「フィグビオレ」。ミステリアスな印象の一品です。普通のイチジクよりも濃厚で、完熟すると真ん中に蜜をためる性質を持つ黒イチジク。なめらかな断面の上で、たくさんの花弁を付けたバラのように美しく咲き誇っています。

江森シェフ「イチジクはドライにすると黒糖のようなコクが出ます。そこで、一度産地を訪れた喜界島の黒糖を使い深みを。くどくなりすぎないように山ブドウで酸味を加えました」

光と色彩が織りなす輝かしきフルーツの世界。「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」(中央林間)の江森シェフが作る素材を活かした究極のガトー3種

カスタードのムースリーヌは黒糖を混ぜたとは思えない明度の高さを保ち、イチジクと山ブドウの色が美しく浮かび上がります。そしてガトー全体から広がる花の蜜のような香り。ひと口食べるとカラメルのような芳ばしさと、溶けるような黒イチジクの甘さが惜みなく口の中を満たします。そのシーズンの代表としてフルーツで作られる「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」のフレジエ。秋の実りを思わせる味や見た目に“秋のフレジエの正解”はこれしかないと確信します。

秋スイーツの王道はなんと変化球で攻める。大人気、メレンゲを主役にした木の実のようなモンブラン

光と色彩が織りなす輝かしきフルーツの世界。「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」(中央林間)の江森シェフが作る素材を活かした究極のガトー3種

もうひとつ、秋の味覚で忘れてはいけないのがモンブランです。しかし他とは一味違うのが「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」流。なんと、主役は栗ではなくメレンゲなんだそう。

江森シェフ「うちではモンブランと一概に言っても3種類以上あります。その中でも人気なのがこれ。元々メレンゲ菓子に対するお客様の評価が高く“メレンゲだけで食べたい”というお声から出来上がりました。ブロンドチョコレートでコーティングしたメレンゲはしけりづらくサクサク感が続きます」

光と色彩が織りなす輝かしきフルーツの世界。「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」(中央林間)の江森シェフが作る素材を活かした究極のガトー3種

真ん中には口当たりの軽い生クリームが挟まれ、後味にはしっかりとマロンの風味を感じます。マカダミアナッツの食感と芳ばしくもオイリーな後味。全体的に軽いケーキを手堅く印象付けています。羽が生えたように軽い食感と、濃厚な和栗のコラボレーションにフォークを動かす手が止まりません。

称えたくなる美しさ。贅沢の極みをゆく「シャインマスカットのタルト」は秘めたフルーツの魅力を開花させる

光と色彩が織りなす輝かしきフルーツの世界。「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」(中央林間)の江森シェフが作る素材を活かした究極のガトー3種

「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」に訪れると、大きなショーケースの中は色鉛筆のパレットのように多種多様なカラーで埋め尽くされています。中でも目を引いたのがショーケースの中心に鎮座した今期のタルト。果汁によって光り輝いたシャインマスカットの断面は美しく、宝石を乗せたかのようです。

江森シェフ「フルーツの良さを活かすため食感をすごく大切にしています。食材をダイレクトに味わってもらえるような大きさにわざとカットしているんです。シャインマスカットの切りかたも、薄くスライスなんてせずにそれが何か一目でわかることを意識し、あとはパティシエとして食材の持ち味を引き出すのみ。

光と色彩が織りなす輝かしきフルーツの世界。「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」(中央林間)の江森シェフが作る素材を活かした究極のガトー3種

今回の「シャインマスカットのタルト」では相性の良いレモンのママレードを使用。生地に塗って酸味と爽やかさを合わせました。シャインマスカットは岡山県の今野農園さんのもの。それ以外にも山梨県や山形県のものを使わせていただくこともあります」

食べると驚くほど瑞々しいシャインマスカット。周りの皮が気になることもありません。軽く仕立てたムースリーヌは主張しすぎず、レモン風味の生地とともにシャインマスカットの引き立て役に回ります。サクサクとしたタルト生地を孤立させない、ムースリーヌの存在。

食べきった後には、シャインマスカットをひと房食べたかのような満足感に満たされます。

お店の雰囲気を持ち帰りたい!いつ来てもワクワクが止まらない「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」で新しいフルーツとの出会いを楽しもう

アイス好きのためのパティスリー「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」(中央林間)。日本を代表する冷菓子のパイオニア江森シェフが語るアイスケーキの世界とは

「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」の店内はいつも鮮やかで、装飾やショーケースからは季節感を感じます。聞くと装飾に使用されるぶどうは本物を使用していたり、ショーケース内の色が偏らないよう商品のラインナップを意識しているそう。

江森シェフ「お店に来てくれた方々には、華やかでワクワクするような体験をしていただきたいと考えています。そのためにもいろいろな工夫をしていて、本物のぶどうを飾りに使用するのもそう。だから新しいスイーツを考えるときもまず視覚的な“色”から入ることが圧倒的に多いです。それから食材、日々ストックしているデザインを組み合わせて1つのスイーツを作ります」

アイス好きのためのパティスリー「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」(中央林間)。日本を代表する冷菓子のパイオニア江森シェフが語るアイスケーキの世界とは

お客さんにとって魅力的なものとは何かという視点で常に考える江森シェフ。ときに、きのこや松茸、トウモロコシを使用したスイーツや、コーヒー豆を味わうために作られた8種類以上にもなるコーヒーゼリーなど、珍しい挑戦を打ち出し、私たちを驚かせてくれます。

食材を徹底的に理解し活かそうとする興味心と、圧倒的な経験から生まれる「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」の魅惑のスイーツを、皆さんもぜひ味わってみてはいかがでしょうか。

About Shop
MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)
神奈川県大和市中央林間4丁目27−18
営業時間:10:30~19:00
定休日:月、火

園果わたげさん

園果わたげ

ウフ。編集スタッフ

メンバーの記事一覧

ufu.の新米編集者。メンズカルチャー誌でアシスタントを経験後ufu.に転身。 特技は甘いものを食べ続けること。最近は美術館内レストランの限定コラボスイーツにハマっている。

Photo/Tomohiro Takeshita Writing/Sonoka Watage