ufu(ウフ)スイーツがないと始まらない。
グラスの中に、美しい絵を描くまで。神通佑輔の歩み「デザートカフェ ハチドリ」(逗子)連載:パティシエとして、生きるには vol.03

グラスの中に、美しい絵を描くまで。神通佑輔の歩み「デザートカフェ ハチドリ」(逗子)連載:パティシエとして、生きるには vol.03

前回の記事で、上野毛「ラトリエ ア マ ファソン」の森郁磨シェフからタスキを受け取ったのは、同じくパフェの名店「デザートカフェ ハチドリ」神通佑輔シェフ。シェフの地元でもある鎌倉の近く、逗子に店を構え、まるで画に描いたようなパフェが多くの人を魅了してきました。今までその美しいグラスの中のデザートへ注目が集まっていましたが、今回は神通シェフの歩みやグラスの中へ込めた想いとそのインスピレーションを深堀り。今まで知られていなかった神通シェフの素顔をお届けしていきます。

農業経験から始まった「食」の道。誰よりも好きだったお菓子づくり

グラスの中に、美しい絵を描くまで。神通佑輔の歩み「デザートカフェ ハチドリ」(逗子)連載:パティシエとして、生きるには vol.03

Q.パフェの世界はもちろんですが、神通シェフが「食」の世界へ足を踏み入れられたきっかけを教えてください。

神通シェフ「山形の大学に進学し、農業に興味があったのでアルバイトでは飲食ではなく農業をやっていました。趣味で、ケーキを作っていたこともあり、大学を卒業後は農業系でもなく、ケーキ屋に就職。料理の道も考えたこともあったのですが、魚があんまり好きじゃないし、好き嫌いが結構激しかったので、料理ではなくスイーツの世界へ足を踏み入れました。」

グラスの中に、美しい絵を描くまで。神通佑輔の歩み「デザートカフェ ハチドリ」(逗子)連載:パティシエとして、生きるには vol.03

「就職するときは調理師学校も行っていないので、一からお菓子作りを学び始めることからのスタートでした。ケーキ屋さんも、地元鎌倉のお店へ就職。まずは5年半そこで基礎を学び続ける日々でした。その後は、出来立てのものを食べてもらえる“デザート”に興味があって、都内のレストランに就職しました。ウェディングレストランみたいなところで働いたり、イタリアンのコース料理のデザートをやっていた時期もありましたね。

雑誌の表紙で見て衝撃を受けた「Cafe 中野屋」のパフェ

グラスの中に、美しい絵を描くまで。神通佑輔の歩み「デザートカフェ ハチドリ」(逗子)連載:パティシエとして、生きるには vol.03

Q.その後の、今のお店を開くまでの経緯やきっかけを教えてください。

神通シェフ「レストランで学んだことを、再びケーキ屋で活かしたいなと思ってまたケーキ屋に戻ったんです。そしてその時に知ったのが、現ラトリエアマファソンの森さんが当時やられていた『Cafe 中野屋』。雑誌で見た時に、衝撃を受けました。

まずパフェってフルーツとクリーム、アイスのイメージだったのが「Cafe 中野屋」のパフェは、もはやフランス料理の域に入っていて。食の最先端がパフェになっている、そんな感動とそこに可能性を感じたのがきっかけでした。

またパフェに使うグラスも、一般的に“真ん丸なアレ”を思い浮かべていたのに、森さんは色々な形状のものを使っていて、そこには突出したデザイン性があり、とても惹かれました。日常生活で見て、聞いて、感じるあらゆるものをパフェと結び付けているのが、僕の中で大きなヒントともなりましたね。」

見た風景、脳裏に浮かんだ情景がテーマの一つに

グラスの中に、美しい絵を描くまで。神通佑輔の歩み「デザートカフェ ハチドリ」(逗子)連載:パティシエとして、生きるには vol.03

Q.神通シェフのパフェは、どのようにその構成やテーマ設定を考えているのでしょうか?

神通シェフ「グラスはパフェにおいてとても重要だと思っていて、理想はパフェに合うグラスでやれたらいいけれど、やっぱりグラスの形状によって、味の感じ方がまったく変わってしまうので、その点すごく気をつけて考えています。グラスの形状によって、最後のほうでせまくなっていくか、広くなっていくかで味のコントラストがまず違うのと、素材の混ざり方が違います。

テーマの設定もすごく大事で、フルーツを主役にするものもありますし、見た目重視することもグラスとして一つのテーマでまとまりがあります。題名をつけたときに、しっくりくるかどうかということも大事にしています。見た風景だったり、脳裏に浮かんだ情景がテーマの一つになりえます。」

無意識の発見が、そのままパフェになる

グラスの中に、美しい絵を描くまで。神通佑輔の歩み「デザートカフェ ハチドリ」(逗子)連載:パティシエとして、生きるには vol.03

「上から下まであきないようなパフェを作ろうとしていますが、食べたときに、“こんな味食べたことないけど美味しかった”という意外性や面白さを追求しています。ずっとスイーツの仕事をしているので、美味しいのは当たり前だし、自分で美味しいというものを出したいです。」

Q.先ほど見た風景、情景がテーマになると伺いましたが、常にメモを取ったり、休日にどこかへ行かれるのでしょうか?

神通シェフ「それもあるのですが、ひらめくときはそうではない時が多いんです。日々こんなものを作ろうと考えることもありますが、“そこ”から外れて行動したときに、そのことについて無意識に検索しつづけていて、ふとした瞬間にまったく関係ないものと出会った瞬間に、発想が結びついて一つのテーマやアイデアが思いつくことがあるんですよ。ひらめきとは、そんなものです。

はかなく美しい、それが食べるアートとしてのパフェ

グラスの中に、美しい絵を描くまで。神通佑輔の歩み「デザートカフェ ハチドリ」(逗子)連載:パティシエとして、生きるには vol.03

Q.神通シェフにとって、パフェとは何ですか?

神通シェフ「そうですね、うーん。

食べられるアート

ですかね? アートっていうと見た目もそうだし、五感全部で感じるもの。食べたらなくなっちゃうという、はかなさも含めてアート作品でもあると思うんです。それを食べて、趣味として楽しんでもらえたら作り手としてはすごく嬉しいし、満足感も高いです。

僕にとっての今後の目標は、変わらずパフェを作り続けることです。今あるものというよりは、今ないものに興味があるにで、その観点で作りづづけていきたいですね。」

次回、神通シェフが指名したのは鎌倉にOPENしたばかりの「Régalez-Vous」パリから帰ってきた佐藤亮太郎さん

神通シェフ「フランスから帰ってきた、本場のデザートが鎌倉にやってきた。地元の鎌倉ということもあって、すごく嬉しかったんです。佐藤シェフとは面識はありませんが、オープン後は早速お店へ足も運びました。空間もいいし、デザートもいいし。この鎌倉の地で、カウンターでデザートを食べられるってとても素晴らしいこと。やはり出来立てのデザートに、面白さや可能性があると思っています。とくにフランスで経験を積まれた佐藤シェフのお話は、ぜひ伺ってみたいものです。」

About Shop
デザートカフェ ハチドリ
神奈川県逗子市逗子5丁目5−10(MAP)
営業時間:11:00~17:00
定休日:Instagramにてご確認ください。

Photo/Tadaaki Omori Writing/Cream Taro