チョコレートが好きな人なら、誰もが知り、ショコラティエのが多くの人が尊敬する水野直己シェフ。2007年のパリで行われた世界的権威のあるチョコレートのコンクール「ワールドチョコレートマスターズ」で優勝し、その後は京都府・福知山でお父様のお店「洋菓子マウンテン」を継がれました。チョコレート好きだけではなく洋菓子好きであれば一度は足を踏み入れたい場所です。
実はこの「洋菓子マウンテン」、数多くの災難を乗り越えて今に至ります。今回は「洋菓子マウンテン」の魅力だけではなく、その歴史と歩みを水野シェフとともにお届けしていきます。
京都府の北西部にある福知山市。自然にあふれ、閑静な住宅街もありながら買い物ができる施設も充実しています。京都からは電車で1時半程度。車で行く場合も高速道路を使い、同程度の時間がかかります。今回は車で訪れました。音無瀬橋を渡り「ここにお店があるのだろうか?」と思いきや、素敵な外観のお店「洋菓子マウンテン」が目の前に。
まるでお城のように大きなお店。駐車スペースも多く、開店直後は続々とお菓子を買い求めるお客さんが来ます。1階は販売スペースと、テラスのイートインスペース、2階も広々としたイートインスペースになっており、車で来てケーキを食べに来るお客さんも取材中にたくさんお見かけしました。
さて、いよいよ中へ潜入です。水野シェフのスペシャリテとして「杏と塩」のチョコレートが有名ですが、この洋菓子マウンテンでは、お店に入るとまず目に入るケーキのショーケースに圧倒されます。
価格も、京都府の中心地にあるパティスリーとは比べられないほど低価格で「街のお菓子屋さん」。それでいて水野シェフが手掛ける圧倒的なビジュアルのケーキと、素材の美味しさを存分に引き出したその味のクオリティに、可能であれば毎週通いたくなるほどです。チーズケーキやシュークリームといった洋菓子屋さんらしいラインナップを含め、10を余裕で超える種類の多さ。
その中でも福知山の地元の人にも長く愛されているチーズケーキは、製法もこだわり抜かれ、このお店の人気商品です。
店内は、他にも焼き菓子やギフト用のBOX等もズラリ。トンカ豆×キャラメルフレーバーの焼き菓子からカカオポッドの形をした焼き菓子まで、チョコレート好きにはたまらないラインナップです。
続いては、洋菓子マウンテンに併設されているブティック“セラー・ド・ショコラ”。内観の雰囲気もガラッと変わり、ズラッと並ぶチョコレートの数々。
世界大会で優勝したチョコレートを販売用にリメイクした名作の「杏と塩」や青いチョコレート「アンジェ」、そしてここでしか食べられないボンボンショコラも。
ここでしかなかなか買うことのできない、マカロンもかなりの種類が並びます。また2021年のサロン・デュ・ショコラで販売されていたフォンダンショコラも!お店を案内いただきながら、それぞれの商品を熱心に紹介してくださる水野シェフ。
水野シェフに、なぜブティックとお店を分けたか伺うと……。
水野シェフ「洋菓子マウンテンは、生菓子・焼き菓子部門の店です。このブティックは僕の趣味なんですよ。あえて、違う方向にしています。このブティックがあることで、やりたいことを実現できるんです。
チョコレートの世界って趣味の世界です。“最先端を追う”とかは正直言うと、そんなに大事ではないことで“作りたいものを作りたい”。
新しいお客さんを増やそう!とかではなく、今までのお客さんが喜んでくれたら十分です。うちのチョコ、お菓子が好きな人を大切にしたいと思っています。」
チョコレートへの熱い想いと考えを聞かせてくださった水野シェフ。とっても居心地のいいこのお店も、幾度と度重なる天災に見舞われて、順風満帆のスタートではありませんでした。
この洋菓子マウンテンは、もともと1978年は京都府福知山市南本町に初代水野亘さんによりオープンされました。その後、フランスでの前述の大会で優勝した水野シェフがお店を継ぎ、2016年7月より現在の店舗にて営業を再開するに至ります。そのお店の再開までの道のりは、災難続きだったと水野シェフは語ります。
原因となったのは、「豪雨」。平成25年9月台風18号豪雨を受け、被災。再開を目指し立て直しを図るも、リスタート目前の平成26年8月の豪雨では、更なる被災により休業を余儀なくされてしまいます。
水野シェフ「大会を優勝したあとに、どこかで自分のブランドを開くのではなく、自分の出身地である福知山で、この土地の人たちと、お菓子も一緒に歳をとりたいという気持ちがありました。ただ台風の影響もあり、仮店舗での営業、新規店舗準備も合わせると、大変長きに渡りました。
親父とおふくろと、妻と4人でお店をやって。少しずつお客さんが増えてきて、スタッフも増えていって……そんな時の水害だったので、とてもこたえました。1回の水害で4カ月は店をしめましたね。1年以上お店をもたずに通販でやっている時期もありました。
そんな辛い時期でも。応援してもらっている感覚がありました。これから先何か起こっても、お店にかつてないほどの投資をしていても、お客さんは絶対来てくれて支えてくれると思っていました。」
2016年から再興以来、地元の人はもちろん全国からも愛されるお店に。水野シェフの人柄にも圧倒されました。取材させていただいたテラス席は、のどかで時間の経過もすごくゆっくりと流れていく。そこでいただいたチョコレートも、ケーキもひと際美味しく、お菓子の持つ魅力の取りつかれるほど。洋菓子マウンテンの世界を、ぜひ体感してみてください。次回は、そんな洋菓子マウンテンで食べられるケーキを、シェフ自ら解説いただきます。お楽しみに。
About Shop
洋菓子マウンテン
京都府福知山市猪崎小字山本322
営業時間:11:00~18:00
定休日:水曜日・不定休
クリーム太朗
ウフ。編集長
編集責任者。ショートケーキ研究家として、日本全国のケーキを食べ比べる。自身でも、ケーキやチョコレートの製造・販売を目指すべく、知識だけではなく実技も鍛錬中
Photo&Writing/Cream Taro
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