チョコレート好きにとってたまらない「サロン・デュ・ショコラ2022」。前回の記事では、バイヤーの真野さんに見どころやテーマ、そしてその想いについて語っていただきました。今回は、真野さんに「バイヤー」という仕事の裏側と、その魅力、裏方と徹するそのポリシーと仕事の流儀を徹底取材。今回も、人気ヘアメイクアップアーティストで無類のチョコ好きの夢月さんが取材にのぞみます。他のメディアでは聞けない、今回限りのお話をこっそり聞かせていただきました。超一流のショコラティエとの裏話も。ぜひご覧ください。
1995年にフランス・パリで誕生して世界中から一流ショコラティエやブランド、最高級のチョコレートが集まる、世界最大級のチョコレートの祭典で、本場のパリでは毎年10月下旬~11月上旬に開催されています。日本での始まりは、さかのぼること2003年1月。伊勢丹新宿店の本館6階催物場からスタートし、東京新宿をはじめとする三越伊勢丹グループ各店にて毎年開催され、次回2022年1月開催でついに20回目を迎えます。
夢月さん「世界中を渡り歩き、関係性を気づき、日本に持ってくるという仕事は想像もできない部分もあります。真野さんにとって『バイヤー』という仕事の魅力と、これまでの印象深いエピソード、思い出深い話があればぜひ教えてください。」
真野さん「バイヤーの魅力、まずは食のプロである彼らに話を聞いてもらえる。そういう人と接点を持てる、そういうところが自分自身にとって、いい刺激になります。それが最大の魅力であり、そういう人たちとモノづくりのキャッチボールができるというのは、メチャクチャ楽しいですね。
一方で、楽しい部分だけではなく、プロとプロ同士の交渉となると、結構シビアな部分もあります。僕がバイヤーになって最初の年に、大好きなクリスチャン・カンプリニさんに会いに行った時のことが、いまだに忘れられませんね(笑)。
オーダー、発注数量のところで1時間ぐらいにらみ合いじゃないですけれど、タフな交渉があったんですよ、お互いビジネスですからね。それがまたヴァルボンヌという、カンプリニさんのお店がある小さな村の素敵なカフェで、中央広場の美しいテラス席でした。そんな場所でずっとにらみ合いが続いて、もう何を食べたかも覚えていないぐらい。
ふと気づくと、同行しているメンバーも気配を消していて(笑)。僕とカンプリニさんの1対1の感じになっていたんですが、それって悪いということじゃなくて、バイヤーという仕事では絶対あることなんです。みんなが熱心で、そういう話をしてくるので。」
真野さん「バイヤーをしていて、僕たちの仕事は新しい人を見つけてくることだけではないんです。ショコラティエの中に、すごくいいエッセンス、いいストーリーを持っているのに、日本の市場を意識したクリエイションに反映していない方々も。とくに初めて出展し、そもそも日本に行ったこともない方もいます。そういう方々たちと話をして、商品をアジャストしていく。それもバイヤーの仕事なんです。そして、お客様にその商品のよさが伝わったなと思う時は、凄く嬉しいんですよね。
またショコラティエさんの売上や数字も、実力の数字なのか、ポテンシャルが発揮できていないでこの数字なのか、ということも結構あります。『このブランドはもういいんじゃない?』という話があったけれど、実際にそのショコラティエ本人に会って話すと、こちら側がその人の良さを引き出せていなかったということもありました。バイヤーって、そういうところも技量として必要とされると思っています。」
夢月さん「そうなんですね! ちなみに、今まであったショコラティエさんで凄いなと思った人はいますか?
真野さん「フィリップ・ベルさんは、来日するとほぼ毎日。朝からずっとブースにいたんですよ。全部自分の目で、日本のお客様のことを見ている。日本の事をしっかり理解してくれているんですよね。
日本のお客さんを!とすごく想ってくれているので、モノづくりするときに上手いバランスで表現してくれるんです。」
夢月さん「新しく声をかけるブランド、ショコラティエの方々とはどのように接して関係を構築していくのが真野さん流でしょうか?」
真野さん「それは、絶対会いにいくことです。今の時代は、メールもSNSもなんでもある。そういったツールを通じてバイヤーの○○です、と連絡することなんてとっても簡単にできるんだけれど、僕はそれができない。自分だったら嫌だと思っちゃうんですよ。メールで何かをいきなりお願いされるとかね。必ず会いに行って、こういうことをやりたいと自分の口で伝えることを大事にしています。
その伝えていくプロセスによって、合う・合わないという反応も行くことによってわかるんですよね。」
夢月さん「数々の新しいシェフやブランド含め、今回のサロン・デュ・ショコラ2022で誘致するうえで大変だったことやコロナ禍だからこそ印象的だったエピソードがあれば教えてください。」
真野さん「大変というか、やっぱり何よりも現地に行けない、出張にいけないのがつらかったです。
僕自身の座右の銘は、“百聞は一見に如かず”です。
百聞くよりも、一見たほうが、我々の仕事って次につながるんです。そういうところがある仕事なんです。現地で、その場で見られる、直接話せるというのがいいところなんだけれど、このコロナ禍で会いに行けないということは、我々だけじゃなく、作り手にとってもストレスだったと思います。
今までだったら行って、サンプルを出してくれて、食べてこれこうだったよね?とか話していくうちに、『実はこういうものもあるよ』と奥からやる予定ないもの出てきたり、そこで『これいいじゃないですか!』となって商品となることもあって、その場だからこそ起こる化学反応がすごく楽しかった。でもそれが、今起こせないということがすごく難しかった。どうやって感動を生み出せるのか。
オンラインでのミーティングとなると、時差もあるし、その時間をみんなで合わせるってうまくいかなかったりするんですよ。
夢月さん「そんな中でも、よかったこともありましたか?」
真野さん「昔は、オンラインということもなかったので、そういう意味では新しいコミュニケーションの取り方としては、良い部分もありました。例えば、ミーティング中にパソコンを持って、厨房に行って今コンフィしているんだと見せてくれたり、これはこれで新しく心が躍る場面もありましたね。」
夢月さん「バイヤーの仕事って、やはりたくさんチョコレートを食べるんでしょうか?」
真野さん「はい。全部食べます。商談するときは、事前にサンプルをたくさん送ってもらって、ある程度事前に食べこんで商談に入るんですよ。
出張のときは特に食べます。鬼のように(笑)。ショコラティエさんと話していると、『食ってみ』と言われて、食べない以外の選択肢がないので食べますね。
移動が多いときは1日2件とかだけど、1日4件行くときもありました。その日は、チョコしか食べていないので、すっごくきついですね(笑)。」
夢月さん「最後に、真野さんはどんなチョコレートが好きですか?」
真野さん「キャラクターが、想像できる。そういうチョコレートを作っている人が好きですね。そこにはチョコレートに個性がしっかり出ているし、僕らの仕事って食べたことないものをお客様に買ってもらわなきゃいけない。食べる前に美味しいって思える要素があふれているチョコレートを探さなければいけないし、提供していかなければいけない。
“美味しい”の文脈だけじゃなくて、どんな人がどんな想いで、どんなストーリーで作っていったか、それを知って食べるとハッピーになれるし、もっと世界が広がる、世界とつながると思っています。そういったストーリーが好きだし、そういうものを提供していきたいですね。」
【サロン・デュ・ショコラ2022 会期情報】
Part2:一般会期: 2022年1月28日(金)~2月3日(木)7日間 各日午前10時~午後8時
※最終日午後6時終了
混雑が予想される日時は、入場整理券(無料)が必要となります。詳しくは公式サイトで最新情報をご確認ください。
クリーム太朗
ウフ。編集長
編集責任者。ショートケーキ研究家として、日本全国のケーキを食べ比べる。自身でも、ケーキやチョコレートの製造・販売を目指すべく、知識だけではなく実技も鍛錬中
Photo/Sachi Kataoka Writing/Cream Taro
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