イタリアで開催された製菓の世界大会「The World Trophy of Pastry Ice Cream And Chocolate FIPGC 2019」にチームキャプテン ショコラ担当として出場し、世界一の座を獲得した瀧島誠士シェフ。2021年、自身のチョコレートブランド「Seiste(セイスト)」を立ち上げ、洋菓子界では有名に。催事でも引っ張りだこの瀧島シェフが奏でる、魔法のようなチョコレートづくりを今回取材させれいただきました。チョコレートを愛する人へ、瀧島ワールドをぜひご覧ください。
瀧島シェフが作り出す、ボンボンショコラはどれも一つ一つ説明すれば、長くなってしまうぐらい、食材の産地選びはもちろん、製法に関しては「こだわる」という浅い表現では追いつかないぐらいの、迫力を持った強い意志があります。
Q.もともと料理の道からキャリアを始めた瀧島シェフは、チョコづくりをするときに何を考えていらっしゃるのでしょうか?
瀧島さん:「よく、フートペアリングという言葉がありますよね。一般的に食材と食材の相性を考えることですが、それってもちろん美味しいのは美味しいのですが、ある意味“すごい狭い食べ方”であり、“狭い経験”だと思うんです。そこで、素材が際立っているものを、五味を活かして素材のポテンシャルを最大限に引き出すのが僕のスタイルです。」
「僕はもともと料理人ということもあり、そもそもの食への考え方がパティシエとは違うのかもしれません。例えば、カカオハスク(カカオの皮)で煮だして作ったカカオティーでゼリーを作ったり、洋菓子ではあまり使われないリコリスという植物を使ったりもします。」
「とあるときに、メープルを使った洋菓子を試作していて、もっとメープル感だせないかなと思ったときに、メープルの木そのものを使いました。メープルシロップの良さを活かすなら、木にあったときの状態にすればいいんじゃない?というのが発想のもとでした(笑)。」
他のパティシエさんからしたら“ありえない”と思うようなことを、いっぱいやっています。」
「僕自身、くせのある味が好きでそれって悪い意味ではなく、“また食べたい”と思わせる味のことなんです。素材の持つ良さを、最大限活かしたいし、そのために360度色々な角度で見て、食材への挑戦をしています。その時に、もっとも大事なのは“食べた人が美味しいか美味しくないか”が問題で、作り手のエゴは押しつけたくありません。
たとえば、どこの産地のカカオとか、珍しい品種とか、食べ手にとってはわからないですよね。美味しいものを作るために、“こういう食材を作っていますよりも“美味しくするためにこうしています”のほうが大事だと思っています。」
「Seiste(セイスト)というブランドでは、日本の食材を活かしたいと思っています。洋菓子となると食材の所要な部分は海外になりますが、日本の食材は個性にあふれて美味しいものばかりで、まだ知られていないような素晴らしいものもあります。いずれは、世界の方々にチョコレートを通して発信をしていけたらと思っていますね。」
また昨今は生産者の方々が大事に育てられたものも、フードロスや災害による被害で一般消費者に販売できないものが出てきたりするので、少しでも拡散して無駄のないようにしけたら素敵ですよね。」
「実はうちのこのボンボンショコラ、すごく手間がかかっています。この平べったい形って、作りづらし量産しづらいので、あまり他のお店ではやらないんです。ふつうは、エンローバーといってベルトコンベアでチョコをコーティングするんですが、厚めの長方形の形が作りやすいんですよ。」
「でもこの形って、食べやすくて。素材の風味をより感じることができるし、ボリューム感の程よい。だからこの形にしています。」
次回、瀧島シェフが実店舗のないブランドを立ち上げた理由とは? その考えと挑戦に迫ります。
About Shop
Seiste(セイスト)
公式Instagram
Photo/Ahlum Kim Writing/Cream Taro(坂井勇太朗)
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