週刊少年ジャンプでの連載期間も、タイトル名も超長い国民的漫画といえば「こちら葛飾区亀有公園前派出所」。子供以上に子供らしい両さんの下町暮らしに、憧れを抱いた少年少女は多いはず。
そんな漫画の舞台“葛飾”にある懐かしのコッペパン一筋で営むお店「吉田パン」は、地元に愛される寂れを知らない人気店です。
“早いか遅いか、この地で商いを初めて今年で10年目。「吉田パン」400周年を目指す僕らにとってはまだまだです”と言う「吉田パン」創業者吉田さんに、改めて「吉田パン」について語っていただきました。
もちろん、おすすめのコッペパンメニューについても。
ノスタルジーを求めてなんだかわざわざ行きたくなってしまう、“葛飾の「吉田パン」”。みんなもきっと食べたくなるはずです。
「吉田パン」と言えば、東京にコッペパンブームをもたらした火付け役として多くのメディアでも取り上げられるパン屋さん。店内はコッペパン用のスタンドと、紙パックのカフェラテと牛乳が入ったガラス扉の冷蔵庫のみというとってもシンプルな内装です。
吉田さん「直営店は葛飾本店と、北千住の2店舗がありますがどちらもこのスタイルです。注文を頂いてからお客様のこれっていう1つを目の前で作る、いわばコッペパンライブ屋ですね。
私の師匠がこのスタイルなので『吉田パン』もそれに倣ったわけですが、私自身が凄く感動した点だったのでずっとやり続けますね。僕らの真髄です。」
吉田さんの師匠というのは、岩手県・盛岡のソウルフードとして知られる「福田パン」の福田潔さん。70年以上続く老舗で、店舗販売から給食のパンの卸まで。みんなに愛されるコッペパンを作ります。
吉田さん「『福田パン』を初めて食べたのは義理の弟が買ってきてくれた『あんバター』でした。それを食べてえげつなく感動したんです。なんでこんなに愛のあるパンを作れるんだろうって。3年後、師匠にお会いしてパン作りを1から教えてもらいました。それから半年くらいですかね東京と盛岡を行き来する生活をしました。
私は自分が感じた感動をそのまま伝えたかったので『福田パン』を東京でやりたかったのですが、師匠から“吉田さんが作るから『吉田パン』だよ!”と言われました。だから、材料も味も『福田パン』と『吉田パン』では全く違います。
今でも、無知の私をよく受け止めてくれたなと当時の師匠の寛大さに頭が上がりません」
元々、洋裁やプロモーションの仕事をしていたという吉田さん。“生地から生地へ”とダジャレを絡めながら造作もなく話す姿は気さくで、気の利いたナイスガイといった雰囲気。しかし、好きなものをとことん追い求める根性と根気強さはリアル両津勘吉のようです。
吉田さん「今まで様々な商いをやらせてもらいましたが、“食”を扱うのは今回が初めて。オープン初日から行列が出来て様々な失敗をしました。時間がかかりすぎたり、品物が違っていたり。だから初日、僕の一番大きな仕事はお客様に1人ずつ謝りに行くことでしたね。笑
30年続く企業すら1%に満たないこの世相で400年続くコッペパンをやりたいって言っているので、お客様が美味しいって食べてくれるコッペパンを作り続けます。無我夢中でね」
お客様の身体に入るモノだからより丁寧に美味しく、お客さんの1日が良い日でありますようにと願う気持ちが、スタッフ全員から伝わってくる「吉田パン」。
そんな、「吉田パン」のコッペパンはお腹が空いてブスっとした人でも思わず笑顔になっちゃう大きさ。真白でふわふわのパン生地と、小麦色に焼かれた表面は見慣れた姿です。特別なことをするのではなく、地域のみんなが幸せになるようなパンを目指したというコッペパンは、ひとことで安心する味です。
吉田さん「お客様それぞれ自分の定番を作っているようですが、人気商品は断トツで『あんマーガリン』でしょうね。僕、最初この1種類だけでいいやって思っていたくらいですから。あんこは『福田パン』と同じ山形のあんこ屋さんにお願いしています」
食べると、、、
美味!!!
コッペパンの食感を邪魔しないあんこのしっとりとした舌触りと、お気持ち程度といった甘さがマーガリンの塩味に引き立てられて、居心地の良さすら感じる味です。
家族や友達と遊ぶときの手土産から、勉強や仕事で頭を使った後に。最高の息抜きになります。
同じくスイーツ系で人気が高いのが「プリンサンド」。コッペパンに生クリームとプリンを挟むなんて、子供の時の夢が実現したようなメニュー。プリンは喫茶店に出てくるような固めプリンで、片手でゆっくり食べても大丈夫。ぼとりとコッペパンから落ちてしまったり、手が汚れる心配は無用。
カラメルがちょっぴりコッペパンに染みたら食べごろです。
吉田さん「挟んでいるプリンは、マヨネーズで有名な某メーカーさんが一緒に考えてくれました。男性も買っていかれるので、老若男女問わずおやつとして召し上がっていただいているんだと思います」
コッペパンをぱかっと開けた時の黄色と白のコントラストが淡くてかわいいコッペパンです。
ガツンとお昼にお腹を満たしたいときに嬉しい総菜系。
隣町、足立区東和にある小さな精肉屋さんにお願いしているというハムカツは、カラッと揚がった衣とソースがまさにジャパンソウルフードの味。
吉田さん「精肉屋は僕が美味しさに惚れて依頼したお店です。『吉田パン』創業当初から作ってもらっているので9年間の付き合いになります」
商店街の一画にお店を構える精肉屋さんだそうで、コッペパンの素朴なおいしさと相性ばっちり。部活帰りにこんなパンがあったら毎日通ってしまいそうなしっかりとした味付けは、お腹を空かせて食べてもらいたいコッペパンです。
吉田さん「『オリジナル野菜サンド』は僕の妻がめちゃくちゃハマっていました。野菜サンドというとキュウリを入れるのが一般ですが、『吉田パン』ではキャベツ、ピーマン、玉ねぎ、トマトそしてマヨネーズ。たまに、お客様の中で真似て作る方がいるのですが、同じ味にならないと、買いに来てくださる方がいます笑」
ピーマンは渋みを感じず、程よい苦みがマヨネーズと絡んで美味しい。
少し時間が経つと、野菜とマヨネーズが混ざって美味しいんだとか。しかし、一度食べると気が付いたときにはなくなってしまうほどあっさりと食べられてしまう魅力があるので、待つのは至難の業です。
吉田さん「具材を食べているのかパンを食べているのか分からないものってたまにあるよね。そうではなく、うちはコッペパン屋なので最後にパンが美味しいなって思ってもらえるバランスを心がけています」
ちょうど今日も新しい商品の開発のため、スタッフ全員で次のメニューの試食会を行っているのだとか。
定番から期間限定商品まで。変わらない包容力とやわらかさで文字通り包み込むコッペパンは、立派な葛飾名物!「吉田パン」のメインキャラクター通称「吉田くん」もなんだか誇らしげです。
About Shop
吉田パン 亀有本店
東京都葛飾区亀有3-27-4
営業時間:8:00~17:00 ※コッペパンが無くなり次第終了になります。
定休日:不定休
園果わたげ
ウフ。編集スタッフ
ufu.の新米編集者。メンズカルチャー誌でアシスタントを経験後ufu.に転身。 特技は甘いものを食べ続けること。最近は美術館内レストランの限定コラボスイーツにハマっている。
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