予約困難なレストラン、知る人ぞ知る名店、大人のバーetc. 今までメディアでも掘り下げてこなかった、大人のための秘密のスイーツをお届けする連載「鈴木セイラ『金曜日、秘密のデザート』。秘密のスイーツを毎月紹介してくれるナビゲーターは、元東京カレンダーで現在はソーシャルメディアマーケティングをしている、鈴木セイラさん。前回の記事では、メディアでも話題の完全会員制で住所非公開「リメークイージー(Remake easy)」(渋谷)を紹介しました。
今回は、「リメークイージー(Remake easy)」でパフェを監修する林巨樹シェフを主役に、監修する経緯やお菓子のミライとこれからについて、お話を伺いました。
“住所非公開”その言葉一つで止まらない期待感とワクワク感。「リメークイージー(Remake easy)」があるのは渋谷で駅からも徒歩すぐという好立地。雑居ビルのエレベーターを上がれば、そこはこだわり尽くされた空間が広がり、すでに人気のスポットに。
「現実と空夢の狭間世界」のテーマのもとリニューアルされた内装。スタイリッシュなカウンターは、ヴィンテージとモダンが調和した重厚感漂う雰囲気に。また奥にはラグジュアリーで広々としたソファ席も。大人の背徳感を味わえる会員制のパフェバーとなっています。詳しくはぜひ前編の記事へ。この美しいパフェを監修するのは、林シェフ。早速お話を伺いました。
Q.今回、リニューアルに携わった経緯を教えてください。
林シェフ「本当にシンプルで、Instagramに直接連絡がきたことが始まりです。お話を聞いていく中で、これから僕が作りたいパティシエの働き方を考えたときに、ケーキ屋で難しい部分である稼ぎや売り上げの部分をパフェだったらクリアできるという点や、厨房にこもりっきりでお客様の顔を見ることもできない、パティスリースタッフとは違い、カウンター越しに顔をあわせて接客できる点にとても魅力を感じ、ご一緒することを決めました。目の前で作ったものを食べてもらえる、そしてお客様の反応を直接目で見て、耳にして喜びを感じることができる体験はプレイヤーとして次のキャリアにつながる、と考えたんです。」
Q.シェフが実際に手掛けて、どんなターゲティングで、どんなお店と商品を作ろうと思いましたか?
林シェフ「2軒目利用の会員制パフェバー、そしてサブタイトルに秘密基地のような隠れ家とついているところで、僕がスイーツに感じた背徳感、最上級なものを用意しなければいけないと思いメニューを考えました。またパフェは、英語で直訳すると“パーフェクト”。パフェは現代で、“完全体”であることから美味しさだけではなく、サステナビリティさも兼ね備えていることも考え、そして食材もそのポテンシャルを最大限引き出すことを大切にし、1gそして1mm単位でのパーツの設計を心掛けました。」
Q.林シェフは、現在SNSでも働き方だけではなく、お菓子を作るという分野において様々な考えを発信されていると思います。林シェフがSNSを通じて、何を発信し、どんな想いを届けたいのでしょうか?
林シェフ「ここ数年、作り手の声をよくも悪くも、そのお菓子を愛する人たちへ直接伝えられる場となっています。その中でも、ある程度影響力を持った方は、業界にひそむ問題点であったりとか、クリエイターとしての見せ方や見せたい部分をより発信しやすくなったと感じています。
“小さな声をもっともっと大にできたら”
この業界全体がもっともっと美味しいものを作り続けられるようにするために、発信できたらいいなと思っています。目先のお菓子のミライの問題は大きく言うけれど、毎日の小さな愚痴や改善しようがないネガティブなことは言わないようにしていますね。僕はパティシエで、誰かを幸せにする仕事。そこを忘れないよう、発言を考えています。」
Q.食材のミライ、お菓子のミライについて、林さんが考えていることを教えてください。
林シェフ「例えば、原材料の高騰や環境の変化での農作物の減少から、あと数十年以内に、今使っている白い砂糖が使えなくなる時が来る可能性があります。そんな時代がやってきた時に、お菓子をどのようにして未来につなげていこうかということを考えています。
先人たちが守り続けてきたクラシックなフランス菓子は、これからの時代に合ってこないかもしれない。美味しいものの価値がきちんと伝わらない時代が来てしまうかもしれない。そんな時に、僕がするべきネクストアクションは、先頭を走って、みんなと一緒に死ぬまで美味しいものを食べられるよう情報を発信していくことかなと思っています。
アクションでいえば、例えばレギュラーメニューである『キャラメルショコラとバナナのパフェ』においてもその考えを散りばめています。パフェに使用しているチョコレートは、すべてオーガニック・フェアトレードのチョコレート『KAOKA(カオカ)』を使用しています。地域に還元ができる、そんな仕組みの中でスイーツを楽しめる、そういう観点でメニューを考えました。このチョコレートも、クリームにしたり色々なものに混ぜ込むのではなく、まずこのチョコレートを味わってほしいと思い、あえてそのまま上に添えています。
また使っているクッキー生地などは、あえて国産の小麦粉を使っています。国内消費を少しで促そうと思うことと、使用するのに一般的なカナダ産を使わないことで、運搬時に発生するCO2を抑制することにもつながります。なかなかパティスリーでそういうことやると、ケーキ1つ1000円超えてしまうので、こういった会員制の特別なバーで、特別な美味しさで提供しています。美味しさの中で、こういった考えが浸透したらいいなと思っています。」
About Shop
Remake easy
住所:完全非公開
営業時間:17:00〜24:00(L.O.23:00)、⼟⽇祝 13:00〜24:00(L.O.23:00)
定休日:不定休
クリーム太朗
ウフ。編集長
編集責任者。ショートケーキ研究家として、日本全国のケーキを食べ比べる。自身でも、ケーキやチョコレートの製造・販売を目指すべく、知識だけではなく実技も鍛錬中
Photo/Masahiro Noguchi Writing/Cream Taro(坂井勇太朗)
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