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今注目の人デリーモ江口和明が考える‟食べる人も働く人も幸せにするお菓子“論 ショコラティエWEEK vol.05

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今注目の人デリーモ江口和明が考える‟食べる人も働く人も幸せにするお菓子“論 ショコラティエWEEK vol.05

バレンタイン特別企画、有名ショコラティエによるチョコレートの面白さ・奥深さを体感できる「ショコラティエWEEK」も、いよいよ5日目となりました。今回は“「デリーモ」といえば、あの美しいパフェ”、スイーツが好きな人のみならず、多くの人から注目を浴び人気を集めているデリーモブランド。

そのデリーモブランドを立ち上げ、今では東京のみならず全国に展開し、今最も勢いにのっているショコラティエ江口和明シェフ。数多くのお店を経営し、チョコレートを始めお菓子への日々研究にも抜かりない江口シェフのパッションを深掘りします。またお菓子を食べる人、そして作り手の幸“満足とは何か?”そんな問いにもこたえていただきました。今回は、ufu.で連載中のアンバサダーであり、チョコライターをつとめているmikiさんも取材に同行。

※撮影時のみ、マスクを外して撮影をしています。

やんちゃだった学生時代を変えた、イナムラショウゾウのモンブラン

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Q.まず江口シェフが、このお菓子の世界へ入ったきっかけは何でしょうか?

江口シェフ「実は、幼少期にケーキを食べたことが中学生ぐらいまでなかったんです。そしてその時はとてもやんちゃしていて。ある時に母が、イナムラショウゾウ(谷中)さんのモンブランを買ってきてくれたことがあって、これが凄く美味しくて。“あ、もうこんなことをしている場合じゃないだろ”と思ってそこから製菓学校へ行くことを決めました。

実は、卒業する最後の3か月は学校へ通っていなくて、フランスへ行ったんです。フランス菓子をやるなら、現地へ行って見て、知るのが一番手っ取り早いと思ったんです。だいたい2週間ぐらい滞在して、食べ歩きしましたね。“これが海外かぁ”と思う程度で、当時は大きな感動もそこまでなかったです。

その後、最初に入社したのが『渋谷フランセ』。午後早い時間には仕事が終わってしまうので、空いた時間がもったいなく夜の仕事もしていました。すごくいい職場だったのですが、ちょっと調子にのって“もっと働きたいな”と迷いが生じてしまい……。その後仕事を辞めて、神戸のチョコレートショップへ行きました。その後は6社を転々と。それでもお菓子の仕事を続けてこれたのはお金がなかったからです。学校行くのにも借金していましたし、ずっと家にも収入を入れていたので。

人生を変えるきっかけになった、グローバルダイニングとの出会い

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Q.その後、今のデリーモ立ち上げのきっかけとなったグローバルダイニングへの就職について、教えてください。

江口シェフ「紆余曲折を経て入ったグローバルダイニングは、僕の人生を大きく変えました。レストランを経営している会社で、僕は当時26歳。入社してみると担当部署は数千万の赤字を抱えていたんです。何が赤字だったのか、まったくわからなくて、必死に勉強しました。それに職場がすごく体育会系だったんです。

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すごく大変な世界だったんですが、結果を出すと給料の桁が違いました。入社して、2カ月後に給料が上がって、1年ぐらいで考えられないような月収にもなりました。その後、結果が出せず一度アルバイトに落ちてしまって……そういう世界ですね。

その後『デカダンス ドュ ショコラ』の本部側にまわり、そこでステファン・ヴューシェフに出会いました。色々なことを経験させてもらい、その時の経験がすごく活きています。」

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Q.立ち上げ当初から今に至るまで、たくさんのお店ができ、今ではチョコレートについて詳しくない人まで、デリーモの名前を知るほどになったと感じています。立ち上げた経緯を教えてください。

江口シェフ「ビジネス的な観点で答えると、グローバルダイニングにいるときに規模感として1億~10億ぐらいの店舗を統轄していました。それよりも大きい100億円以上の規模の仕事をするには、どうしたらいいのかなってずっと考えていたんです。

タイミングよく、中国で事業をやるチャンスが来て、僕が中国市場を担当することになりました。その後は、仕事の内容をコンサルに切り替えて、ハワイやインドネシアで事業をやることになったり、色々なビジネスに手を伸ばしました。そんな中で国内でも開発拠点として物件を見ていた際に、赤坂にちょうどいい物件があったんです。もともと鉄板焼き屋で、その跡地をケーキ屋にして自分の価値を高めよう!と思って始めた洋菓子店、それが『デリーモ』なんです。

当時は浸透していなかったSNSで変わるビジネス観と、デリーモの成功への軌跡

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Q.そこからデリーモをどのようにして、ここまで成功に導いたのでしょうか?

江口シェフ「赤坂でお店をやろうと決めてから、3カ月後にはOPENさせていました。最初はお客さんもそれほど多くなくて、めちゃくちゃ暇でした。その時に、最初の周年イベントで“カフェ無料キャンペーン”をしたら長蛇の列ができたんです。そして入り口にある焼き菓子がめちゃくちゃ売れたんです。無料でカフェメニューを提供したのに過去最高売上でした。

その後、当時みんながやっていなかったSNSというツールを、集客のためにというのもありましたが自分自身がこのSNSの世界を知りたいという意図もあって本格的に始めました。2013年、デリーモがOPENした時期なんて、携帯を出して食事をするなんて今よりまだ失礼だと思われるような時代でしたからね。」

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Q.経営を考えながら、いかにビジネス面で成功していくかをすごく考えていらっしゃるんですね?

江口シェフ「それが、経営者の皆さんは美味しいものを作ることと別で考えているんですけど、僕は別じゃないんですよ。経営を考えるって家計簿をつけると同じことで、僕の中では“当たり前のこと”になっているんです。

Q.なるほど。それでいて、お客さんの満足もしっかり考えていらっしゃるんですね?

江口シェフ「お菓子って、作りたいものを作りたいというシェフもいるけれど、誰を見て、誰のために作るのか、誰を相手にビジネスをするのか、その考え方がないとダメだと思っています。

実は昨年のクリスマス、4号(約12cm)のサイズのクリスマスケーキのニーズがすごく高かったんです。小さくなった分、味の濃さもアップさせて満足度を上ました。ケーキ屋の常識でいうと、クリスマスケーキは6号、7号サイズで大きさも単価も大きいものを売る。そして普段ケーキを買わない人もケーキを買うこの時期に、どのお店もケーキを簡素化するんですよ。なぜそうするのか? 一番美味しいケーキを食べてもらいたい時期だからこそ、うちはいつもより盛って作るようにしているんです。例えば、パリコレでその時に気合入れてつくるじゃないですか? でも洋菓子界は手を抜くんですよ。

手数も増えるし、トッピングのミスも増えるし、労働時間も増えるし、理解されないことだと思いますが、これは考えの違いだと思います。僕はこの時期のケーキを誰よりも大事にしたいと思っています。」

「チョコレートにおいて大事なのはシチュエーション。体験含めて、美味しさを発揮する」

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Q.話はチョコレートの話題に変わりますが、江口シェフが感じるチョコレートの魅力について教えてください。

江口シェフ「ボンボンショコラって美味しいなと思ったのは、辻口シェフがチョコレートにトリュフを入れて一粒1000円って業界をざわつかせた時ですね。また当時働いていた『デルレイ』では型抜きでも美味しいものが作れるんだと発見がありました。そこからチョコレートを日常的に食べるようになったんですが、すごく美味しいなって思うものがなくて。だから美味しいチョコレートを食べて欲しいなと思って、ないなら自分で作って、知ってもらおうと。

Q.チョコレートを作る上で、大事にしていることはありますか?

江口シェフ「気分が上がるチョコレートを大事にしています。チョコレート単体を食べて、特別な気持ちになるかというと、違うと思っていて。一番は“シチュエーション”だと思っています。一粒300円するボンボンショコラをショーケースから選んで、箱につめて。高いチョコレートを買って、ホットショコラと飲んで幸せと思うのは、その買うまでのプロセス含めてが美味しさの理由となっていると思います。

シェフとして考えるべきことは誰と、どういうときに食べるか。どういうテンションで食べてもらうか。それが大事です。だから見た目や買う時の特別感に比重を置いていますね。

今注目の人デリーモ江口和明が考える‟食べる人も働く人も幸せにするお菓子“論 ショコラティエWEEK vol.05

とはいえ、僕の作るチョコレートはカカオ農園へいってオリジナルでブレンドもしていますし、誰もたどり着けないようなルートで安く仕入れて、美味しいものを適正価格で出す努力をしています。

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めちゃくちゃいいカカオを使って、めちゃくちゃ手の凝ったものを作ってスタッフをたくさん残業させて、それでこの会社いつまで続きますか? 美味しい味を実現できるかもしれませんが、誰得だろうと思ってしまいますね。そこで生まれた味は本当に誰もが美味しいと思う味なのか?

味はもちろんのこと、スタッフやお客様を含めたみんなが幸せにならないと意味がないと思っています。」

About Shop
パティスリー&ショコラバー デリーモ目白店
東京都豊島区目白2丁目39−1
営業時間:10:00~18:00
定休日:なし

クリーム太郎

クリーム太朗

ウフ。編集長

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編集責任者。ショートケーキ研究家として、日本全国のケーキを食べ比べる。自身でも、ケーキやチョコレートの製造・販売を目指すべく、知識だけではなく実技も鍛錬中

Photo/Masahiro Noguchi Writing/Cream Taro